第46話
俺とユナンは人攫いをしている組織のアジトへと向かう。 暗闇の中を黒装束を着て走り抜けてるので見つかる事はないだろう。 ナビレットで人の動き見てるってのもあるけどね。
タタタタタタタ…
「なぁユナン。 この国って…奴隷とか居るのか? 人攫いして身代金要求するなら貴族狙うだろうし。 それとも身なりがいいから狙われた?」
「そうだね…この国には奴隷は居ないよ。 …表向きはね。裏では貴族が奴隷を飼ってたり、他国に運んでたりするんだ」
「なるほどね。 って聞いたのはいいけどよく知ってんな」
「ふふ。 僕も色々やってるのさ」
まったく…頼りになるよホント。
「あそこだな。 昼に居たやつらの反応がある」
「正面から行くかい?」
「そうだな…窓から入ってサイレントキルで…いや待てよ。 正面から行こう。関係ないやつももしかしたら居るかもしれないしな。 んで死体を5体くれ。 ナビレットに吸収してみる。 組織の奴らが映るかもしれない」
「わかったよ」
「んじゃ任せた。接近戦は俺より遥かに強いんだから余裕だろ」
「ふふ。 任されたよ」
「んじゃあ…見張りっぽい2人居るから俺は右のやつもらうぞ」
「なら僕は左のやつだね」
スススッと闇に紛れて見張りに近付く。
「ふぁーあ。 見張りしても誰もこないだろーに」
「ははは。 そう言うなって見張ってるから誰も近付けないんだろ」
ススススッと闇に紛れて背後に立ち、見張りの口を塞ぐ。
「よかったな。近付いて来たぞ」
「むが…むがむが!」
コキッ…
首を一回転させて息の根を止める。 ユナンの方を見るとあっちも首を回転させて息の根を止めていた。 ユナンも俺と一緒に組手してるから体術を取得している。 というか俺よりも強い…接近戦じゃ全く勝てないんだ…ちくしょう。
「回収っと。 後3体回収な。 アジトに入ったら外に音漏れないように魔法かけるから暴れていいぞ。 入ってすぐに7人居るからな」
「りょーかい。 僕はそういうのできないから助かるよ。 ふふふ」
ギィイ…
ゆっくりと扉を開けて中に入る。
「ユナンもう暴れていいぞ」
「え? いつ魔法使ったんだい?」
「詠唱無いからわからないだけだろ。 それより…この部屋に7人居るぞ」
「誰だお…」
ヒュン…
ブシュー!! ドサドサドサ…
「終わったよ」
「ユナン…7人瞬殺って速すぎだろ…」
「ふふふ」
剣聖ってこれよりスゲーのか? もうユナンが剣聖でいいんじゃん…っとそれより死体を3体回収して…。
「よしよし。 ナビレットに出たぞ。 人攫いってか…シャドーってなってんな。組織名か? あー居るわ居るわ。 関係ないやつも居るっぽいな。 建物全体の構造は分からないから…一部屋ずついくか。 戦闘は任せた」
「ふふ。 任されたよ」
「んじゃ、左の部屋に3人な」
ギィイ…ヒュン!
「終わったよ」
「はやっ」
ドア開けたら終わってる。 ぐらいの早さ。ゴロツキ程度じゃ姿すら見えないだろうな…
「この中に2人」
「終わったよ」
「こっちは…4人だ」
「終わったよ」
「ここがこの建物で最後だな」
「この建物?」
「あぁ。 ナビレットの索敵にこの建物以外にも映ってるからな。 盗賊も街に入り込んでるから…消すか。 いつアリスとミナに被害が出るか分からないしな」
「過保護だねー」
「お前もな」
「ふふ。 まぁね。 じゃあ最後の部屋行ってくるね」
最後の一人だからドアを蹴り破って中に入る。
キィイン!!
速攻で斬りかかったにもかかわらずユナンの攻撃を防ぐとは…強いな。
「ぐっ! 何だ貴様ら! 他の奴らは何をしている!」
「僕の攻撃を防ぐとは…やるね」
「お前の部下? はみんな地獄へ行ってるぞ。 後はお前一人だ」
この建物の中はな。 言わないけど。 喋りながらでもユナンは攻撃している…がユナン本気出してないな。 あの程度の相手なら余裕で殺せるだろう。
「ぐぅ…どこの手の者だ!」
「知る必要があるか? って言いたいが教えてやろう。 過保護な兄その1だ」
「ふふ。 過保護な兄その2だよ」
「ふざけているのか!」
ヒュンッ…ボタタタ!
