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昏冥の空に青い鳥  作者: 音無 なの
第1部 第2章『瑠璃色新生活』
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第8話

今回は悠希と瑠璃のバイト先のお話です。

(…そういや俺、マスターの厚意で今日はバイトが休みなんだよな…。)


その日の授業が終わった俺は、そんな事を考えながら席を立った。


俺は特待生で学費免除と言っても小遣いは欲しかったからバイトをしているんだ。

バイト先はケーキ屋兼喫茶店。

だから去年の文化祭の時のウエイターはある意味本職の人間がやっていたようなもんなんだよな。


とは言っても俺はウエイターと簡単な料理担当なんだが。

紅茶やコーヒーは瑠璃やマスター達には到底敵わない。


因みに、他の従業員はそのマスターの奥さんと娘さん、ソレに娘さんの旦那さんだ。

…後、文化祭以降は俺についてきている瑠璃もだな、紅茶や料理とウエイトレス担当だ。

娘さんは…ぽわぽわしてる天然系で暑がりな巨乳さんだったな。

瑠璃がしょっちゅう抱きついてはしゃいでいる。

見ていて微笑ましい。

旦那さんは若干女顔なイケメン、人当たりが良くて俺もすぐに馴染めた。

そんな娘さんと旦那さんは昔、不思議な学園に通っていてそこでラブコメって結婚に至ったらしいが、それはまた別の話だ。

…俺の第1志望の学園だったのだが、仮に俺達がその学園に居たら…どうだったのだろうな?


閑話休題。


ただ、俺が休みでも瑠璃の紅茶は欲しいらしく、瑠璃は普通にシフトが入っている。

だから俺は瑠璃を送っていく為に結局バイト先まで来てしまった。



「悪いねぇ~…ゆぅちんは~休みなのに~。」


「いや、流石に瑠璃一人で喫茶店まで行かせる訳にはいかないしな…;」



瑠璃本人が気にしなさ過ぎだが、街中を歩いている時の瑠璃は小学生があすなろ学園の学生のコスプレをしている様にしか見えねぇんだよなぁ…;

喫茶店でウエイトレスの格好をして紅茶を淹れてても、マスターの娘(小学生)がコスプレして頑張って淹れてます~な感じだし…;



「「こんにちわー。」」


「ん?チビに…黒崎じゃないか、黒崎は休んでも良いと伝えていたはずだろう?」


「いや、流石に彼女を一人で行かせる訳にはいかなかったので…;」


「ども~♪」


「あぁ…なるほどな、確かにチビは心配か。」


「あは~。

あたしとしても~ゆぅちんと~一緒のほ~が良いからさぁ~♪」


「そうか。じゃあ黒崎は窓際の席にでも座っていてくれ。

勉強でもしていてくれりゃあサクラになるし、彼女を見守れるだろうしな。」


「…はは…ありがとうございますマスター。」




マスターの厚意に甘えて、ここで宿題と予習をさせてもらう事になった。

何か、瑠璃にだけ働かせるのは申し訳ないが…まぁ、本人も楽しんでやっているしな。



「よっ、勉強頑張ってるな悠希。

コーヒー、俺からの差し入れだ。」


「あ、天音そらさん。

ありがとうございます。」



一旦落ち着いたのか天音さん(マスターの娘さんの旦那さん)がコーヒーを持ってきて声をかけてくれた。

俺は貰ったコーヒーを一口飲んで一息ついてから隣に座った天音さんに話をふる。



「瑠璃はどうですか?」


「早速彼女の心配か?愛されてるなぁ…


「…そりゃあ心配ですよ。

何せ瑠璃はちっこいし、見た目も可愛いし。」


「…まぁ…大丈夫だろ。

しずくとじゃれあってる間は。」


「あ~…;」



雫さん(マスターの娘さん)は可愛いモノ好きだからなぁ…;



「し~ちゃんもふもふ~♪」


「あはは♪今日の瑠璃ちゃんは甘えん坊さんだねぇ~♪

なんならママって呼んでも良いよ~?」


((癒されるなぁ~。))



雫さんの豊満な胸に顔をうずめて甘える瑠璃。

うん、銀髪幼女、巨乳な癒し系美人妻に甘えるの図。癒されるなぁ~…

雫さんとか普段から母性の塊だもんなぁ…。

…と、同じく見とれていた天音さんがポツリと呟いた。



「なぁ悠希、瑠璃を俺達の娘にさせてくれないか?」


「そうゆうのは瑠璃の両親に言ってください天音さん。」


「ああそうだな。

うん、やっぱり娘かなぁ…雫も凄く楽しそうだし。」


「正直、雫さんみたいな、瑠璃が素直に甘えられる存在は助かります。

瑠璃はスキンシップ大好きで、俺にもしょっちゅう抱き付いてきていたので。」


「あぁ、今の悠希には甘えたくても無理なのか。」


「情けない話ですがね…


「まぁ、怪我ばかりは仕方がないだろう?尤も、軽傷だからほぼ治ってるのだろうけど。」

(雫の『能力』なら完全に治せるんだろうが…卒業生が『学園』の敷地外で能力…特に『治癒能力』を使用するには人命救助みたいな特別な場合を除いて許可が必要だしな…。

こんな軽傷に使う能力でもないし。)


