双子の着任
桜の花が満開になり、桃色の海に飲み込まれた港。その港に、二隻の巨大な船が、入港してきた。
それが、豪華客船なら盛大な出迎えだっただろうが、その二隻は、軍艦だった。そして、見分けが付かない程、二隻はそっくりで、まるで双子のようだった。突然の見知らぬ船の入港だった為、港町に住む人たちは、騒然となり、近くの防波堤に行き、写真を撮る者、港湾局、新聞社に連絡する者さえいた。
静まり返った鎮守府の廊下に、二つの足音が響く。二つの足音は息が合っていた。鎮守府の職員は、その足音が、まるで交響曲のように聞こえた。その姿を見た者は、その姿を軍隊の行進のような...でも、何かが違うそんな印象を受けた。そして、ある扉の前まで来ると、二人は扉の前に立ち、ノックをした。中には、軍服を身にまとった紳士と、その秘書がいた。
「「二宮、入ります」」
ここも、息が合った。
「入れ」
「「失礼します」」
二人は、どうやら双子のようだった。どちらもミディアムぐらいの雪のような白い髪だった。顔のパーツもほとんど同一で、見分けが付かない。逆に、違う所は、前髪を右に流してるか、左に流しているか、ぐらいしか違わなかった。
「初めまして。二宮暁です。」
右に髪を流している少女が敬礼し、名前を言った。それに習って、左に髪を流している少女が、続いた。
「二宮夕日です。」
軍服を身にまとった紳士は、まさか双子だとは思わなかったので、一瞬だけ反応に困ったが、挨拶をした。
「初めまして。僕はこの鎮守府の長であり、君たちを預からせてもらう者だ。みんなからは、司令 司令官 提督と色々と呼ばれている。好きに呼んでいい。」
「好きに呼ばせてもらいます♪」
夕日が、何処か嬉しそうに答えた。どうやら、見た目は一緒でも中は違うらしい。
「ここに来たばかりで疲れてるだろうが、君たちがここに来た理由を説明させてもらう。よろしく」
そう言って、秘書にバトンタッチをした。秘書は、黒のロングで、髪を後ろで、結んでいた。秘書には珍しく、眼鏡はかけていなかった。
秘書はモニターに映像を映し出し、説明を始めた。
「秘書の山本彩です。では、説明させていただきます。」
秘書の話によると、謎の船舶の出現により、シーレーンが遮断され各国は、孤立化したそうだ。また、戦いの長期化により、男は、本来の10分の1まで人口が減少し、少女までもが戦わなくてはいけなくなったそうだ。だが、敗戦続き、この双子は、その切り札として呼ばれたのである。
「さて、説明は以上だ。何か質問は、あるか?」
指令が、訪ねたところ双子は、質問を考えようとして、沈黙が走った。そして突然、沈黙は破られる。
いきなり双子の後ろの扉が、け破られた。
「提督‼これはどういう事ですかー‼」
赤髪の少女が、司令に一枚の紙を見せながら怒鳴っている。直接来るぐらいなので、よほどお怒りなのであろう。
「なんで私に、何も相談せずに、艦隊を増やすんです‼」
周りは、戸惑った。特に、暁と夕日は二人一緒に、膠着状態になった。
「い、いや~、ほら、君は面倒見が良さそうじゃん?」
指令が、苦し紛れに言い訳を開始した。赤髪の少女が、指令に、更なる追い討ちをかけようとした。しかし、山本があきれたような顔で、間に入り、暁と夕日に話しかけた。
「先ほどの話だけど、質問はないわね。後はこの人が、あなた達を世話してくれるわ」
二人は、震えながら一緒に頷いた。と、同時に今後の訓練が、とても不安になった。
「いやいやいや、なんで私がッ」
「案内よろしくね♪」
そう言って、山本は、三人を部屋の外に追いやった。
二人だけになった部屋。つい先ほどまで罵声が響いたが、静まり返った時が、この部屋の日常である。きっと今頃、廊下で双子に鎮守府の案内をしているだろう。
「司令、勝手ながらあの子たちの過去のデータを調べさせてもらいました。ですが、データはありませんでした。これはどういう事ですか?」
突然、秘書が、司令に質問をした。
「彼女達には、それ程の隠された力がある...とでも?」
司令は、しばらくの間黙り込んで、ようやく口を開いた。
「力があるかどうかは、彼女次第だ。それよりも今は仲間が増えたことを祝おう。」
「...そうですね。今は増えたことを祝いましょう。」
そう言いながら、窓を見ると丁度風が吹いたらしく、桜の花が舞った。司令の言葉に納得がいかなかったが、秘書の目には彼女たちの着任を祝福をしているように写った。
どうも、八咫烏です。記念すべき第一話を読んでいただきありがとうございます。なんとか一話にこぎ着けれてとても嬉しい反面、ちゃんと終わらすことができるのだろうかと不安もあります。
ところで、本作中では、桜が舞っていましたが、現実では、雪が舞はじめました。お花見の様な感覚で、雪見をする際は、十分暖かい服装で見て、風邪に気をつけてください。
それでは、次話でまたお会いしましょう!