第十一話 疫病と契約
ゴイガッラ村長を事務所に通し、リシェイが淹れてくれたお茶を勧める。
春先とはいえまだ肌寒い日だ。室内で少し体が温まるまで待ってから話を聞いた方がいいだろう。
頃合を見計らって、声を掛ける。
「それで、本日はどうしたんですか。あまり余裕がなさそうですが」
ゴイガッラ村長は一瞬体をこわばらせると、頭を下げてくる。
「先ほどは失礼した」
「いえ、嫌味などではないんです。こちらこそ、紛らわしい言い回しをしてしまいました。すみません」
予想以上に余裕がない。これはかなり深刻な話のようだ。
メルミーも空気を読んだのか、いつもの明るさは鳴りを潜めている。
リシェイが書棚からランム鳥関係の資料を出しているのを視界の端に確認しつつ、ゴイガッラ村長に話を促す。
「それで、お話というのは?」
「ゴイガッラ村のランム鳥が、疫病により全滅しました」
「ぜ、全滅ですか?」
いくら疫病とはいえ、百羽以上いるランム鳥が一冬で全滅とは。
ゴイガッラ村長も村始まって以来、初のことだという。
「原因は不明。症状は、十日ほどかけて羽が抜け落ちていき、おが屑の山の上で羽をばたつかせて何かを落とすような素振りをします。そして、三十日以内には死亡。症状の出たランム鳥を速やかに小屋から出したりもしましたが、甲斐なく全滅いたしました。正直なところ、症状の蔓延具合から疫病であろうと判断を下したにすぎず、根本的な原因は分かっていないのです」
ゴイガッラ村にある昔からの資料には同様の症状が出た例もあったが、その年も半数以上が死亡しており原因解明には至っていなかったという。
村長はタカクス村に病を運ばないよう、十分な沐浴の上、衣服も別の村で新調した物を丹念に燻し、天日に干した上で来たという。
「タカクス村では、どうでしたか?」
「そういった症状は報告されていません。この冬の間、寒さからヒナを守るために飼育小屋の中で大半を過ごしましたが、ランム鳥たちは集まって暖を取るだけでした」
「では、やはり我が村に原因があるとみていいですね」
ゴイガッラ村長は息を吐き、真剣な表情で俺を見つめてくる。
「お願いしたいのはここからなのです」
ゴイガッラ村長は改まってそう言うと、頭を下げてくる。
「ランム鳥を融通していただきたい」
「ゴイガッラ村なら、わざわざここまで買い付けに来なくともヨーインズリーの方が近いのでは?」
ヨーインズリーではランム鳥を育てていないが、ランム鳥を育てている村から商売にきている者ならいる。そういった者と交渉し、買い付けてくるのは造作もないはずだし、その方が労力も少ない。
「まさか、ヨーインズリー周辺で疫病が蔓延しているんですか?」
「いえ、そうではないのです。疫病が起きたのはわが村だけのようですから」
「では、何故?」
「融通していただきたいのは、繁殖のためのつがいではなく、輸出用の食肉と卵なのです」
ランム鳥が全滅したため、輸出用の肉が足りないのか。
ゴイガッラ村はヨーインズリーと個別契約を結んでおり、定期的に輸出用の肉と卵を卸していると、前に聞いたことがあった。
「輸出ができなければ違約金を払う事になります。払えない額ではありませんが、払うとなれば村を解散することも視野に入れなくてはならないのです」
「なんでそんな契約に……。もしかして、支え枝の代金?」
ゴイガッラ村が橋を架ける予定だった枝はブランチイーターの食害を受けていたため、下の枝から支え枝を伸ばす工事をしていたはずだ。
その代金の捻出をしたところに今回の疫病が発生し、村の蓄えが一気に減ってしまったのだとすれば――
「お察しの通りです。見通しが甘かった」
ゴイガッラ村長が俺の予想を肯定する。
しかし、百数十羽を飼育していたゴイガッラ村が結んだ契約だ。うちで引き受けられる規模なのか?