「まま~♡」


「あははっ♪くすぐったいよぉ~♪」


「ほれほれぇ~♪」


「あははっあは…あ…;」


「ん~?ママ~何か~落としたよ~?

…なにこれ~?

……スリーブケースに~入った~タロットカード~?

小アルカナだね~…カップの3~…?」


「「っ!?;」」



タロットカード…?

あれ…何か天音さんと雫さんの顔がひきつってね…?;

何か…瑠璃からもおふざけな雰囲気が消えてね…?;



「あの…瑠璃ちゃん…?;

それ~返してほしいなぁ~…?;」


「(!)あ~ごめ~んし~ちゃん!」


「ありがとね♪これ~大事なものだから…。」



瑠璃からカードを受け取った雫さんは、本当に大切そうにカードを抱き締めたあと、ポケットにしまった。



「あの…天音さん、雫さんって普段からタロット占いとかするんですか?」


「あっあぁ!!そうなんだよ!!学生時代はそれはもうよく当たると評判でな!?;」


「そうなんですか…。」



まぁ…深くは聞かないでおこう。

天音さんも動揺しすぎなのが怪しすぎるが。



「ねぇ~し~ちゃん、あたし達の事も~占える~?」


「う~ん、出来るにはできるよ~?でも、今日、今すぐには無理かなぁ~。」

(学園に許可を貰わないと学園外で『アルカナ』は使えないからねぇ~…。)


「天音!!雫!!瑠璃!!何時まで休憩しているんだ!!

客だぞ!!」


「ごめんなさいお父さん!!;」

「すまない義父さん!!;」

「「すみませんマスターッ!!;」」


「待て、悠希には言ってない。

お前はそこに居て勉強でもやっていろ。」


「イエッサァァァァ!!;」



因みにマスターの見た目はスキンヘッドにグラサンな厳つい人 (だがパティシエでバリスタである)、そんなマスターからどうやったら雫さんみたいなぽわぽわした人が産まれるのかはちょっとした謎である。

※雫は母親似で、母親は普通に(?)ぽわぽわした美人さんです。



「ご注文をお伺いします。」


「カプチーノ。」


「ホットコーヒーを。」


「はい。

ご注文はカプチーノとホットコーヒーですね?」


「はい。」


「お店の手伝いかな?小さいのに偉いなぁ。」


「ありがとうございます♪」



…うん、見た目が小学生な割には何か普通に馴染んでるな。

流石に常連客以外には驚かれるけど。

後、笑顔の仮面は得意だから接客もバッチリだし。


…別の席で紅茶のオーダーが入ったのか、オーダーを伝えた瑠璃はそのまま厨房へ…

あ…今度は飲み物と料理を運ぶのか…



「お待たせいたしました。

特製ブレンドティーとサンドイッチです。」


「おやおや、可愛らしいねぇ。

ありがとね。」


「ごゆっくりどうぞ~♪」



ん…ちょこまかと動き回る瑠璃を見ているとやっぱり和むなぁ…。

っと…勉強勉強っと!!

宿題は終わったから次は3日分を取り戻さねぇと…!






「はぁ!?なんだとクソガキ!!#」



しばらく瑠璃に借りたノートで逃した分の授業内容を頭に叩き込んでいたら、いきなり怒鳴り声が―ってクソッ、何で今日に限ってトラブル起きるんだよ!?#


って…そうか…マスターが出掛けちまったのか…!?;

気付かなかった…;

えーっと…天音さんは―――あ、出てきたな。

…って絡まれてるのは瑠璃じゃねぇか!!;

クソッ…!#

俺も席を立ち、瑠璃に向かって怒鳴る客の方へ向かう。



「お客様、どうかなさいましたか?」(営業スマイル)


「あ?#んだよまたガキじゃねぇか!!#

この店にはガキに給仕させてんのかぁ!?#」


「…ガキでも、ここのウエイターですので。」


「失礼、うちの者が何か?」


「ハッ、やっとまともなのが出てきたか。」



クッソ…!#

テメェも高校生じゃねーか!!#自分より小さいからってバカにしやがって…!#

つーか喫茶店で喚き散らすテメェこそガキじゃねぇか…!#



「…。」


「大丈夫かよ、瑠―


「…完全に…言い掛かり…しかも…悠希に…ガキですって…?許さない…悠希を…バカにするのは…許さない…。」


「―璃…?;」



うわぁ…瑠璃の目が絶対零度な位に冷えきってんな…

怒鳴っている客はそんな瑠璃の視線に気付くはずもなく、席まで来た天音さんに文句を言う。




「なんなんだテメェの店はよぉ!

