第9話〈〈悠希視点→瑠璃視点〉〉
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―あれから、バイトを終えた瑠璃を伴って寮への帰り道を歩いていると、見知った奴がスポーツ用品店から出てきた。
「ん?智秋じゃん。奇遇だな。」
「やほ~チア~♪」
「おっ?悠希に瑠璃か。
お前は休むんじゃなかったか?」
「いや、瑠璃が心配だったからその付き添いだ。」
「そっか。
しっかしお前も変わったなぁ…
智秋は俺達の隣に来て一緒に歩きながら苦笑いする。
「だろうな。
自分でもびっくりだよ。
まさか、女性不信な癖に彼女ができるとかさ。」
「ははっ!!自分で言ってちゃ世話ねーなwww
…『前原 智秋』
171㎝
黒髪のジャギーショート、黒くて活発そうなつり目に、高くて整った鼻梁、薄い唇な、勇悟と違って顔の通り真に爽やかな奴で、
女子からだけでなく男子からも好かれている人気者だ。
でも、身体は女だ、男子の制服を着ているし男子寮に居るけど。
そんな、男みたいな奴だったから(と言うか男だと思っていたし、今もそれは変わらないから)コイツとは仲良くなれたんだよな…
…実際、彼は自分は男だと、主張しているし。
だからこそ、俺もコイツを男扱いしているし、身体については何も言わねぇ。
そんな『女性不信』である俺が友達でいる事は、コイツにとっても自分は男だと肯定されている気持ちになれて救いなんだとか。
「まぁ折角だから一緒に帰ろうぜ!!
デートのお邪魔じゃなけりゃな!!」
「…情けない話だが頼むよ智秋…。」
「あたしからも~おねがい~。」
「おー!?珍しいな…瑠璃はともかく、悠希が素直にオレに頼むとか…;」
「いや…今の俺じゃあ、勇悟に勝てやしないんだ…鍛えるのを疎かにしていた自分じゃあな。」
どこぞの捜査隊みたいに自分の半身を呼び出す異能力とかでもありゃあ別だろうが…
「…そうか…。
まっ、だったらしっかり守ってやるさ!
安心しな!!勇悟位オレにはへでもないぜ!!」
そう言ってカラカラと笑う智秋………マジなんなんだこの爽やかイケメン。
因みにこの智秋、武道家である。
だからこそ俺とかそこら辺の男子より強い。
幸いな事に道中何もなく寮に到着した。
自室へ戻った智秋と別れた俺達も、“自分達の部屋”まで戻ってきた。
「はぁ~つかれたぁ~。」
「お疲れさん。」
本当に疲れているのか、ベッドに“ぽふっ”と座った。
そんな瑠璃の頭をぽんぽんと撫でて風呂に入ろうとしたら突然瑠璃が声を上げた。
「…あ~っ!」
「ん?どうした瑠璃。」
「いんや~…大した事じゃ~無いけど~…
瑠璃は照れ臭そうに笑うと、俺に向かって言った。
「おかえりなさい、あなた♪」
「…!」
「…ん~~~っ!!///
やっぱり~はず~い~!///
いんや~きょ~から~しばらくは~ここが~あたし達の~家だからなぁ~?
ぷち新婚気分~?なんっつって~…///」
こ の 後 お 風 呂 で 滅 茶 苦 茶 イ チ ャ イ チ ャ し た 。
それからしばらく後、俺達はあらゆる意味でスッキリとした状態で勉強に励んでから一緒のベッドで眠ったのだった――――
――――そんな感じで数日が経過したが、何も変化が起こらなかった。
勇悟が襲いに来るわけでも無く、何事も…だ。
それが逆に不気味だった。
そして今日も最早日常となった瑠璃、緑川さん、立夏、秋穂の五人で登校していた。
「…あれから…教室や寮以外で勇悟くんの姿を全く見なくなりました…。」
「そうだね~…。」
「…確かに、不気味だ。
緑川や秋穂、青井は俺達の学年でトップクラスの美人達だ…
特に、そうでなくとも緑川とは幼馴染み、秋穂とはきょうだいだ。
それなのに、何故話しかけない…?」
「いえ…寮では話し掛けてくるんですよ…?
私や秋穂ちゃんには…。」
「その時は変わり無いのか?」
「はい…良くも悪くも何時もの勇悟くんですね…。」
(…確かに不気味ね。
『赤坂勇悟』は転生者…それも…この世界が“ゲームの世界”だと思っているタイプの…。)
「瑠璃…?」
ん…?何か瑠璃がまた“大人の表情”をしている…。
「どうしたんだ、瑠璃?」
「…何でもな~いよ~♪」
(…“あの時”、あたしは一瞬だけ、本当に一瞬だけ、"赤坂勇悟"を好きになりかけてた…。
それが嫌だって…強く願ったら…あたしにも出たのよ…雫さんの持っていたのと似たような物が…『アルカナ…【星】』が…。)
「おい…瑠璃…!」
「…。」
(あれは…何…?
天音さんや…雫さんに訊けば…分かるの…?
赤坂勇悟も…あたしの出したカードに気付いていた…。
もしかしたら…あのクズ…!
よし…訊こう…今日…雫さんと天音さんに…!)
「瑠璃ッ!!大丈夫か!?瑠璃!!瑠璃ッ!!―いっつう…;」
「あ…!
ゆぅちん…!
ごっ…ごめ~ん…あたし~…ちと~…気~になることが~あってなぁ~…?
