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昏冥の空に青い鳥  作者: 音無 なの
第2部 第1章 『“ ア ツ イ ”夏になりそうですね。』
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第16話

勇悟大暴走。

いい加減にゴタイジョウネガイマスカー?

…先導する緑川さんを見ていても思ったけど、皆、勇悟の呪縛から解放されて少しずつ変わり始めていると思う…。


“呪縛”…これは自分じゃなくて瑠璃が言っていたんだが、言い得て妙な表現だ。

瑠璃が言うには女性陣は皆、勇悟の呪縛に性格や恋愛感情をねじ曲げられていた所が多少なりともあったみたいなんだ。


それが一番酷かったのが桜庭寮長らしい。

彼女は昔から婚約者で幼馴染みの凍夜先生が好きだったのに、勇悟を好きにさせられていたらしいからな。

しかも、本来の性格は、結構世話好きだがクールな人らしいし。

姉御肌キャラは勇悟の妄執の結果なんだとか。


…と言うか、妄執を現実に反映させるとか、ますます勇悟の方が悪魔じみてんしゃねぇかよ…。


っと…校舎についたな。

学年が違う秋穂とは昇降口で別れ、教室へ向かう。

…ん?クズ…?

何か、立夏に寄り添ってニコニコしてる緑川さんを睨んでる…のか…?

それに気付いた立夏が俺と智秋に「美夏を頼む。」と言ってクズの方に向かった。

そんな立夏を心配そうに見つめる緑川さんが、不安気に訊いてきた…



「…悠希くん、立夏くんは大丈夫でしょうか…?」


「…アイツはそんなにヤワな奴じゃないから大丈夫だ。」



だが…相手はよく判らない力を使ってくるからな…まさか、緑川さんと別れる、とか言い出さないよな…?


まぁここは廊下で、その場で話すつもりみたいだからおかしな事になりそうなら止めてやる。



「勇悟。

こちらを見ているが、何か用でもあるのか?」


「いや、何かやけに立夏は“俺の”幼馴染みと仲が良いなと思ってさ。」



は?

なにコイツ。まるで所有権を主張する様な言い方だな??

俺はイラッと来たが、そこはクールな立夏。

表面上は何時もと変わり無い表情(かお)をしている…



「それはそうだろうな。

俺達は昨日から付き合い始めたんだし、それ以前から美夏にはよく相談されていたしな。」


「は?相談だぁ!?

それこそ何で幼馴染みの俺じゃ無くてお前に相談するんだよ!?

しかも付き合ってるだと!?笑えない冗談だな!!」



おーおークズの奴が吠えてるなぁ…

今まで散々幼馴染みを適当な扱いしてきといてその反応とか笑えるけどなwww


対する立夏は引き続き何時も通りの冷静な切り返しだ。



「何故勇悟では無く俺なのか、本当に分からないのか?」


「分かる訳が無いだろ!?

俺は何時も通りの対応だったし、美夏も何時も通りの様子だったんだから!!」


「・・・何時も通りの、な。」



本気で分からずにキレる勇悟に対して、

自分の好きな人を散々傷付けた本人がそんな態度だからか、ただでさえ冷たい印象な立夏の視線が更に冷めていく…



「分からないのなら、お前には一生、分からないだろうな。

とにかく、お前の幼馴染みであろうと、今の美夏は俺の彼女なんだ。

美夏を悲しませる様な真似は、俺が許さないぞ、勇悟。」


「なっ…!?」


(・・・・・ざまぁwww)



立夏の拒絶する様な冷めきった発言に、驚愕する勇悟。

何お前、立夏とも友達だと思ってたのか??

本当におめでたい奴だなお前って奴はwww

良いぞ立夏!もっとやれwww

…って瑠璃…?


不意に、眠そうな瞳に怒気を宿らせた瑠璃が立夏の隣に立った…?


「青井…?」


立夏も瑠璃の突然な行動に訝しげな視線を向ける…何をするつもりだ…?



「ねぇ。」


「っ!!…偽瑠璃たんか…!」


「偽って…まぁ~、それは今、関係無いね~…それより。

あんた、だから言ったでしょう?

幼馴染みには、見捨てられてるって~。」


「だっ黙れ悪魔っ!!

おい美夏!!お前は“俺の幼馴染み”だろう!?

俺の事が好きなんだろう!?」



うわっ…いきなり何言い出すんだコイツwww

『俺の事が好きなんだろう!?』って完全に勘違い野郎な発言だなwww


対する緑川さんは、困った様に微笑む。



「好きですよ?手のかかる弟的な意味で。

だから私達、これからもいいお友達で居ましょうね?勇悟くん。」


「…は?」



それは、言葉とは裏腹に明確な拒絶。

優しい緑川さんなりの精一杯の別れの言葉だった。

その緑川さんは、勇悟に見せ付ける様に立夏の腕に抱き付いた。


勇悟が暴れたら厄介だから俺も瑠璃を守る様に立夏の隣に立ち、状況的にどうしたらいいのか分からない白雪さんはおろおろしていて智秋がそんな白雪さんの頭をぽんぽんとしてなだめている。



「何だよそれ…はは…訳わかんねぇ…美夏も…美夏も悪魔に(たぶら)かされたのか…?