「がぁああ! 指が…指がぁあああ!!」
「昼間にお前の所のクソがウチの大事な家族を攫ったんだよ。 ああ、腕が無いやつ居たろ?そいつらな」
「ぐぅぅうう…アイツ等か」
「二度と人攫いに合わないようにするには…お前ら潰すしかないだろ?」
「お、お前らには手を出さない! だから」
ザシュ!
「ひぎぃぃいいい! 足がぁああ!」
「あ! 過保護その2! 失血死するだろ! 焼いて血出ないようにしないと!」
「過保護その1。 ごめんごめん。 かなり頭に来てたみたいだよ」
「まだ聞く事あんのに…ほら。 エクスポーションだ」
もり…もりもりもり…
「うお! エクスポーションって欠損した部分も治るんだな…知らんかった」
「みたいだね…すごいよ」
「はぁ…はぁ! 何を…」
「紅蓮剣!」
ザシュ!
「ぐぁあああ!!」
「親玉の場所教えろ。 言わなければ…切って治してを繰り返す」
「言う…言うから! 命だけ…がぁああ!!」
「ふふ。 ダメだよ。 君が選ぶのは楽に死ねるか永遠に苦しむかの2択だけさ」
ユナン…恐ろしいな。 まあユナンがやらなければ俺がやったけどな。
「すまんな。 嫌な役させて」
「ふふ。 過保護その1だけに辛い思いはさせないさ」
「はぁ…カッコいいな。 普段は変態なのに」
「過保護その1も妹達の時は変態だよ」
「変態しかいないな」
「うわぁ…ほんとだね」
地下に攫われていた人達が居たので牢屋をユナンが破壊して救出した。 衛兵の所に匿ってもらうように告げ、俺達は他のシャドーの組織の連中を抹殺しに行く。
黒装束で顔見られてないから俺達がやったと世間に知られることは無いだろう。
「親玉殺る前に街に散らばってるやつから消すか」
「そうだね。 親玉が貴族だからちょっとやっかいだよ」
「関係ない。 やつらが何であろうと殺す…ユナンが」
「ふふ。 任されたよ」
「まあ、潰しても時間が経てばまた違う組織が王都に入ってくるだろうけどな…」
「ままならないね…」
「あぁ…」
それから街に散らばってるシャドーの連中を屠っていき、残りは親玉の居る場所だけとなった。 他の組織の奴らは、たまに強い奴等が居るくらいで俺とユナンは何の問題も無く組織の連中を潰していった。
この程度のやつらが相手なら…他の人でもできそうな気がするが…。 もしかしたら犯罪組織とこの国の偉いやつらはズブズブの関係なのかもしれない。
「これまた豪勢な屋敷だな…貴族だからなのか犯罪組織のトップだからなのかはわからんが」
「両方なんだろうね」
「ま、今日でそれも終わりだ。 えーっと、敵は2人だけだな。 使用人とかは何も知らないって感じなのかな。 近くに2人揃ってるから一緒の部屋なのかも」
「だろうね。 ここの貴族が強いって聞いた事はないから…もう一人は護衛かな?」
「どうだろな…行ってみればわかるさ」
スススススッと壁を登り屋敷へ潜入する。 一応警備で門番居るけど…ザルだな。
「窓から侵入するぞ。 入ったら速攻で消音の魔法かけるから一気にやってくれ。 尋問もいらないだろう」
「そうだね。 残りは2人。 すぐに終わらせて帰ろうか」
ここだな…手で合図をして俺が先に入る事を伝える。消音魔法かけないとだしな。
スタッと中に入ってすぐに消音魔法をかける…
ぞくり…
冷や汗が出て嫌な予感がして横に転がる!
ブォン…
ブォン…キィイーン!
「ほぉ…儂の一撃を躱し、尚且つ防ぐとは…タダの賊ではないようじゃな」
防いだのはユナンですけどね!