「具体的な数は?」
「三十日後まで食肉を二十羽分、卵を二百個。緊急で必要なのは以上です」
「二十羽って!?」
リシェイが思わず声を上げ、苦い顔をする。
現在、タカクス村にいるランム鳥は成鳥で三十羽、昨年生まれて何とか冬を越したヒナが十三羽だ。
ヒナも含めて、去年の冬支度のために買い込んだ分を補填し村を豊かにするべく資金を稼ぎ出すための、いわば元手である。
二十羽失うのはかなり痛い。少なくとも、今年中にランム鳥の事業拡大は出来なくなると思った方がいい。
卵の方も問題だ。二百個という数よりも、ヨーインズリーまでかかる日数が問題になる。
搬入先であるヨーインズリーはタカクス村から七から八日の道のり。無精卵で揃えても腐る可能性がある。
タカクス村にいるランム鳥はγ系統、産卵頻度は二日に一度だ。二十羽を生きたまま運べば道中で最大八十個を生んでくれるが、旅で環境が変わった事によるストレスが産卵頻度に影響を与える可能性が高い。
そもそも、飼育小屋にいるランム鳥三十羽がすべてメスというわけでもないのだ。オスだけ残しても卵が取れなくなる。
「リシェイ、現在生き残っているヒナの雌雄の内訳はどうなってる?」
「メスが十羽、オスが三羽ね」
「そのまま成長してくれれば半分は補填できるか」
食肉はクリアできる。問題は卵か。
「……アマネはこの話を受けるつもり?」
リシェイがゴイガッラ村長を気にしつつ問いかけてくる。
受けないと言えば、当然のような顔をするのだろう。そうしないと俺一人が悪者になるから。
「心配しなくても、受けるさ。明日は我が身というからな。それに、研修を受け入れてもらった恩がある。返さなければ罰が当たる」
リシェイが僅かに笑みを浮かべて、事務所の玄関へ向かう。
「マルクトに話を通してくるわ。メルミー、ここをお願い」
「分かったよー」
メルミーに手を振って、リシェイは事務所を出て行った。
ゴイガッラ村長が驚いたようにリシェイを見送り、恐る恐る俺を見る。
「本当にいいのですか?」
「ご恩返しくらいさせてください。とはいえ、俺の一存では決められません。村のみんなに話を通すことになります。うまく説得するためにも、状況を詳しく教えてください。まずは契約内容から」
メルミーが用意してくれた紙を机の上に広げて、契約内容を聞く。
二カ月ごとに食肉と卵をヨーインズリーに卸す契約との事で、数は納入ごとに次回分を調整する形だという。
「つまり、今回を乗り切れば交渉次第で乗り切れる、と?」
「そうなります。こちらの事情も伝えてありまして、次回分は交渉中です。しかし、栄養事情などの問題で今回の契約だけはどうしても履行してもらわないと困る、とヨーインズリーの担当者が申しておりまして」
「突然の話なので、双方が慌てるのも分かります。今回の契約は俺たちで助けることができますが、次回はさすがに無理です。ランム鳥の飼育を行っている他の村との交渉の場をゴイガッラ村長が取り持つなどして、ヨーインズリーの担当者に恩を着せた方がいいでしょうね」
ことは疫病だ。ヨーインズリーの担当者だって諦めざるを得ないだろう。
話を今回の契約履行に絞り、話を進める。
食肉に関しては生きたままのランム鳥を運搬する事で解決するとしても、問題は卵だ。
「タカクス村からヨーインズリーまでの道は整備されていません。卵は割れる可能性も考慮しないといけない。そのあたりの責任をどこが負うのかなども踏まえて、新たな契約を結べる商人に心当たりは?」
「ゴイガッラ村からの卵の運搬を引き受けてくれている商会に話を通してあります。声を掛ければすぐにこちらへ来ていただける手筈も整っております」
「分かりました。では、村のみんなに説明して合意を取り付けた後、連絡を取りましょう。後は、卵の数をどうやって確保するかですね」
