シトロウイユとポティロン
少女はふと少年に問いかけた。
『ねぇ……? 日にちと時間が分からないなら……何月かわかる……?』
「えっ……? き、急だな……。えっと、一応……10月だったはずだが……?」
少年は少し考えながらも今月の月を答えた。
「な、なんだよ……? いきなり、そんなこと聞き出して……」
『ちょっと確かめたかっただけ……。深い意味は対してないわ……』
「お前な……。でも……今月だけは、はっきりと分かるんだよな……。考えてみれば、なんでだ……?」
『そんなの簡単じゃない。世間じゃぁ、ハロウィンだとかトリック・オア・トリートとかパンプキンとか……そんな事で賑わってたじゃない? だから、印象だけが残ってるのかも知れないわよ?』
「な、なるほど……。その発想は全く無かったな……」
『あなた……頭堅そうだものね……。まるでcitrouilleみたいだわ』
少年はちょっとカチンときたが、意味がよくわかっていなかった。
「な、なんだよそれ……。どういう事だよ……?」
『フランスのかぼちゃの事よ。citrouille のcitronはレモンって意味。皮がレモン色ぽいからそういう風につけられたらしいわ』
「へぇ~……って、それと俺に何の共通点があるんだよ!」
『そうね……。シトロウイユはペポカボチャの事。見た目は綺麗で可愛いんだけど、水っぽくて、繊維が多いから、実際には食用として向いてないらしい……』
「って事はなんだ……? 俺がお前を守るのに不満があるって事か?」
『ん~っ、半々ってとこかしら……? 言ってくれた時は嬉しかったけど、正直言って、不安ばかりよ』
少年はその言葉にどう対応すればいいか迷った。しかし、堅いながらも少年は反論してみせた。
「じ、じゃぁ、お前は自分をかぼちゃに例えるなら、何かぼちゃなんだよ?」
『面白い事聞くのね。予想外だった。そうね……。わたしを例えるなら、un potironってとこかしら?』
「ぽ、ぽてろん……?」
『ポティロンよ。西洋かぼちゃの事」
「な、なんで、お前が西洋かぼちゃなんだよ……?」
『それは見た目は地味だけど、中身は甘くて美味しいのよ』
「……へっ? 地味は認めるけど……。お前が甘くて美味しい? 笑わせるなし! ぶっ! ぁはははははは!」
少年は腹を抱えて笑い始めた。
『はぁ……、人間って……見た目じゃないんだからね……』
少女は顔を赤らめながら、そう呟いたが、少年の耳には届いてはいなかった。