「ふぅ…まずいよ過保護その1。 相手はSランクだ。 剛剣のザイアス…まさか有名所が犯罪組織に協力してるとはね」
「Sランクか…いや、今のお前なら勝てるだろ。SSランクならキツイだろうけど」
「はは…。 勝てるかな?」
「勝てる! どれだけダンジョンで鍛えたと思ってんだ」
「話は終わったか…どこの手の者かは知らぬが…四肢を削ぎ落としてから聞き出すとしよう」
ギィイン!!
ユナンとザイアスとか言う奴が切り合う! その隙に俺は雷光をもう一人に放って痺れさせる。 いや、こんなに騒いでるのに寝てたんだけど一応ね。
「くはは! やるのぉ! もう一段階上げるぞ! 剛力魔装!!」
「はぁああ!! 火炎装武!!」
魔力を纏うのが魔闘気…その更に上が属性を身に纏う極闘気だ。 名前はダサイが知らん。
冒険者で言う所の、Sランクになるにはこの極闘気が使えないといけない。
魔闘気でBランクの壁がありSランクでは極闘気の壁がある。
ちなみにマリアさんは極闘気は使えないらしい。エクスプロージョンを鍛えに鍛えまくってあそこまで強くなってるんだな。
「くはは! いい!いいぞ! 久々の強者との死合!」
「それは! よかった! ですね!」
ユナンが少し押してるが…俺も援護しよう!
「ユナァアアーン! もう一段階上げるぞぉお!」
「わかった! 助かるよ!」
「ほぉ! まだ上があるのか! 面白い…面白いぞ!」
極闘気より更に上…というか重ねがけみたいなもんだがコレは完全に俺達のオリジナル技だ!
『我望む。
その羽ばたきは世界を焼き払い、
その羽ばたきは世界を再生させる。
幾億の世界を渡りし炎の化身よ。
我が魔力を糧に現世へと降臨せよ』
「こぉぉおおおおおーーーい!!」
『フェニックゥーーーーース!!』
ピゲェエエエエーーーーー!!
ごっそりと魔力を取られフェニックスを呼び出す!
「ユナン! いくぞぉおお!!」
フェニックスがユナンを包み込む!
「はぁぁああ!! 鳳凰装武!!」
ユナンの火炎装武と俺のフェニックスが混ざり合い、青色の炎の鎧を身に纏う。
「ふ…ふははは! 素晴らしい! 素晴らしいぞ!楽しませてくれ…」
ヒュン…ゴォオオオオオオ!!
「悪いけど…1分も持たないんだよ。だから退場してね」
「ばかなぁああ! 儂が斬撃すら見えんとはぁああ…ぁぁ」
あっけない…あっけないが…相当強力だからなコレ。一人じゃできないし。
「お疲れ。 マジックポーション飲んどきな。俺はもう飲んだから遠慮すんなよ」
「もらっとくよ。 ふぅ…鳳凰装武はきついね」
「まぁ、とっておきだしな。 つかウットリしそうになるのどうにかなんない?」
「無理だよ! 鳳凰だよ!? 僕が鳳凰になっちゃうんだよ!?」
「さ…さいでっか」
「終わったし…帰ろうか」
「あ、待って。まだ貴族の方殺ってないから。雷光でやっただけだわ。 後、悪さした証拠っぽいの無いかこの部屋探そう」
「無いとは思うけど…一応探そうか」
机の引き出し開けたら悪さした書類を見つけた。アホだなこの貴族。 いや、Sランクの護衛が居たから大丈夫だと思ったのかもしれない。 首をグリン!と回して息の根を止めて、死体の上に書類を半分程バラ蒔いてから俺達は屋敷を後にした。 残りの半分は衛兵が居る詰所へと投げ込んでおいた。
こうして俺達の長い長い夜は終わった。
「みんなーたこ焼き作ったぞー」
「アリスね!アリスね! タコじゃなくてお肉入ってるのがいい!」
「アタイはタコー!」
「僕は」
「あ、ユナンはこっちな」
「ん? わかったよ。 もぐもぐ…あぁああ!!」
ビクンビクンして床に倒れるユナン…でもウットリした顔になってる…
「お…お兄ちゃん。 ゆー兄は何食べたの?」
「ワサビ特盛たこ焼き」
「「あーなっとくー」」
ユナンよ…お前は怖い顔してるより、そうやってる方がいいぞ。
ウットリ顔…あれ? いいのかな?




