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昏冥の空に青い鳥  作者: 音無 なの
第1部 第1章『色付く世界』
8/48

第4話

入浴シーンがあります。(※エロイとは言ってない)


…あれから、俺と瑠璃は入寮式の会場であるホールの近くに来た。

その、入り口で待っていたのは――



「あっ、黒崎先輩、青井先輩…


「…秋穂…か。」


「ごめんなさい、うちの愚兄が、先輩達にとんだご迷惑を…。

しかも、黒崎先輩には…謝りきれない位に酷い事を…


「…今更気付いたのか?」




まぁ、俺は面倒だからって笑顔の仮面で本心を隠してきたからな…ある意味お互い様かもしれないが。

だから、秋穂が申し訳なさそうにしてくれているだけで満足だな。

瑠璃も、そこは理解してくれてるのか口出しはせず、何時もの…二人だけで居た時だけに見せていた本当の笑顔で俺に寄り添っている。



「…はい。

あの、何時も笑って受け流していた黒崎先輩が…本気で怒っていたので…。

しかも、“瑠花お姉さん”が引っ越したの…わたしの兄のせいだったんですね…。

その時でさえ…黒崎先輩…笑っていましたから…わたし…今回の件がどれだけ黒崎先輩を………


「…そうだな。

だがもう、昔の話だ。」



…そう。

もう昔の話だ。

…俺の幼馴染み()()()如月(きさらぎ) 瑠花(るか)』。

勇悟に(かどわ)かされて、勝手に傷付いて、悲劇のヒロインぶって逃げた、哀れな女だな。


…あれ?自分でも意外な位に瑠花の事はもうどうでもよくなっていたんだな…。

…10年位は一緒に居た、初恋の子のはずなのにな…。


俺は、自分でもびっくりする程すんなりと、こう言えた。



「今の俺には瑠璃が居るから大丈夫だ。

だから、心配すんな秋穂。

只、勇悟の事は許さねぇからな。」


「…はい。

貴方は兄を恨んでも当然の事をされたのですから、構いません。

わたしも、今回の件で目が覚めました。

兄は、優しくなんかありませんでした。」



そこで、初めて瑠璃が口を出した。



「そうだよにゃ~?

何せ~奴は~…


「はい、美夏姉様を愛していませんでした…#

思い返せば、最近美夏姉様に優しくしてくれていたのは…兄よりも黒崎先輩で、青井先輩や紫藤先輩が一番美夏姉様に気を使ってくれていましたし…。」


「そうだねぇ~…みかみーは~…あたしの~親友は~やっぱし~気付いてたか~?」


「ですね。

今日の件で確信したそうです。

兄は…貴女に対して妄執(もうしゅう)を抱いていると…。」


「妄執…?」



また、変な言葉が出てきたもんだ。

まるで、勇悟は瑠璃を手に入れる為に躍起になってるみたいに…って、言われてみれば…勇悟の奴は何かと俺と瑠璃の仲を邪魔しに来ていたな。


瑠璃は当の本人故か、秋穂が“妄執”と表現した事に納得していた。



「そうだにゃ~…奴は~あたしの事~お気に入りの~オモチャの様に~思っていそうだしねぇ~。」


「はい…美夏姉様も同じ様な事を言ってました…

『瑠璃ちゃんは、悠希くんの彼女さんなんですよ!?』って諭しても聞く耳持たないそうで…」


「「…うゎ…想像できるなその光景…;」」




『いいですか勇くん。

瑠璃ちゃんはもう悠希くんの彼女さんなんですよ?

幸せそうなお二人を邪魔しちゃ、めっ!!ですよ?』


『あの二人がカップルだって?無い無い♪

悠希なんかが瑠璃を彼女に出来るもんか!!

と言うか、瑠璃は俺の物になる運命だしな♪はははっ!!』


『兄さん!?青井先輩は、物じゃ無いんですよ…!?』


『は?当たり前だろ??

じゃあ俺は瑠璃に会うためにも入寮式行ってくるからな~♪』




「黙れ変態、瑠璃は俺の彼女だ。」

「黙れ変態、あたしは悠希の彼女よ。」


「うわ…;息ピッタリ…;

想像しました…?;

兄は、『瑠璃は俺の嫁』等と意味不明な事を言ってました…;」


「マジかよ…ふざけやがって…。

今まで散々勇悟に苦汁を飲まされてきたが、瑠璃だけは絶対に奪われたくねぇ…つーか奪わせねぇッ!!#」



すげぇムカつく。

あのクソムシヤロウ…#

瑠璃も腹を立ててるのかイラついた声で俺に続く。



「大体~奴は~あたしに好かれる~行動なんて~なんも~してね~し~!

