鎮守府巡り
三人は、廊下に佇んでいた。秘書の山本に、無理矢理押し出されたのだ。もっとも、赤髪の少女は出された時に入ろうとしたが、一瞬だけ閉まり切った扉は、再び開くことが出来なかった。
「...まぁ、仕方ないか。上の言う事だしね。という事で、僕は前田夢よろしく、双子ちゃん♪」
その言葉を聞いて、暁と夕日はとても安心した。
「二宮暁です。お世話になります。」
「夕日です。よろしくお願いします。」
「こんな所で、立ち止まっても仕方がないから、早速行こう♪」
三人は、鎮守府の静かな廊下を歩き出した。暁と夕日は、仲良く手をつないで初めての場所を歩いた。しかし、不安は一切無かった。なぜなら自分たちの前を歩く前田がとても頼もしく優しく目に写ったからである。
三人は、鎮守府の正面玄関に来た。そこは、とても広いホールのようだった。天井には、いくらするのか分からない照明が釣り下がり、正面には、二つの曲がった階段があった。
「ここが、中央ホールだよ。ここを中心として建物が出来ているから、ここからどこでも行く事が出来るよ。」
暁と夕日は、ホールに釣り下がっている照明に、目を奪われていた。
「ここでは、何をするのですか?」
暁は、上を向きながら前田に質問をした。
「ここは、お偉いさんの出迎えとかかな?」
前田も、イマイチ何に使うのか分かっていなさそうだった。そして、三人は歩き始めた。
「それと、敬語禁止!何か話しずらい...」
暁と夕日は、戸惑った。
「わかったよ!気を付けるよ」
夕日は、対応が早かった。暁は、なれるのに時間がかかりそうだ。それにしても、扉が多かった。
「こんなにたくさんの扉...何があるの?」
「通信室、資料室、倉庫とかだよ。他には、自分達の部屋があるよ」
それを聞いて、かなりの人がここにいることを初めて知った。そして気が付けば、元のホールに戻ってきた。
「次は、どこに行く?」
夕日が言うと昼の鐘と共に、暁のお腹が鳴った。
「アハハ!お腹が空いているんか。じゃ、食堂に行くか」
廊下を歩いていたら、とても美味しそうな匂いが漂っていた。
「ここが、食堂だよ」
その部屋に入ると、夥しい数の机と椅子と人がいた。メニューは、前田のオススメという事で、竜田揚げを頼んだ。三人は、席について話をしながらそれを食べた。三人の間の緊張は、みるみるうちに解けていった。暁と夕日は、自分たち以外の人と話しながらご飯を食べるのが、こんなにも楽しいことなんだとは、知らなかった。なので、二人にとって、この食事は、とても短く感じた。
お腹いっぱいになった三人は、外を歩いていた。春の暖かな日差しを受け、暁と夕日は、眠気を誘われた。
しかし、遅れないようにしっかりと歩いて付いった。
「次は、どこに..?」
「次は、とても大切な場所だよ」
暁と夕日は、訳が分からなっかた。でも、ついていくしかなっかた。そして着いた場所はバス停だった。
「これのどこが、大切な場所?」
暁は、道に迷ってしまって困った時の顔になった。
「いやいや、これからバスに乗るんだよ」
「「はい?」」
ほとんど寝ていた夕日まで、驚きのあまり飛び起きた。
バスに揺られて30分。最初の車窓は、港町だったのに気が付けば、山奥になった。三人は、そこで降りた。そして、目の前には、少し古臭いような建物があった。周りには、油の匂いが漂っていて、金属を叩く音や溶接の音がした。
「お~い、夢ちゃ~ん‼」
誰かが、工廠から走ってきた。作業着を着て額には、ゴーグルがかかっていた。前田は、その人に向って手を振った。
「この子が、暁ちゃんと夕日ちゃんね♪私は、五十嵐宇宙、よろしくね」
「「よろしくお願いします。」」
「ところで、なんで私たちの名前を知ってるんですか?」
「あれれ?ついさっき夢ちゃん、電話してなっかた?」
どうやら二人が睡魔と戦っている内に前田は、五十嵐へ連絡していたようだ。
「気が付きませんでした...」
「ま、そういうことよ。さあ、案内するよついてきて」
そして、三人は、工廠へ入っていった。
中は、金属の加工の音で溢れていた。ズラリと並ぶ対空機銃、高角砲、空母の艦載機まであった。
「ここは、一体...」
余りにも数が多いのに驚いて、言葉が続かない。
「ここは、あなた達の乗る船に載せる兵器を作っているんだよ。何か欲しい物があるなら、作ってあげる♪」
「お菓子とか~?」
夕日が、リクエストした。
「で、出来れば、機械にして」
どうやら、五十嵐は、料理が苦手なのだろう。
鎮守府に戻ったら、もう夕方になっていた。暁と夕日は、へとへとだった。そんな二人の様子を見て、前田は、お風呂に行こうと言ってきた。二人は、とても嬉しそうだった。
三人は、鎮守府のお風呂に着いた。鎮守府の周りにも温泉は、多数あるそうだ。だが、今日は鎮守府のお風呂に入ることにした。
中に入ると、白い湯気に包まれた。暁は、夕日以外の人とお風呂に入ったことがあまりなく、少し恥ずかしかった。しかし、湯船に入ると疲れとともに、それは
溶けていった。
「はぁ~やっぱり温泉は、最高だ~」
しかし、一番溶けていたのは、前田だった。
さっぱりした三人は、そのまま晩御飯を食べた。そして、自分達の部屋に案内された。その部屋には、四人の少女がいて、暁と夕日を歓迎してくれた。今ここにいる七人が同じ艦隊ということを前田から教えてもらった。今夜は、自己紹介などで長い夜になりそうだ。
どうも、八咫烏です。第二話を読んでくださり、ありがとうございます。
寒さが増してきました。早く本作中のように、眠気を誘うような春が来て欲しいと思う自分がいるのですが、実際には、眠気を誘う寒さに包まれています。朝は、特に起きたくないです。しかし、意地でもこの冬を乗り越えようと思います。それでは、次話でお会いしましょう。