数は二百個か。
手元の資料は昨日までのものだが、備蓄分が五十個。三十日後までは当然、保存できない。
ヨーインズリーまでの日数を考えても、発送前日の卵で商品になるかどうかという程度。これが夏場なら卵が休眠状態にならず確実にアウトだった。
前日と当日朝に確保できるのが、今のままでいくと三十個前後、後百七十個が必要な個数だ。
この冬を生き残ったヒナがそろそろ卵を産み始める頃だとは思うが、考えに含めない方がいいか。
「二つ、ご提案があります」
ゴイガッラ村長がそう前置きして、懐に手をやった。
取り出したのは財布だ。
「ここに玉貨が五枚あります。これでランム鳥を代理購入してはいただけませんか?」
「どういう事です?」
「疫病の発生原因が分からない以上、我が村でランム鳥を飼育するのは難しい。しかし、資金だけならば捻出できる。この玉貨五枚でランム鳥のメスを五十羽買い付け、それをしばらくタカクス村で育ててほしいのです。疫病の原因が判明次第、その五十羽をゴイガッラ村で引き取ります」
ゴイガッラ村長の話を受ければ、ランム鳥が八十羽に増える。卵の生産能力も倍になる。
おそらく、発送当日には八十個を確保できるはずだ。
あと百二十個。
俺は机の横に置いてある帳簿をめくり、使える費用を計算する。
「飼料代はゴイガッラ村に払っていただきたい。その上で、タカクス村で育てている間の卵の売買による利益でさらにランム鳥を購入できれば……」
「それは難しいでしょう。この冬の寒さでランム鳥が凍死した村も多い。五十羽を買い付けるだけで限界かと思います」
ゴイガッラ村長曰く、ヨーインズリー周辺でも凍死したランム鳥は多く、ランム鳥の価値は上昇傾向にあるらしい。ゴイガッラ村の伝手を利用してどうにかランム鳥五十羽を確保するだけで、追加は出来ない。
「そこで、もう一つのご提案です」
ゴイガッラ村長はそう言って、メルミーを見た。
「巣箱を作り、ランム鳥を出荷前から巣箱の中で飼育する事で慣れさせ、ヨーインズリーへの出荷中にも環境が変化したことを気付かせないようにすることで産卵させるのです」
「そんなことが可能なんですか?」
「記録があります。しかし、それでも卵の数を確保するのは難しい」
いくらランム鳥でも、巣箱の中から環境変化に気付くモノが必ず出てくる。
そして、運搬中に残りの卵百二十個確保するには、同時に三十羽を出荷し、道中で二日に一度の産卵頻度を守らせる必要がある。
土台無理な話だ。
「四十羽出荷できれば、残りを産卵させる事もできるけど」
ゴイガッラ村の資金で買い付けたランム鳥を丸ごと〆る勢いだ。それでも確保できるかどうかわからない上に、運搬にかかる費用を考えるとかなりの赤字額になる。
「ねぇ、生卵じゃなきゃダメなの?」
不意にメルミーが疑問を口にした。
「契約内容に卵とあるんだから、生卵じゃなきゃダメだろうけどさ。そこを交渉でどうにかできないのかなって」
「交渉してみましたが、生卵で譲ってはもらえませんでした」
すでに手を打った後だったらしい。
八方ふさがりかと思った時、事務所の扉が開かれた。
扉の先に立っていたのは、必死に他人の振りをしながら涙目になっているリシェイと、この冬に鍛え上げられた肉体でポージングしているマルクトだった。
「話は聞かせてもらいました!」
むしろ、こちらが話を聞きたい。何故ポージングしているのかと。
マルクトは右腕に力こぶを作りながら事務所に入ってきた。一冬で出来上がった細マッチョである。暑苦しい。
「わざわざタカクス村から出荷しようとするから、卵が賞味期限切れを迎えてしまうのです。道中に飼育小屋を建ててしまえばよろしい」
飼育小屋の費用はいくらか。