も~そ~も~!大概にしろ~!#」


「あは…あはははは…;

予想以上に確執は深い…みたいですね?;」


「まぁな、瑠璃が居なけりゃ勇悟に何してたか分からねぇ…。

とにかく、妹である秋穂と、幼馴染みの緑川さんで勇悟の暴走を止めてくれ。」


「あたしは~あんなのに~屈しねぇかんな~!」


「はい…;

はぁ…気が重いですねぇ…;」



そう言ってため息をひとつついて、秋穂は1年生の輪に帰っていった…

さて、俺達も席に着こう。



…それから、しばらくして入寮式が始まった。

と言ってもこれは、只の伝統で、寮長から1年生に向けて注意事項を説明する場なんだけどな。

必然的に1年生しかこの場には居ない訳だが…

俺と瑠璃は特待生…成績トップだから2年生だが模範生として呼ばれたらしい。

因みに、3年生の特待生は桜庭だけだ。

必然的に順当に行けば俺が寮長だったらしい…

あっぶねぇ…面倒事押し付けられる所だった…;


入寮式は予定通り、桜庭がつつがなく注意事項を説明していき、無事に終わった。

オイ勇悟。テメェ結局喋ってねぇじゃねぇか!!#

しかも視線は瑠璃か1年女子の方ばっか見てるしな…


「…下衆野郎が…。」


ったく。


「さて、では 2 年 生 の 優 秀 な 先 輩 からも言葉を貰いましょうか。

黒崎、青井、何かコメント、お願いね。」



…桜庭の奴…勇悟をチラリと睨みながら“優秀な”を強調したな…

まぁ、勇悟の奴は例の如く都合の悪い事は聴こえて無いみたいだがな…



「ああ。」


「まっかせろ~い♪」


「…瑠璃…?;」



瑠璃が何時もの間延び口調で返事をしたから、驚いた桜庭が瑠璃を見る。

ここは俺がフォローするべきだな。



「桜庭先輩、瑠璃は自分を偽るのを止めたらしいので。

好きにさせてやってくれませんか?」


「あ…えぇ…黒崎がそう言うなら…


「ありがとうございます。」


「あ~りがと~さくら~ん♪」


「さく…;うーん…まぁ、とりあえず黒崎からお願いね。」


「はい。

と言う訳で、今紹介にあずかった黒崎悠希だ。

まぁ、俺が言うのも変だが、人間に大事なのは成績の優秀さじゃなくて心だ。

だからといって勉強を疎かにするなよ?

友達や、大切な人をキチンと大事にしろ。

俺からは以上だ。」



ふぅ…テンプレな台詞だが…まぁこんなもんで良いだろう。

さて…瑠璃はどんな面白い事を言ってくれるかな…?



「ありがとう。

では、次は青井、お願いね。」


「はいなぁ~!

あたしは~青井瑠璃~♪

こ~んななりだけど~いちお~先輩だから~よろしくなぁ~♪

あたしからはぁ~ひとこと~♪

…死ぬな。

いじょお~♪」


『…は?;』



瑠璃のいきなりな発言に、目が点になる1年生達。

そう来たか、即興漫才だな。



「バカ言ってないで真面目にやれwww」



笑いをこらえながら頭を軽く掴んでグリグリしてやると、例の如く楽しそうに笑う瑠璃。



「やぁ~ん♪

ゆぅちんだいたぁ~ん♪」


「…フッ。

皆、瑠璃は恐らく“成績を落とすな”と言いたかったんだと思うぞッ!」


『分かるかぁぁぁッ!!;』


「ん~ざっつら~い♪

さすがゆぅち~ん♪

あたしの事~理解してくれんの~あんたくれ~だぜ~♪」


『何で分かるんだよ!?;』


「当たり前だろ?

俺を誰だと思ってるんだ。」


『いやマジで何なんだあんたは!!;』


「あたしの~旦那様ぁ~♪」


『なん…だと…!?;』

『幼妻かよ!!;』



おぉう…思ったよりノリが良いな1年生。

さて、仕上げだ。



「そう、我が校は進学校とは言え、勉強が全てではないッ!!

君達もそんな相手を見付けて、学園生活を謳歌(おうか)するんだ!!

勿論、規則は守れよ!!」


『………はいっ!』



拍手喝采。

緊張も不安も解れてくれたなら幸いだが…



「…ふふっ…なるほどね…

二人共ありがとう!

では、これで入寮式を終了するわ。

明日は入学式よ!!皆、早く寝るように!!

じゃあ解散!!」


『はい!!』













―そう言えば、勇悟空気だったなwwwざまぁぁぁぁぁwwwwww




部屋に戻ってきた俺…と、桜庭寮長から直々(だが勇悟にはバレない様にコッソリと)に外泊許可を貰った瑠璃は、ベッドに座ると同時に安堵のため息をついた…。



「さくらんは~…完全に正気に戻ったみたいだねぇ~…


「…だな。

勇悟を先に行かせた後、お前の外泊許可証をコッソリと俺に渡してきたし。」



それに、その時小声で『今まで大変だっただろうからご褒美だ、優等生カップル。』と言ってきたしな。



「・・・・・。」

(逆に考えると、それってあたしが邪魔だからクズに諦めさせようとしてる様にも思えるわね…。

でも…なら何でコッソリとやるの…?)


「…瑠璃?」


「・・・・・。」

(ダメダメ…春菜姉さんは、昔からあたしの恋を応援してくれていたじゃない!!

去年の始め、悠希に惚れたって相談したら、自分の事の様に喜んで、応援してくれたじゃない…!)