なぁ…?美夏は…俺の事が好きなんだろう…?

将来は俺と…結婚したいんだろう…?」


「…その約束…覚えていてくれたのですね…?

それは、素直に嬉しかったですが…それ、もう無効って事にしてもらえませんか??

今の私には、貴方に恋愛感情は一切ありませんので…。」


「言っておくけど~、ここでみかみ~を叱るのは~お門違いだぜ~?

最初にみかみ~を拒絶したのは~あんただから~!!」



若干憔悴した様な感じになった勇悟が縋る様に緑川さんに言うと、緑川さんは再び困った様な顔で、改めて拒絶し、瑠璃が追撃で勇悟を糾弾する。



「はは…なんだよ…これ…どうゆうことだよ…これ…笑えねー…ははは…バグだらけのクソゲーじゃねーか…これ…



皆から白い目で見られる勇悟は、乾いた笑い声を上げ、放心状態だ。

まぁ…それが今まで散々やりたい放題してきたテメェに返ってきた結果、って奴だな。

さて…この際だ、俺も改めて勇悟を糾弾しようじゃないか…



「おいクズ。」


「あぁ…?なんだよ…


「ゲームゲームって、お前いい加減にしろよ?

この世界はゲーム何かじゃねぇ。

皆必死に生きて、勉強して、恋をしてるんだ!!

お前だけなんだよ!!ゲーム感覚でお気楽に、自堕落に過ごしてきてたのは!!」



俺の言葉に、瑠璃も乗る、そして、智秋もだ。



「あたしは~何度も言ったでしょ~う?

あたしにも~みかみ~にも~み~んなに心がある…感情もある…だから~人の気持ちがわかんね~あんたにゃ~あたしの恋人も~、みかみ~の恋人も~無理だよぉ~。」


「そうだな、テメェはそうやって、今まで好き勝手に振る舞ってきた!

少しばかり女子にちやほやされたからと言って、図に乗ってまわりを…幼馴染みを省みなかったからそうなったんだ!!

そんな、美夏を悲しませたクズみたいなお前にはもう、美夏の幼馴染みを名乗る資格は無ぇんだよ!!」


「はぁっ!?資格だと!?ふざけんな!!

俺は主人公だ!!好き勝手に振る舞う事を許された()わばこの世界の神様なんだぞ!?」


「…とことん見下げた奴だな、勇悟。」



立夏は心底うんざりした様に勇悟を睨み、腕に抱き付いた緑川さんをエスコートしながら勇悟から離れていった。

白雪さんは勇悟の異様な態度にびくびくしだしたのですかさず瑠璃が白雪さんをもふもふ(抱き付き+頬擦り)をしてなだめて教室へ向かった…

残った俺と智秋も、勇悟を一睨みして立ち去ることにした…が、何を勘違いしているのか、勇悟は俺の肩を掴むと憎悪の表情(かお)で俺を睨み付けてきた。



「あ?

離せよクズ野郎。」


「…お前も転生者だな…?」


「は?転生!?」


「お前、ゲームの次はラノベの話かよ。

どんだけ腐ってんだテメェの脳ミソは。」


「あぁそうか、悪魔でシラを切るつもりか。

そうか、なら、俺にも考えがあるぞ?

今に見ていろよ…散々俺の物語を掻き回しやがって…最後に笑うのは…何時も主人公なんだよ…!!」


「「はぁ…!?」」



コイツ…あれだけ言われて、いや、あれだけ言われたから現実を受け入れられないってか!?

どんだけクズなんだよ!!

だが勇悟はそんな俺を無視して自分理論を展開していく。



「美夏もお前に誑かされただけなんだろ!?

美夏に何をしやがった悪魔め!!」


「何もしてねぇよ!!

テメェこそ美夏に何をしたのか、分かってて怒ってるのか!?アアッ!?」


「ウルサイぞ悪魔!!

浄化してやるッ!!」


「っ!?」


「悠希ッ!!」



勇悟が手をかざすと、発砲音の様な音と共に、何故か殴られた衝撃が!?

俺は衝撃に数歩後ずさり、尻餅をついた…

更に、周りに居た生徒たちから悲鳴が上がる。

すぐに智秋が側に来て手をかしてくれた。



「大丈夫かよ悠希!?」


「おう…何なんだ今のは…?;」


「邪魔をするなァァァッ!!」


「危ねぇッ!グゥゥッ…!」


「智秋ッ!!」



今度は俺を庇った智秋がモロに食らって膝から崩れ落ちた…!?

クッソ!!勇悟の奴…!

が、勇悟は勇悟で勝手に怒りをつのらせていきやがる…クズ野郎がッ!!



「チクショウ!!どいつもこいつも…!

