エピローグ(第10話)
ほぼプロローグに至るまでの悠希視点での回想です。
瑠璃が天音さん達と奥へ行ってしまった後、俺は折角だから集まった皆と喋る事にした。
―でだ。
俺は瑠璃と付き合うに至った。」
「へぇ…何か改めて聞くとスゲー奴だな瑠璃は。」
「そうだな、大抵の“悠希の女友達”は勇悟の虜にされてきたからな。」
「はい、今考えると、そんな不誠実な人を好きだと思っていた私が恥ずかしいですね…。」
「うーん…?;
そうじゃなくてだな?;
そもそも悠希は、女性不信だろ?」
「あ…ならもしかして、私の事も…?」
「悪いが信じてねぇ。
緑川さんも、秋穂も、真冬ちゃんも、俺が友達でいるのは瑠璃の友達だからだ。
俺は瑠璃が信じて仲良くしている限りでしかお前等と仲良くするつもりはない。」
「「「それはそれで凄い愛情では(なのですよ)?;」」」
隠すつもりはないし今までもこれからも女に嫌われなくてもどうせ最後には疎遠になっていたからもう気にしてないしな。
嫌うならどうぞ~俺は瑠璃と男友達にだけ交遊関係があればそれで良いから。
「だーかーらーちげえよっ!!;
ったく、話が逸れるなぁ…;
オレが言いたいのは、そんな悠希の心の中にあっさり入っちまった瑠璃ってすんげぇ奴だなって事だっつーの!!;」
おおぅ…智秋の奴、結構吠えるなぁ…
だが…確かに瑠璃は凄い奴、だよな…。
「ん…そうだな…。
アイツは、勇悟の虜にならなかったのもあるけどさ…何より、諦めなかったんだ。」
そう、俺がどれだけ拒絶しようと、どれだけ無下に扱おうと…ただ1つだけ…『俺の彼女になる為』だけに、諦めなかったんだよ、アイツは。
俺はふと、最初の頃の事を思い出した。
俺は何時も、嫌な事があると屋上へ出て風にあたっていたんだが…
「だからッ!!
俺に構うなって言ってんだろクソガキがッ!!#
俺の事なんか…放っておいてくれりゃあ良いんだよッ!!#」
確かその日、勇悟に色々と強制的にギャルゲー的なイベントに巻き込まれてイライラしていたんだ。
そんな時に追い討ちをかけるように屋上へ現れた瑠璃が余計に気にくわなかったんだ。
「いんや~あ~きら~めね~ぜ~?
そう言いつつ~あんたは~泣いてるからなぁ~?」
そう言った瑠璃は、ポケットからハンカチを出して俺の顔へ必死に手を伸ばす…
「触れんな、鬱陶しい。」
「あぅっ…
当然、相手が勝手にやった事だし、マジで鬱陶しいからはね除けた。
…身長差故か、つま先立ちだった瑠璃はバランスを崩して転倒。
だが俺はガン無視してその場を去った。
また別の日。
しゃがんで、やるせなさに落ち込んでいたら、また、聞き慣れた陽気な声が…
「ゆぅち~ん!」
「ハァ…またかよ…
「…げんき~無いなぁ~…?」
「大抵テメェが来る時はそんな時だろうが。」
「ん~だって~あたしは~ゆぅちんの事~好きだかんなぁ~。
慰めたいんよ~側に居たいんよ~。」
「…あっそ―って…お前、その足はどうしたんだよ…?」
「えへへ~こ~ろんぢった~♪」
足の怪我…捻挫だろうか…?
包帯が巻いてあって痛々しい…。
……まさか、俺のせいなのか……?
あの時、俺が突き飛ばしたから………
なのに、それでも、瑠璃は…足をひきずってまで…
「そ~れより~!
え~い♪ぬ~くもり~お~届け~♪」
「…本当に…変な奴だなお前。」
「ん~ふ~ふ~♪」
それでも瑠璃は、自身を痛め付けたハズの俺を正面から抱きしめてくれた…
その温もりに…その日の俺は救われた。
だから…
「…ありがとうよ。」
「んふ~♪
ど~いたしましてぇ~!」
「…その、なんだ…礼だ、寮まで付き添ってやる。
だから、その…掴まれ。」
「お~?
ゆぅちんが~で~れた~♪」
「ウッセェ!!掴まんないなら俺はもう行くぞ!?」
「んふふ~♪
あ~んがとね~♪」
次に浮かぶのは夏休み前…
「ゆぅちんゆぅちん♪
あたしたち~せ~せき似てるよなぁ~?」
「で?
テメェには関係無いだろうが…。」
「いんや~あ~るぜ~!
折角だから~ゆ~と~せ~どうし~勉強会~しよ~ぜ~?」
「断る!!誰がテメェみたいな絵に描いた様な素晴らしい美少女優等生ちゃんと勉強会なんか…やったらスッゲー捗りそうとか…
そこで初めてふと頭に浮かんだんだ。
もしかしたら…瑠璃だったら本当に…微粒子レベルで勉強会に現れる可能性が存在する…かもしれないと。
現れなければ、それをネタに完全に拒絶すれば良いと。
「…ハァ…じゃあ、一応連絡先だ。
要らなきゃ捨てろ、どうせテメェの気紛れだろうしな、優等生ちゃん。」
「お~?い~の~!?