帰りに~何時もの~喫茶店に~いこ~と~思う~。」
「…あっ…あぁ…?
なら付いていくぞ。」
「う~ん。お~ねが~い。」
(あたしは…これと似たような物が登場する乙女ゲームを知っている…しかも…雫さんに至っては乙女ゲームの親友ポジションのキャラクターにどこか似ているし…
もしかしたら…雫さんと天音さんの通っていた『学園』って…!)
やたら意気込んでいる瑠璃が可愛いなオイ。
その日の放課後…俺は瑠璃、緑川さん、立夏、真冬ちゃん、秋穂、智秋(偶々会った)とバイト先へ客として来た(今日はシフトが入っていない日なので)。
「いらっしゃいませ~…って…あ~っ♪
瑠璃ちゃんに悠希く~ん♪」
「おっ?何だお前等、今日は二人共休みだろう?」
「いんや~ち~としぃちゃんと~そらちんに~よ~じ~。」
「あら~?ならわたしは邪魔かしら~?」
「…いんや~…ち~と二人を借りて良いかぁ~?」
「まぁ、今は手が空いてるから良いけど…
「瑠璃、俺もついていこうか?」
「いんや~大した事じゃ~ね~し~この二人と~一緒に~いくんだから~だいじょびよ~?
あんがとね~ゆぅち~ん♪」
丁度客は居ないらしく、掃除をしていた天音さんと雫さんと奥さんが出迎えてくれた。
マスターは奥で他の事をしているらしい。
瑠璃は、俺達と奥さんを残して店の更に奥、休憩室へ引っ込んだ。
「ん~娘達に話なんて、何かしらねぇ~…?」
「まぁ…気にはなりますが、天音さんと雫さんと一緒なので…
俺は、そう自分に言い聞かせる様に呟いた…
瑠璃が俺にすら聞かせたくない『気になる事』…一体何なんだろう…?
(!)瑠璃side(!)
二人と一緒に休憩室に来たあたしは、事実を確かめる為、二人に向き直る。
瞳には決意、右手には…“カードスリーブに入ったタロット”…を持って…。
「…っ!
それは…!」
「…数日前~あたしの~手に~現れたんだぁ~?
確か~しぃちゃん~似たよ~なの~…持って~なかったぁ~?」
「「…。」」
二人は御互いに言うべきかどうかを迷っていたけど…やがて、天音さんが決意をして、あたしに向き直った。
「…それが本物なら…何か『能力』を使えるはずだ。
…先ずは、使って見せてほしい。」
「…ん~…それは難しい~…
「何故?」
「あたしの~『能力』は~…サポートばかりだからぁ~…
「…そうか、なら、そのカードを貸してくれないか?」
「は~い。」
「…大アルカナ!?
嘘だろ…?部外者が…“エルラン”を手に入れる事自体おかしいのに、何故大アルカナ…“オリジンエルラン”を…?」
あたしからカードを受け取った天音さんは、動揺しながらもスリーブの横にあるボタンを押す。
すると“情報”が浮かび上がる。
『青井 瑠璃/エルラン【THE・STAR】…大アルカナ、主に自分の運気が上昇する能力を得る』
…“エルラン”…やっぱりこの二人は、『キミと二人で』の舞台、“風華学園”の元生徒で…雫さんは親友ポジションの雫さんだった…!
あたしにエルランを返した天音さんは…とりあえず落ち着いたのか、“エルラン”と“オリジンカード”について簡単な事だけ教えてくれた。
「…このカードはね…異界の力の一部を行使できる物なんだ。
俺のエルランは『ワンドの8』、機動性が高くて少しだけ炎が扱える。
雫のエルランは知っての通り『カップの3』、治療と占いは出来るが攻撃能力の無いエルランだ。」
要約すると、風華学園は、表向きは就職特化な学園で、実際は『異能』を使って人助けを出来る人間を育成しようって学園なのよね…
その一環で異能力バトルもやっていたのだとか。
その中でも大アルカナ、“オリジンエルラン”は強力な能力が扱えるらしい…
やっぱり…エルランだったんだ…。
同じゲーム会社のゲームだけど…まさか世界まで同じだったなんてね…;
とにかく、これではっきりした。
隠しキャラに転生したあたしにクズのチートが効かなかったのは…あたしも不正能力“オリジンエルラン【THE・STAR】”を持っていたからなんだ…。
何せあたしの能力は…
Lv.1…切り開く力:“不利な状況”を打開する
Lv.2…跳ね返す心:物理的、心理的な支配を無効化する
Lv.3…苦痛からの解放:必ず良い事が起こる(良い事を起こす対象の指定も可能)
Lv.4…???
Lv.5…???
だと判明したから…。
内容の見方さえ分かれば、後はこの能力で悠希を助けるだけ…
そうよ…目には目を…不正には不正を…よ…!
はい、と言う訳で瑠璃視点では異能力バトル編に…ど う し て こ う な っ た と ?
いやいや、やっぱりチート主人公にはチートキャラをぶつけて対抗しないと悠希なんて瞬殺っすよ?
ちなみに、悠希が軽傷で済んだのも瑠璃の能力のおかげだったりします。(瑠璃本人は知る由もない)
・・・・・すみません、悠希視点は今まで通りラブコメります。
追記…『エルランカード』とは、自分の書いている別作品な物語の舞台、『エルラント』の力を引き出すカードって事です。安直だね!!orz




