ミッドもナイト
勢いで開いていた体操マットに押し倒してしまった少年は困惑していた。同様に少女も冷静な態度を見せながらも、内心はかなり困惑している。
しかし、青く薄暗いライトが2人の気持ちを徐々に落ち着かせていく。それはまるでラブホの雰囲気を醸し出しているかの様であった。
「えっと……どうしたらいいと思う……?」
少年は困惑しながらも、どこか落ち着いている様であった。ライトの効果であろう。
『し、知らないわよ……。分からないなら、どいてよ……。重たい……』
「あっ、ごめん……」
その場から一旦離れる少年に冷静に答えつつも、少年から視線を逸らして、どこか照れくさそうにしていた。しかし、顔色はライトの色で分からなかった。
2人はそのまま黙り込んだ。外からは風の吹く音が聞こえてくる。だが、原動機の音は聞こえなかった。わざと止めたのだろうか……?
少しの沈黙の中、徐に少年が口を開いた。
「それにしても……奴の気配が無くなったな……」
『そうだね……。どこかから見張ってるのかな……?』
「見に行きたいとこだが……。あれに敵う様な武器なんて持ってないしなぁ……。あぁ~、男として、みっともねぇな……」
『そうね……。みっともないと思う……。女子を怯えさせる男子なんだから……』
少女はそういうと顔を少年の真反対に向けながら、少年の手の甲に少女は手のひらを乗せた。
「ぇっ……? おま……」
『なんでも1人で抱え込まないで……。2人いるんだから……。だから、ちゃんとわたしを守ってよね……』
少女の視線は少年の真反対のままだった。しかし、少女の気持ちは少年の方を向いていた。
「お、おぅ……。そうだな……。俺が守ってみせるから、安心しろ……!」
そういうと少年は少女の手を強く、半ば優しく握った。
日にちも曜日もわからない空間で、2人の気持ちは分かり合い、1つになった。