俺は公民館に置いてある乾燥中の木材を思い浮かべる。去年は世界樹の伸びが良かったために薪にするには多すぎ、製材して家具の作成にでも使おうと二階の角部屋に押し込めた材木がある。
三十日後に出荷するから、十日ほどで建設し、二十日ほどランム鳥を放り込んでおけばいいあばら家ならば、何とか作れない事はない。大きな犬小屋のようなものだが、確かに作れる。
そこに現在飼育小屋で卵を産んでいるランム鳥を移し、環境に慣れさせる。
産卵拠点をタカクス村からヨーインズリー側に寄せてしまうわけだから、現在卵を産むことができるランム鳥をフルで活用できるだろう。
つまり、現在タカクス村で卵を産んでいるランム鳥三十羽から、一気に三十個の卵を確保できる。
さらに、ゴイガッラ村の資金で購入するランム鳥を合わせれば、二日で八十個前後。出荷日までに二百四十個の卵を確保する形。
ギリギリ、間に合う。
万全を期すのならもう十羽加えておきたいところだけど。
そう思った矢先、マルクトが口を開く。
「村長にご報告です。この冬を生き延びたヒナの内、二羽が産卵を開始しました。二十日以内に残りも産卵を開始する見込みです」
「……リシェイ、本当か?」
「事実よ。ついさっき確認したわ」
「ゴイガッラ村長、運がよかったようですよ」
ヒナの内、メスは十羽。産卵能力を得たなら、二百個の卵を余裕をもって確保可能できそうだ。
「メルミー、すぐに作業に取り掛かる。久しぶりに建橋家としての仕事だ。三日以内に候補地を選定、その後四日以内に建造を開始する。ヨーインズリーの木籠の工務店に連絡を取ってくれ。ゴイガッラ村長はランム鳥の購入と商会への連絡をお願いします。リシェイはみんなを公民館に集めて」
「お待ちください、アマネさん!」
ゴイガッラ村長が慌てた様子で俺に待ったをかけてくる。
「なんですか?」
「もう、動き出してしまってもよろしいのですか?」
「えぇ、どうぞ」
必ず村のみんなを説得する。
公民館に集まったみんなは事情を知らないため不思議そうな顔をしていた。
俺はリシェイと共にみんなの前に立つ。
「ゴイガッラ村から村長が訪ねてきた」
そこから、疫病が発生した事などのゴイガッラ村の状況を説明する。
疫病の単語が出た瞬間、みんなが表情を険しくした。ランム鳥は村の財産だ。他人事ではない。
「疫病の原因はまだわかっていない。ゴイガッラ村が現在調査中だ」
「話は分かったが、それとこの集まりとは何の関係があるんだ? 疫病なんて発生しなくても飼育小屋にはマルクトを始め、数人しか出入りしない。もう冬も越えたしな」
ビロースが不思議そうに聞いてくる。村のみんなを代表するような、的確な質問だった。
「ゴイガッラ村が契約不履行で解散の危機に瀕している。これを助けたい」
「疫病で全滅って時点でそうだろうとは思ったが、できんのか?」
俺は村のみんなを見回して、頷きを返す。
「ヨーインズリーに食肉を二十羽分、さらに卵を二百個納入する。ゴイガッラ村長との話し合いの結果、契約履行の目途はつけた」
「できるとは思えないんだが、村長が言うからには本当にめどがついてるんだろうなぁ」
ビロースが頭を掻きながら、詳しい話を促してくる。
「納入先のヨーインズリーとの間に一時的な飼育小屋を設け、そこにランム鳥を移して飼育、三十日後の納入日に合わせて卵を確保する。ゴイガッラ村の資金提供を受けて新たなメスのランム鳥を五十羽確保、これも一時的な飼育小屋に入れる」
「飼育小屋の場所はこれから選定か?」
「そうだ。これからすぐに出るつもりだ」
「なら、候補地に当てがある。ヨーインズリーを拠点にしていた頃があるからな」
ビロースはそう言って、ゴイガッラ村救済に賛成を表明してくれた。
