56話
「豚君、さんはい」
「…………しゃせー」
「ダメです。もう1度」
「ブヒっ!ブヒィィィ!」
「豚君、お客様は人間ですよ?」
「わかっとるがな!」
「チッ、豚のくせに」「ブヒブヒ言ってないでやりなさいよ」「ホント気持ち悪い」「家畜のくせに」「むしろ豚に謝りなさいよ」「というか私達に謝りなさいよ。土下座しろ」
目的変わっとるがな。
散々文句を垂れ流し女子達をディスりまくった直後、真子ちゃんから差し出された残り物を食ったのが原因で翌日からこんな扱いになってました。
開き直っとるがな。
「豚君、頑張ってください」
「無理。頑張ってない奴らの視線とガヤがうざい」
「自業自得です。そもそも豚君が真面目に練習してくれてれば、彼女達も真面目に取り組んでくれているはずですから」
「俺は練習なんぞいらん。あいつら餌係にこそ必要だろ」
なんて言うとまたブーブーいちゃもんつけやがる。お前らこそ豚だブゥ!
「つまり、豚君は他の方のようにお客様をお迎え出来ると?」
「出来るに決まってんだろ。むしろ他のカスより上手い」
「そうですか。なら、テストをしましょう。審査員は誰がいいですか?」
「あん?俺に選ばせんのか?」
「せめてもの情けです」
出来ないって決めつけてるだろ。ここでミュウちゃんつったらどうする気だよこいつ。
「ミーたんに選ばせてやるよ。どいつが来ても余裕」
「美優たんじゃなくていいんですね?でしたら、テストに不合格だった場合豚君にはキツいペナルティーを課す事になりますが」
「ふっ、クリアしても構わんのだろう?」
「不合格の際は卒業まで豚君になってもらいます。全校生徒の」
「……………意味わからんのですが」
「つまり、フリーペット?みたいな感じです。餌を与えるも良し、お仕置きをするも良し、愛でるも良しです」
こいつ悪魔かよ。常人とは思えない鬼思考してんぞ。足震えちゃう。
「どうします?やります?」
「………ご、合格した場合は?」
「特に何もありません」
「なんでだよ!?ペナルティーに見合う何か提供しろよ!」
「出来て当たり前な豚君には必要無いでしょう?では早速審査員を連れて来ますね」
結局強制じゃねぇか!女子が超興奮してんだけど!
「連れて来ました」
「ミーたんの人選に悪意がある」
「何故です?」
「真子はわかる。むしろ最後の生命線だ」
「えへへ」
ニヤニヤしてんな。
「猛なんか豚側だから審査出来ねぇし」
「なった覚えはない!」
「極めつけはサッキーさんだ。言うまでも無いだろ」
「もうっ、何もしてないでしょっ、ブタチバナ君っ」
隠す気1ミリも無ぇだろ。面白がる時点でサッキーさんさすがだよ。
「安心してください。3人のうち1人でも合格を貰えれば合格です。簡単ですよね?」
「なるほど。猛、合格出さねぇとどうなるかわかるよな?」
「春の高校生活が幕を閉じるんだよね。頑張れ」
「……真子!お前ならわかるよな!?」
「うん、春君、わ、私は、それでも春君の彼女だからっ」
「…………サッキーさん、慈悲を、どうか」
「……ふふっ、あ、ごめんなさい。ブタチバナ君にしてあげたい事考えていて聞いてなかったの。頑張って?」
あ、もう豚さん確定なのね。お前らには人の心は無いのか。
「それでは、まず咲さんから」
「どういう流れでやんの」
「咲さんに入店してもらい、お客様としてエスコートしてください。最低君にしてもらう事は以上です」
「一応確認するけど食いもんは出さなくていいのな?」
「ええ、最低君は料理はお上手ですので必要ありません。では始めます。咲さん、お願いします」
早速ミーたんの声に従いサッキーさんが入ってきた。顔がニヤケまくりで腹立つ。
「いらっしゃいませお客様。1名様でよろしいですか?」
「……………は、はい」
「あぅ」「うぅ!」「さ、さすが立花君」「爽やかスマイルらめぇ…」「イケボが心に響くぅ」「ダメ、キュンってしちゃう」「私、もう豚でもいいかも…」
意見コロコロ変えすぎなんだよ!結局どうしてぇんだお前ら!
ペナルティーが本気で怖いので全力全開ガチサービスで行動することに。
「では、こちらへどうぞお嬢様」
サッキーさんの手を取り席へ誘導。手を離しすぐさま椅子を引き座らせる。
「メニューはこちらになります」
というフリをして教科書を渡す。メニュー早く決めろよ。
「………あ、あの、えと、その、あぅ」
顔赤くしてないで早よなんか言え。猛の顔はメニューではありません!
「よろしければ本日のオススメなどはどうですか?」
「え?あ、あの、オススメは何ですか?」
「猛盛りです」
「不合格」
「なんで!?猛の上に新鮮な刺身を盛り合わせるんだよ!?サッキーさんにぴったりじゃん!」
「そんなの出せるか!勝手に俺を使うな!」
お前にとってもご褒美だろうが!むしろありがとうございますだろ!