俺はアイスコーヒーを注文したのにアイスティーを出しやがって!!#マトモに注文も通せねぇ様な乳クセェガキに給仕させんじゃねーよ!!

しかも屁理屈を言って謝りもしねぇ!!慰謝料払えや慰 謝 料 !!」



そんな客に対して、天音さんはにっこりと笑顔を張り付けて対応する。



「それは申し訳ありません。

しかし、当店ではその様な事を防止する為に再確認をさせていただいていたはずですが?」


「あ?んなもん口だけだろ!?#

口ではアイスコーヒーと言いつつ紙にはアイスティーって書いてんじゃねーのか!?#」


「おやおや、態々注文1つにそんな有り得ないミスをしますか…?

言い掛かり、ですよね?」


「あ?#

ふざけてんのかテメェ…!#」



どうやら天音さんも気付いてはいるようだが…

どう返すよ?



「いえいえ、滅相もございません。

ただ、当店には()()()()()()()()()()()()()()ございませんので、注文を書き間違えようが無いのです。」


「ハァ!?」



ちょっ!!;天音さーん!?;

言うに事欠いてあるもんを無いって!!;

当然、相手は更に怒る。



「何滅茶苦茶言ってやがんだ!?#

ア゛ァ゛ッ!?#」


「こちらが当店のメニューになります。」


「…!?」



しかし、天音さんがメニューと注文表を見せると、相手は顔を青ざめさせる。



「…どう言うことだ?」


「…んっ、悠希、モノは、言い様。」


「…!」



メニューを見ると、確かに『瑠璃特性ブレンドティー(ホット・アイス)』と書いてある。

けどなぁ…;

そんなの、それこそアイスティーで通せるし…

…ってあれ?

注文表には…『瑠璃茶 (アイス)』って…

あぁ…確かにそりゃあ“口でコーヒーと言いつつ書き間違え”ようもない。

そして、相手が動揺した事で只のクレーマーだと当たりをつけた天音さんは笑顔を消した。



「…なぁ、君はうちの従業員を散々ガキだとバカにしてきたけど。

怒鳴り散らしていた君の方が余程ガキだし…この二人はこう見えて進学校『あすなろ学園』の特待生だぞ…?

…人を見た目だけでしか判断出来ないお前より余程頭の良い奴等なんだよ。」


「なっ…あっ…ハァァッ!?;」


「「証拠はこれだ。」」



俺は学生服の胸ポケットから、瑠璃はウエイトレスの制服のポケットから(警察に問われた時の対策で持ち歩いている)生徒手帳を出して中身を見せる。



「今回の事は不問にしといてやる。

分かったらとっとと帰りな!!」


「ひっ…チックショー!!」


「ったく…はた迷惑なアホだな…。」



そう呟いた天音さんは、すぐに営業スマイルを張り付けて他のお客に向かって頭を下げた。

つられて俺と瑠璃も頭を下げる。



「お客様方!お騒がせして申し訳ありません!!

お詫びとしてシュークリームをサービスさせていただきます!!

雫!!皆様にシュークリームを!!」


「はーい!!」


パチパチパチ…



中に居た客から拍手が起こる中、天音さんは俺達にも改めて頭を下げた…って止めてくださいよ!?;



「…すまない、君達には不快な思いをさせてしまったね…。」


「だいじょびよ~?

あたしは~子供扱いに~なれてるし~…ただ…ゆぅちんまで~子供扱いされたのが~ムカついた~だけよ~?」


「頭を上げてください天音さん!;

天音さんが謝る事じゃありませんから!!;」


「…そう言ってくれると助かるよ…とにかく、俺は君達の腕をかってるんだから、これからもよろしく頼むよ。」


「「はい!!」」



ここの人達は温かいから好きだ。

これからも、ここは続いていってほしいな…





テンプレ(笑)なクレーマーを登場させてしまいましたが、本来のこの店はアットホームな落ち着けるお店です。

因みにこの店の紅茶メニューはガチで『瑠璃特製ブレンドティー(その日の瑠璃の気分次第の紅茶)』しかありません。

前日に瑠璃が翌日の茶葉を調合してから帰ってます。

ミルクティーやレモンティーの場合はそれぞれその紅茶のミルク入り、レモン汁入りで出てきます。

最初はオプションメニューとしてたまに瑠璃が作って出していたらしいですが、人気が出たので固定メニューになりました。

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