邪魔をするなら消えろッ!!」


「ゆぅちん!」


「瑠璃ッ!?」


「…っふぅ~。

間に合いましたね~。」


「なにを…?

それより!!無茶すんな!!;」



勇悟が再び手をかざした瞬間に戻ってきた瑠璃が間に飛び込んできた!?

しかし、瑠璃には何も起こらなかった…

その瑠璃は下敷きを構えていて、余裕の表情(かお)で振り返る。



「大丈夫よ~?

原理さえ分かれば魔法 (物理)何て~怖かねぇ~!」

(実際は『苦痛からの解放(GOOD☆LUCK)』を併用して下敷きで防いだんだけどね~。)


「え…?;」


「そこ~!」


「イテッ!!」

「アタッ!?」



瑠璃がビシッとチョーク(教室から持ってきたのか?)を投げると、

物陰から白衣の格好をした生徒が…ってコイツ等、科学研究会の奴等か…?



「正体は空気砲(エアバズーカ)~!

圧縮した空気や気絶させる気体を発射してた~!」


「いやそれを下敷きで防ぐとかすごくね!?;」


「あたしゃ運が良いからにゃ~♪」



今度は歯を見せて無邪気に笑う瑠璃。

可愛いな、うん。

じゃねぇ!!



「運が良いって問題じゃねぇ!!

相手は俺をぶっ飛ばして智秋を気絶させる兵器を使ってきたんだぞ!?

ちっさい身体で無茶すんな!!;」


「…心配してくれてありがとにゃ~♪

でも、あたしゃゆぅちん達を守りたいから、また無茶しちゃうかもね~?」


「…瑠璃…。」



無邪気に笑いながらも、そんな、見た目に反して兵士の様な事を言う瑠璃…



「チクショウ…俺は何時も瑠璃に助けられてばかりだな…。」


「いいんよ~?

あたしが、ゆぅちんを助けたいからやってるんだし~。」


「だけど―



「俺を無視して甘い雰囲気出してんじゃねーよ偽者めッ!!」


「(!)」

(『希望の星(奇跡を起こせ)』。)


「…う…?」


「―っと、そんなテレフォンパンチなんな食らうかよ!!」


「がぶっ!?」



アブねぇな…分かりやすく殴りかかってきた勇悟の拳を、瑠璃を抱えた上で余裕をもってかわし、偶々すぐに起き上がった智秋の足につまづいた勇悟は派手に転んだ。


怪我が治ってから智秋や立夏と特訓した成果だ。

逆に勇悟の方が弱くなった気もする。



「お構い無しだなクズ野郎が…。」


「クソ…何でお前は無傷なんだよ…悪魔め…!」


「知るかよ。

それより勇悟、お前は何時も短絡的に暴力に訴える上に遂に見境なしになったか?

そんな無差別攻撃をしやがって、まるでテロリストじゃねえか!!」


「ウルサイ!!テロリストはお前だ!!

『COLOR*SEASONS』から出ていけッ!!」


「…瑠璃、コイツは何を言ってるんだ…?;」


「カラフルな季節~的なギャルゲーの話かにゃ~?」



カラフルな季節…ね、

瑠璃に出逢ってからの俺は、確かにカラフルな季節になったな。

だが、コイツの言う『COLOR*SEASONS』は全く理解できない。


それより…



「大丈夫か?智秋。」


「何とかな…。」


「取り敢えず保健室に行くか…。」


「すまねぇ…。」



まだフラフラしている智秋に手をかして、保健室に向かおうとするも…



「また…無視するつもりかよッ!!」



勇悟がりずに噛みついてくる…マジ何なんだこのクズ野郎は…。



「お前みたいな理智的な行動のとれない人間と、話す事は何も無い。

と言うか、そもそもお前が話し合いを拒絶した上に、俺達に負けた。

で、その敗者が何を吠えているんだ、え??」


「黙れ!!お前は今すぐ皆を解放しろ!!俺の美夏と瑠璃を返せ!!悪魔めッ!!」


「…。」



頭が痛いな…クソが…無視しよう。


こめかみを親指でグリグリとして、俺は保健室に向かい始めた。



「このッ…!」


「させね~!!」

(『苦痛からの解放(GOOD☆LUCK)』)


「うわっ!?」


「…瑠璃…;

またそんな無茶を…;」


「だいじょびよ~。

あたしゃらっき~だかんな~♪」



再び殴りかかってきた勇悟の前に瑠璃が立つと、偶々廊下に落ちていたらしい雑巾を踏んづけた勇悟はまた盛大にスッ転んだ。



「ぐ…ぅぅ…;」


「さぁ~今の内に行こうぜ~?」


「おう。」



そして…俺達は勇悟がうずくまっている間に、保健室へ向かったのだった。

うん、もう勇悟の奴は停学か退学じゃね?

こんなに大勢の生徒の前でやらかしたんだし。





はいっ、段々ヒートアップ(笑)していってますね。

最早最初の面影もない様な…?;

因みに、仮に勇悟が完全にご退場になっても物語は続きます。

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