結局俺の意見は反映されずサッキーさんからは不合格を食らう。オススメにあったら絶対頼むくせに。
「では次、小山君です。お願いします」
「いらっしゃいませお客様。どの子をご指名でしょうか」
「不合格」
「何言ってんだてめぇ!理由を言ってみろ!」
「どう考えたってダメだろ!文化祭だぞ!そもそもそんな事させられるか!」
「何考えてんだクソボケ!今時指名なんて普通だろ!メイド喫茶にもネコカフェにもあんだろ!頭ん中んな事しかねぇからそんなアホな事言うんだろ!」
「いや、そんなつもりは、そ、そっか、普通、だよな、ごめん」
「いえ、それでは当店の説明をさせていただきます。30分5000円で延長も同じ30分5000円です。本番無し「不合格!不合格だ!」なんでだ!」
「なんでも何もないだろ!」
「ぼったくりとでも言いてぇのか!?現役JKに抜いてもらうんだから安い方だろ!むしろありがとうございますだろ!」
「言うか!!」
前傾姿勢のくせしやがって生意気な。文句あんなら興奮すんな。
「最低君、先ほどのようなものは無しです」
「意味わからん。客に合わせた接客してるだけだろ。当たり前の話だ」
「当たり前のように犯罪をしようとしないで下さい。ダメですからね」
「ミーたんがかわいいからって俺は意見を曲げねぇぞ」
「最低君めっ、ですよ」
「しょ、しょうがねぇなぁ〜」
「不合格」
「真子、愛してる」
「不合格」
「真子、好きだよ」
「不合格」
「真子、結婚しよう」
「不合格」
「真子、別れよう」
「合格っ!合格だからぁ!」
「お二人ともそこまでです。早く始めてください」
ぷんすかしてるお顔もかわいいぞい。真子ちゃんは半泣きやめろ。
「では真子さん、お願いします」
「し、失礼しまーす」
「おぉ真子。来たか。こっちゃ来い」
「え?あ、うん」
真子を席に誘導して座らせ、向かいに俺も座る。
「なんにすんだ」
「んと、春君のオムライス食べたいな」
「ほいよ。………ほいお待ち」
一応席を立って、作った程で皿だけもって席に戻る。
「ありがとー。いただきます」
「どーぞ」
「うん、おいしいです」
「あんがと」
「…………」
「なんだよ」
「えと、忙しい?」
「さっきまでな。猛が交代してめっきり減った」
「なるほど。さすが小山氏」
「口、付いてんぞ」
「え?んぅ〜、ありがと」
置いてあるナプキンで付いてる程で口を拭いてやる。たまにやるからな。
いつも真子としてるような会話と行動を5分くらい続け、長居をさせないよう席を立たせそのまま見送る。はい終わり。
「最低君不合格では?」
「真子に決めさせろよ!鬼か!」
「まぁ、一応そう決めましたしそうしますが。真子さん、どちらですか?」
「えー、あのー、えっと、合格かな?」
「はっはっは。まぁ当然だな。それはそれとして何お前ら暗くなってんだよ」
「………立花君、真子ちゃん、家でやって!」
「家でもやってますんでご心配なく」
「違いますっ、迷惑なんですっ、気を使って欲しいんですっ」
サッキーさんと同じ邪気使ってるっての。自分もやればいいじゃん。
「大変遺憾ながら、最低君は合格です。でも本番で本当にきちんと接客出来ますか?」
「当たり前だろ。残パンマンはウソ嫌いだからな」
「変なものにならないで下さい。お願いしますからね?」
「任しとけって。ヨユーヨ「おいデコ昼飯」いらっしゃいませお嬢様。こちらへどうぞ」
「え?ひゃっ、あぃ」
ミュウちゃんの手を引き、席に案内し、抱っこして椅子に座らせる。このワンクッション超大事。
「ご注文はいかがいたしますか?」
「あ、えと、はるのオム、たべたい」
「かしこまりました。少々お待ち下さい」
っしゃ!カットビングだ!俺!
D子に教わりながらなんか作ってるユーマや、女子と代わって飯をお試しで作らされてる野郎共を横目に、ミュウちゃんのために真剣にオムライスとソースを速攻で作り、またも教室に舞い戻る。
「お待たせ致しました。立花特製オムライスとソースでございます。熱くなっておりますので火傷にご注意を」
「あ、うん、いただきます。……おぃひぃ」
「ありがとうございます。お嬢様、ソースが」
「ん?んぅ、んっ、あ、ありがと」
綺麗なナプキンで口元を丁寧に拭いてあげる。マジラブ。
この後も何度か口を拭いてあげ、シメのジュースを買ってきてあげ、大満足で教室に戻っていった。あー、尊い。
「最低君」
「あ?なんだよ。片付けすんだけど」
「今の本番でやって下さいね。本当に」
「無理」
「お願いします!」「立花様!お願い!」「お願いしますぅ!」「ぜひやって下さい!」「私、立ってられない…」「すごい、ドキドキが止まらない…」「あぁダメ!立花様好き!」
「という訳ですので」
………………もうなんでもいいんじゃねぇか。
「春君、お話が」
不可抗力って知ってる?わけないよね。