やた~♪な~んか知らんがゆぅちんの番号~げ~っと!」
「ウゼェな…用が済んだらさっさと失せろガキ。」
「あ~いあいさ~♪な~つやすみが楽しみ~だにゃ~♪」
そして…夏休み。
♪~♪~♪~
「もしもし、黒崎ですが。」
『こんにちは、青井瑠璃です。』
「…!」
本当に…かけてきた…?
嘘だろ…?
こいつは…勇悟好みの特上美少女だぞ…?
そんなコイツが…勇悟より…俺をとるってのか…?
『ん~?どしたゆぅち~ん?』
「あ、いや、勉強会…だろ…?」
『そ~だにゃ~♪
ゆ~と~せ~どうし~ふ~たりで勉強~♪
後~ゆぅちんと~あ~そびた~い♪』
「っ!?///」
コイツ…嘘だろ…?
あぁそうとも!!実際来たら勇悟とかが付いてきているはずだ!!
だが、予想に反して瑠璃は本当に一人で来た。
しかもだ…コイツとの勉強は…面白い。
同じレベルだからってだけじゃあ無い…
何気ない会話、息抜きの時の行動…全てがコイツとだと、楽しかったんだ。
だから…俺は、コイツなら…信じてみようと思った。
「その…なんだ。
夏休み中、一緒に勉強するか…?」
「(!)もち~♪ゆぅちんなら大歓迎~♪」
「言っておくが!!俺が暇な時だけだからな!?
でも、一緒に勉強したくなったら連絡寄越せ、空いてる日にお前の相手してやっから!!」
「は~い♪
ん~ふ~ふ~♪やっ~ぱゆぅちんは~やさしいよにゃ~♪」
「は!?勘違いすんなよ!!///
俺は、同じく特待生な青井さんと勉強したら捗るから誘っただけだ!!///」
「はいは~い♪
わかってんよ~♪」
その年の夏休みは、とても有意義なものになった。
そう、初めてなんだよ、女の子と二人きりで、こんなに楽しかったのは。
俺は、急速に瑠璃に惹かれていった。
俺が瑠璃に恋をしていた…って気付いたのは、文化祭の準備期間中。
「―ところで悠希くん。」
「ん?なんだよ瑠璃。」
「文化祭当日なんだけど―――
「青井さん!!」
「ん?勇悟じゃん、どした?」
「・・・・・何?」
瑠璃と話していて、彼女が文化祭の当日について何か言いかけたタイミングで狙った様に勇悟が来やがった…!#
「いやぁ~文化祭当日、青井さんとまわりたいなって思ってさ♪」
「「…。」」
クズはそう言ってエセ爽やか笑顔を浮かべる、クズのこの笑顔でどれだけの女がクズの虜になっていったのやら…だが、瑠璃は違った。
俺と同じ“冷めた目”をしていた。
だから俺は、“瑠璃と真剣に向き合う”覚悟を決めて、瑠璃の頭に手を置いた。
「…んっ…悠希…?」
「悪いな勇悟www
瑠璃は俺の彼女なんだwww
今まで黙ってたけど、俺さ、こいつと付き合ってんだよねwww
だから当日は俺が瑠璃とまわるって約束をしててさwww
わりぃ勇悟www瑠璃は諦めてくれwww」
何時ものハイテンションの仮面を付けた俺は、しかし本気でクズにそう言った、“瑠璃だけは、お前なんかに奪わせねぇ”そうゆう想いを込めて。
そして気付いた。
そうだよ…“俺は、瑠璃が好きなんだ”…って。
しかしクズはぶれないし動揺もしない。
やはり、自分が惚れた女なんだからテメェにはやらねーとばかりに冗談だと受け取りやがる。
「いっやー冗談キツいぜ親友!
つくならもっとマシな嘘をつけよ!!