「おーい?瑠璃ー!?」



あ、ダメだこりゃ。

考え込みすぎて周りが見えてねぇ…;



「・・・・・。」

(疑心暗鬼になってはダメ…

悠希だけを盲目に信じても…ダメ。

周りを見て、冷静に状況を見極めないと…

もしかしたら改変した事で悠希が破滅するルートが別に出来てしまったかも知れないんだから…!)


「ったく…何考えてるんだ…?;」



とりあえず瑠璃を膝に乗せて後ろから抱き締めて、頭に顎乗せて待機。

あ、これ案外良いかも。

何か…瑠璃の髪から良い香りがする…確か瑠璃は香水をつけないはずだし、風呂もまだ入ってないよな…?

………あぁそうか。

これはきっと、趣味で作ってる茶の香りだ…。




(とにかく…今は状況を楽しもう♪)

「…って~何~このじょ~きょ~…!;」


「やっと復旧したか?

何考えてたか知らんがあんま悩むなよ…って、前俺に言ってたよな?」


「あは~;

こりゃ~すまねぇ~;」


「まっ、お陰で瑠璃の頭とか髪とかを楽しめたから良いが。」


「にゃっ!?///」


「お前の髪、茶葉みたいな良い香りがしたぞ。」


「ふにゃ~っ!?///」


「淹れたらお茶になったりしてなwww


「… 変 態 。」


「切り替えの速さが神がかってんなwww


「…ゆぅちん、たのしそ~だねぇ~?」


「まぁなwww

瑠璃が居なけりゃ、こうはならんかったからマジで感謝してる!!」


「…なぁに~?

どったの~とつぜ~ん。」


「分からねぇ!

まぁ、良いじゃねぇか♪

んじゃ、風呂行くか?」


「うん♪いくいく~!!」




寮の風呂、大浴場もあるけど、実は各部屋に備え付けだったりするんだよな。

しかも、設定しとけば勝手に湯を張る奴が。

なんでも、素肌を見せたくないとか、見せられない人に配慮しているとか。


…案外、男装・女装してる奴が居たりしてな?


…は?;

俺が男装女子だって??;

バカ言うな。俺は正真正銘男だぞ;

女装が似合いそう?

よ し 、 表 へ 出 ろ 。



脱衣場で服を脱いだ俺は、腰にタオルを巻いて、入ってきた瑠璃を椅子に座らせると、サッと湯をかけて――うん、細かく言う必要なし。

お互いに身体洗って湯船に入った。



「ふぃ~…。

風呂は良いな…人類の産み出した文化の極みだぜ…。」


「そ~~だにぇ~~……


「…風呂で溺れるなよ…?;」


「だ~じょぶ~…ゆぅちん~いるし~~…」


「ハァ…;

ほら、膝に乗れ。」


「は~い…にぃた~ん…♪」



あ?

彼女の裸見て興奮しないとか正気かって?

寧ろ、見た目小学生な瑠璃と風呂入った位で興奮してたら銭湯に行けな―げっふぉん!!


イヤイヤ、瑠璃ヲ親戚ノ小学生ッテ事ニシテ男湯一緒ニ入ッテタリシナイヨ?

…ホントダヨ?



「んふふ~♪

にぃた~んとおっふろぉ~♪」


「オイバカやめろ;」


「Σハッ!!;

あたし~なにを~?;」


「うん、イッツアバスマジック。」


「え~?」



風呂から上がった俺達は、牛乳を飲んで一息ついてから、軽く勉強をして―

勉強を…して―――

あ、寝る時間だ。



「瑠璃、明日は入学式だし、もう寝るか。

俺達は2年生代表で挨拶だろ。」


「ん~?

台詞(カンペ)は~?」


「カンペなら既に作ってある。」



作ったカンペを瑠璃に見せる。

流し読みした瑠璃はニンマリとした。



「ん~…普通♪あたしとおそろ~♪」


「イヤイヤイヤ!!;

流石に入学式で漫才は不味いからな!?;」



まさかやらないよな…?;

やらない…よ…な…?;


「ん~ふ~ふ~ふ~ふ~♪」


ア カ ン 。

この表情(かお)(ニヤケ面)はボケる気満々だ!!;

いくら自分を偽るのを止めたッつっても限度があんぞ!?;


俺の視線を察したのか、瑠璃は苦笑いした。



「あはは~;

さすがに~ゆぅちんを~困らせたくないから~やんねぇ~よ~?;」


「…信じても良いんだよな?;」


「彼女を~もっと~しんよ~せぇ~い。」


「いや…お前って結構ノリと勢いで行動する事あるし…;」


「…ごめん、心配しないで。」


「って!;無 表 情 !?;(※瑠璃の不機嫌時の表情(かお))すまんッ!!;」


「……んっ。

明日は、頑張ろ…?」


「ああ…;

じゃあ寝るか…;」


「あ~い♪」


(ははっ…ホンと飽きねーわお前にゃ…。)



例えボケても、俺はちゃんと乗ってやるからな?瑠璃。






フラグです。

ここから瑠璃は『ひょうきん者』を前面に押し出します。 …たぶん。

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