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ラン ゴォ ウォーク

 ひたすら走る事、早10分……。出口の門は一向に見えない。


「ちくしょーめっ! どうなってんだ! 全く出口に辿り着けないじゃないか!」

『走っても走っても、遠ざかるばかりね……。お手上げって感じだわ……』

「なら、もっと突っ走るまでだ! うぉおおおおおおお!!!」


 少年は全力で突っ走った。普通なら門どころか壁にぶつかってもおかしくない。だが、何にもぶつからない、何も当たらない。


「ぜぇ……ぜぇ……なんでだよ……! こんなに……突っ走ったってのに……!」

『だって、1歩も進んでなかったわよ……?』

「えっ……? なんだと……?」

『だから、1歩も進んでないんだって……。まるで足元に油がこぼれてて、そこをツルツルと滑ってる感じだった……』

「ぬぐぐ……。じゃぁ、どうしろって言うんだよ……。」

『そうね……。これも例えだけどさ、変速の自転車は1~6まであるわよね? その自転車は1は坂道に強い分、平らな道では速くないでしょ? 代わりに6は坂道に弱いけど、平らな道ではすごく速い……』

「そ、それが何なんだよ……?」

『はぁ……もうちょっと頭を回してよ……。つまりは変速1はたくさん足を動かしても、速くは進めないって事……。逆に変速6だと足をゆっくり動かしても、速く進めるのよ……。わかった?』


 少年は少し考えて、納得した。


「なるほどな! じゃぁ、俺たちは変速6になればいいってわけだな!」

『………。理解してるかはさておき……そういう事よ。とりあえず、ゆっくり歩いてみましょ?』


 そういうと少女はスタスタと歩き始めた。彼女の言った通り、歩くと前へ進める事がわかった。


「おぉ~っ! すごいな! やっぱ、お前は頭いいな!」

『基本的に成績は良好な方なのよ。それにしても、わたしがいなかったら、あんたってダメダメねぇ~。見た目はただのスポーツバカっぽいし』


 少女が少年をあおってみた。しかし、少女は少年が怒ると思っていたが予想外の反応を見せた。


「あぁ……。クラスじゃぁ、大した成績なんか収めちゃいないからな……。闇雲に突っ切るだけじゃ、やっぱダメだな……。お前がいてくれたから、今、ここに俺がいるんだな……。ありがとう……」

『な、何よ!? 急に!? さっきまであった威勢はどこに行ったのよ!?』

「いや、強がってただけだ……。ほんとは大した事ねぇんだ……。お前のおかげで今の俺がいるんだ……。本当にありがとうな……?」

『な、なんか……調子が狂うけど……。ま、まぁ、素直になったなら……よしとするわ……?』

「ふっ……ありがとな……? じゃぁ、門に行こうか?」

『そうね。進まないと出られないからね……!』


 立場が逆転してしまったが、目的は変わらない。


 2人の脱出に向けて、歩き続けていた。

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