それより青井さん、文化祭当日は、俺とまわってくれるんでしょ?」
「やだ、彼氏の方が大切だから悠希とまわる。」
冗談か本気か、そう言って勇悟を拒絶して頭にある俺の手を握る瑠璃。
そんな瑠璃の態度を、クズは何時もの様に自分に都合良く置き換える。
「なんだよ~青井さんまで悠希の悪ふざけに乗っちゃって~♪
じゃー約束したからね♪
文化祭当日は俺と一緒な!」
「ゆぅちん…ごめん…ちと身体…借りるぜ~…。」
「…んっ…あぁ、どうぞ。」
クズが去っていくと、瑠璃は力を抜いて、俺にもたれ掛かり、ジッと見つめてきた。
俺は、さっきの瑠璃の発言に対して少し迷ってから、思い切って真意を聞いてみた。
「…瑠璃、さっき言ってた事って…
「ん~?うそじゃ~ないぜ~…
あたしゃ~…文化祭は~ゆぅちんと~まわりた~い…。」
「…ああ、そうしよう。
瑠璃本人がそう言ってるんだ。
勇悟何か、気にしない。」
そして、振り返ってみれば、瑠璃の奴は最初から俺の事が好きだって言っていたんだな…と気付く。
だから俺は、瑠璃が保健室に行った日に、クズに連れ去られそうになっていた瑠璃を助けた―――
「…あたし~ゆぅちんの~“友達”に~なれて~良かった~。」
「はは…“友達”…か…。」
無事に逃げ切ってから…コイツは…俺を“友達”だと言った時、一瞬だけ寂しそうに見えた。
そう、俺が…コイツにそんな顔をさせている…いや、させてしまった。
“どうせ勇悟の彼女になる”、そう決めつけていたせいだ。
コイツは、勇悟の事なんか…大嫌いだってのにな…。
「…ゆぅちん…?」
「…すぅぅ…はぁぁぁ…
なぁ、瑠璃。
俺がさ、お前と友達以上になりたいって言ったら…どうする…?」
「ん~?
かんげ~するぜ~。
ゆぅちんなら~うぇるか~む♪」
「…それってさ…そうゆう意味って、捉えて良いのか…?」
「んふふ~♪
あたしは~あんたの事~結構~最初から~“そ~ゆ~目”で~見てたぜ~?」
「ん…そっか。なら瑠璃?」
「お~?」
俺は、瑠璃をしっかり見つめながら…今の俺の気持ちを…そして、瑠璃を信じて受け入れる覚悟を決めて、瑠璃の…恐らくこの半年間ずっと…待ち望み続けていてくれた…俺の覚悟を伝えた。
「俺の、彼女になってくれないか…?」
「ん~ふ~ふ~ふ~ふ~♪
もちろ~ん!よ~ろこんでなるぜ~!
んっむぅ~
「はぷっ!?
ん…くちゅ…っは…
って!いきなりキスかよッ!?///」
「ん~ふ~ふ~ふ~ふ~♪
因みに~いまの~あたしの~はじめて~♪」
「っ!?///
そっか…ありがとう、瑠璃。
これから、よろしくな。」
「こちらこそ~♪」
「―そうだよ、瑠璃は…確かに凄い奴だよ。
昔はあの見た目のせいで、周りから忌避されていたらしいからな。
それでも、苦しむ俺を助けたかったんだとさ。
自分と、同じだから。」
それなのに…あんなに明るくて、素直な奴なんだから、凄いよな。
なんと言うか、強いんだよ、アイツは。
だからこそ、アイツは甘えられる相手を探していた。
それが俺だった。
アイツの甘え方は、相手を自分に甘えさせる事。
アイツが望むのは、相手に求められる事。
アイツが好きなのは、自分を愛し、優しく触れてくれる人。
だけど…それは自分も、相手にそうしたいと想った人で無いと嫌だ。
それが、俺の彼女、“青井瑠璃”、なんだ。
俺がそう締めようとすると、立夏が鋭く指摘してきた。
「まて、その言い方だと、瑠璃はお前に同情して恋人になったみたいだぞ。」
「…ん?そうだな。最初はそうだったらしいから。」
「…最初は…か。」
「ああ、今は純粋に俺と居るのが楽しいから、自分が側に居たいから、俺に頭を撫でられるのが好きだから、なんだってさ。」
「あぁうん、ゴチソウサマ。」
ん?;
何か立夏の奴、心配して指摘したら砂糖水ぶっかけられたって表情をしてんな…?;
まぁ、分からなくもないが…アイツは、俺にとってもこの監獄で生き抜くためのチョコレートだし。
…と話していたら瑠璃達が戻って来た―
「ゆぅち~ん♪」
(エルランッ!!『苦痛からの解放』!)
「ウオッ!?
飛びつくなよ!!;怪我にひび―あれ?;
痛くない…?;」
「にゅふふ~♪
あたしが抱き付けばあんたははっぴ~♪
あたしは~ゆぅちんに全力であ~まえるぜ~♪」
「オイオイ…;」
[説明聞いただけで無詠唱とかどんだけ優等生なんだ瑠璃は…;]
「うん♪やっぱり彼氏さんには甘えたいよね~♪」
[愛の力は偉大だよ!天音くん♪]
「…何をしたか知らんが…確かに痛くなくなったしな…ありがとうよ瑠璃。」
瑠璃にタックルされた瞬間に肋骨の痛みが消え去った…
どう考えても怪しいが、瑠璃はにこにこしているし…俺は、久々に瑠璃を抱きしめて頭を撫でた。
「う~んやっぱりあんたに撫でられるのが一番気持ち~にゃ~♪」
「そうか?俺もお前を抱きしめていると安心するからおあいこだな。」
「う~ん!おあいこ~!」
『ハイハイ、ゴチソウサマ。』
おぉう…全員呆れちまった…;
でもまぁ…悪い気はしない。
俺は、改めて膝の上の瑠璃を抱きしめてそう思うのだった。




