青いベリーライト
少女は頭を抱えて、汗を流し始めた。しかし、季節は秋への移り変わりであり、夜は肌寒いほどだ。
今、少女が流しているこの汗は暑さによる汗ではなく、記憶が無くなった恐怖による冷や汗であった。
「お、おい? 大丈夫か? どうしたんだよ!?」
『わからない……わからない……何日……? 何時……?』
「そんな事、俺が聞きてぇよ! くそっ! どうなってんだよ!」
さらに混乱の渦が巻いていている時だ。突然、倉庫の電気が付いた。
しかし、その電気は白色でも暖色でも無く、真っ暗な暗闇を薄らと照らす青い果実の様なブルーベリーライトだった。
『きゃっ!? な、何!? 薄気味悪い!』
「な、なんだこりゃぁ!? なんで、急に……!? でも……なんだか、落ち着く様な……。なんでだろ……?」
『青色の効果よ……! 青には【集中力を高める、食欲をコントロールできる、興奮を抑えて、気持ちを落ち着かせる、時間の経過を鈍らせる、睡眠を促進させる】っていった効果があるのよ……。まさか、集中力とか食欲はともかく……今のわたしたちの気持ちを落ち着かせる、時間を鈍らせる、眠くさせるって事は間違いは無さそうね……』
「ってことは一番怖いのは……俺たちが寝たところを襲ってくるって可能性もありえるって訳だな……。しかし、落ち着くなぁ……」
そんな話し合いをしているにも関わらず、少年はのんきな事を言った。これもライトに因る気持ち良さなのだろうか。
『こらっ! 気を抜くと殺されるわよ!』
「慌てない慌てな~い」
『こ い つ っ !!』
そして、少女は少年の頬を思い切り、引っ叩いた。
「痛ってぇえ!! 何しやがんだぁ! おかんにも打たれる事ねぇのに!」
『うっさぃわよ! この甘えん坊主め! ここで寝たら、襲われるって言ったのはあんたでしょ!? それなのに、ここで寝て死ぬつもりなの!? 雪山で凍え死ぬみたいなものじゃないの! バカッ!』
「うっ……! うるせぇな……! 甘えん坊主ってなんだよ!」
『あら? 「おかん」って単語が出てくるって事はマザコンでしょ~? 甘やかされてたんだよね~?』
少女は少年を小馬鹿にする様に言っている。しかし、これも彼女の1つの作戦でもあった。少年はすぐに眠たくなる様なので怒らせて、寝かせない様にしようと考えていた。
しかし、少年は予想外の行動をとった。
「こんにゃろっ!」
『きゃぁっ!? な、なにするのよ!? 離して!』
少年は少女の両腕を掴むと少し汚れた体操マットに押し倒して、身動きが取りにくい様に押さえた。
『な……何を……』
少女の顔は真っ赤だった。
「し、知るかよ……。勢いでだ……」
少年の顔も我に返ったのか、真っ赤になっていた。
『こ、このまま……わたしをどうするの……?』
つい聞いてしまう少女。
「ど、どうするって……俺は……お前を……」
勢いでやってしまった為、困惑する少年であった。