俺はビロースに礼を言ってから、村のみんなにデメリットの説明をする。
「ビロースは先に賛成してくれたが、みんなに説明しないといけない事がある。ゴイガッラ村を助けると、今年はランム鳥の事業拡大ができない。黒字を維持できるかも不透明だ」
元々ギリギリで回していた。去年をどうにか乗り切って、これから事業を拡大していこうという矢先に出鼻をくじかれたようなものだ。
気分はよくないだろう。
「それでも、疫病の発生は他人ごとではないとみんなも思ったはずだ。ここでゴイガッラ村を見捨てるなら、俺たちが同じ境遇になった時、誰も助けてくれないと思った方がいい。研修を受けさせてもらった恩もある」
俺は言葉を区切り、息を吸い込んでみんなに頭を下げた。
「俺は、ゴイガッラ村を助けたい。これは俺のわがままだ。でも、みんなに協力してもらいたい」
沈黙。
聞こえてくる衣擦れの音から、みんなが顔を見合わせているのが分かる。
「……目途がついているのなら、助けるべきでしょう」
「四年間貧乏村をやってきたんだ。もう一、二年延びたくらいで文句言わないさ」
「ここで見捨てるような村長じゃないって分かって、逆に安心したね」
予想以上に、あっさりしたものだった。
「村長、何を呆けてるんだ。さっさと飼育小屋を建てて来いよ。時間もないんだろ?」
誰かが言うと、ビロースが席を立った。
「んじゃあ、村長の畑の種まきはやっとくぜ。落ち着いたら酒に付き合え」
候補地までの地図だと言って俺に紙切れを渡すビロースに、村の者が笑いながら声を掛ける。
「おい、ビロースずるいぞ。ボクだって村長に恩を着せておきたい」
「いざとなったら助けてくれるしな」
「ちがいない」
みんなが笑いながら、食堂を出ていく。
ようやく上向いて行く経営の出鼻をくじかれた事に対する不満など微塵も感じさせなかった。
「……いい村だな。まったく」
羨ましいだろう。ここ、俺たちの村なんだぜ?
ケインズに自慢してやろうかと思いながら、俺は食堂を出た。
旅支度を整えたメルミーが公民館前で待っている。
「行こうか」
俺はメルミーと共に、村を出発した。
結果から言って、ヨーインズリーへの納品はギリギリ間に合った。
足りない分は簡易小屋で後から生まれた卵を持って走って届けるというギリギリっぷりに、ヨーインズリーの担当者から感謝の言葉を貰ったほどだった。
春を過ぎ、夏の初めにゴイガッラ村長から届いた感謝状には疫病の発生原因が判明したとの報告も添えられていた。
「原因はカビか」
疫病の発生原因、症状、予防法などの一次調査結果、と題されたその報告には、疫病の発生原因が一種のカビであり、湿度と温度の管理、鳥の体温保持のために設置する羽毛クッションを燻すなどで予防できると書かれていた。
判明したきっかけは、羽毛クッションを処分する前に検査した事で、クッション内の羽毛にカビが生えていた事。
その後、専用の小さな隔離小屋の中でランム鳥を使った対照実験を行った結果、カビの生えた羽毛クッションを置いたランム鳥は二十日ほどで冬の疫病と全く同じ症状に陥ったという。
発症した場合の治療方法は確立できておらず、研究は慎重に行うと書かれていた。
「羽毛クッションを燻すと言ってもなぁ」
疫病の対策法が分かった以上、取り入れないわけにはいかない。
だが、燻すとなれば燻煙施設が必要になる。いまはまだランム鳥の数が少ないから専用設備を作らずともクッションを燻すことはできるが、今後規模を大きくしていくのなら燻煙施設は必須だ。
燻煙施設の運用ノウハウもないため、規模の小さな今の内から経験を積んでおきたい。
「リシェイ、メルミー、タカクス村に燻煙施設を作ろう」
俺は二人に声をかけ、計画を練るために三人でテーブルを囲んだ。




