第37話
「ひゃはっ! お前らも殺してトンズラだぁ!」
そう言ってゴロツキの一人が俺に向かって剣を振り下ろしてきた。
「魔闘気!!」
ガンッ!
俺は魔闘気を左手に纏い剣を弾いた!
躱したら万が一アリス達に当たったらいけないから躱す選択はできない。
「け…剣が!なんだお前ぇえ!バケモンがぁあ!」
懲りずに剣を振り下ろしてくるゴロツキ。
バケモン…か。魔闘気を知らないって事は本当にそこら辺にいるタダの悪党なんだろうな。
まぁ…魔闘気を使えるようなやつが小銭稼ぐ為に子供をスリに行かせるなんてしないだろうけど!
「バケモンはお前らの腐った根性だろうが!」
もう一度左手で剣を弾いて相手の顎を殴り飛ばす。
ゴキャッ!
「あがっ!」
「子供からカツアゲしてんじゃねぇえ!!」
ドゴォ!
俺はゴロツキの腹に蹴りを食らわした。顎も砕けてるゴロツキはこれで動けないだろ。
こいつはもう動けないから動けるやつを先に始末しないと!
「ひっ! く…くるなぁあ!お前には何もしてねぇだろぉ!」
「お前ら生かしてたら犠牲者が増えるだけだ」
震えながら剣を向けるゴロツキに近寄って蹴りで膝を砕く。
バキッ…
「あがぁああ!!」
「もういい…死ね」
「い…いやだっ!だずげ…」
ボギャッ…
俺は痛みで暴れまわるゴロツキの首に手を回して一回転させて絶命させた。死んで来世でやり直せや!
もう1人は気絶…か。
足で首を踏み抜き、ゴキッっと音を鳴らし絶命した。
「ガキんちょ…終わったぞ」
「うぅ…どうして…どうしてだよぉ…」
「……」
「ザッツぅ…ディーン…うぅ…」
「……」
気の効いた事…言えないな…。
俺が来なければ…この子達は死ななかっただろうか?
俺が来なければ…この子達は…笑顔で過ごせてたんだろうか?
いや…どうだろうな…
「お兄ちゃん…この子寝ちゃったよ?」
「ん? あぁ…泣き疲れたんだろ…」
それとも精神に負荷がかかりすぎて気絶したか?
息は…してるから今すぐどうこうなるとは思わないけど…
「どうするの?」
「あぁ…そうだな…ここは辛いだろうし…宿に連れて行くか」
「ん。わかった」
子供二人をナビレットで収納してゴロツキはピットフォールで穴に落として埋めた。
殺した奴と…死んだと言っても一緒の場所に居たくないだろ…
こうして俺達はミナの家から出て精霊の宿へと帰った。
「すいません。宿にもう一人追加で」
「あいよ。一緒の部屋だね?それなら料金は…半分でいいよ」
「ありがとうございます。はいお金」
「確かに」
ミナの事を詮索される事もなかった…一応高級宿…なのかな?
さっしてくれたんだと思う。
んで宿の部屋に入った。
「ふぅ…寝たままだな」
「だね。起こす?」
「いや…このまま寝かせとこう。明日になったら起きるだろ」
「ん。わかった」
こうして王都滞在4日目が終わった。
あー…だらだら過ごしたい…寝よ。
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「ふぁあ…朝か。まだ2人共起きてないな」
部屋に置いてあるお茶を飲みながらのんびりしよっかな。
あー…うめぇ…そう言えば昨日はいろんな事あったなー…
治安悪いし…でも市場とか活気があるんだよなー。
上手いことバランスってとれないもんかね?
じゃあお前がやれって言われたら…無理だな。
政治なんかさっぱりわからんし…。
「んん…。んー!おはようお兄ちゃん」
アリスが起きたみたいだな…寝起きいいなぁ…
「おはようあーちゃん。まだ寝ててもいいよ?その子が居るし起きるまではどこかに行くこともできないしね」
「んーん。起きとくー」
「そっか。あーちゃん寝癖ついてるぞ。こっちおいで」
「はぁーい」
トコトコアリスが俺の前に来て座る。水で手を濡らしてアリスの髪を手櫛で整えていく。
耳がピコピコ動いてる…可愛いなぁ…
「どうするの?」
「ん?なにが?」
「あの子」
「どうしたもんかねー…んー」
アリスの髪を梳かしながら答える。ほんとどうしようかねー?
孤児院に預けるか?
「ん…はっ! ここは?」
「起きたか。おはよう。ここは宿だよ」
「や…ど? あ! ザッツ!ディーン!」
「あの子達は…もう居ないよ」
「あ…うぅ…夢…じゃなかったんだ…」
「あぁ…そうだ。…ごめんな。俺が…行ったからあの子達は殺された」
「…それは…きっと違う。アイツ等は…アンタが来なくてもその内アタイ達を殺してたと思う。金払えなくなったらきっと…そうなってたはず」
はぁ…この世界の子供は…俺よりずっと大人かもしれないな…
環境がそうさせるのか…?
俺が7歳の頃は…いや、今はいいか。
「そうか…」
「うん。きっとそうなってた」
んとに…強い子だな。
「よし! 取り敢えずこっちこい」
俺は収納から桶を出してウォーターで水を入れてファイアで温める。
「これは?なにしてんの?」
「服脱いでこの桶に入れ」
「え?」
「いいからいいから」
うん。くちゃいのよ。 ワーワー言ってるが無視して服ひん剥いて桶の中に入れる。
「おぉ…水が真っ黒じゃないか…」
「やめろー!裸にしてアタイをどうする気だー!」
「いや…洗ってんの。ガキが何言ってんだよ。ほら。石鹸で洗うからな」
何とか大人しくさせて石鹸でワシャワシャする。あーちゃんも手伝ってるぞ?
んー…1回お湯捨てるか。 トイレにコッソリ捨ててもう一度お湯を張る。
「かなり綺麗になったな…綺麗な金髪じゃないか。汚れすぎてわからなかったぞ?」
「う…うるさい!」
「んだよ褒めてんのに…あ。名前教えてくれよ。俺はソーマ」
「アリスだよー」
「ほ…褒めてたのか…アタイは…アタイはミナってんだ」
うん。知ってる。鑑定で知ってたけど何で知ってんだ!ってなるかもしれないからね。
あ…ゴロツキが呼んでたって言えばよかったかな?
「ミナね。んじゃ…体も髪も綺麗になったし…仕上げだ」
にゅるるるるー
「うわっ!何頭につけたんだ?」
「マヨネーズ」
「まよねーず?」
ミナの髪にマヨネーズをねっとりと付ける。
サラッサラにこれでなるのだ!お試しあれー!
「これで髪サラサラになるんだよ。マヨネーズに使われてる油…油?」
油で良かったんではなかろうか?
マヨネーズ…臭いのだよ!
マヨネーズ臭が部屋に…たまらん!
「くさっ!くさいぞまよねーずとか言うの!」
「…うん。ミナ…お前臭い。見ろ。あーちゃんが部屋の端っこに逃げたぞ」
「なぁ!」
仕方ないのでウォーターで綺麗に流して…
くんくん。うん。何とか臭い取れたな。
「マヨネーズじゃなくて油付けるわ」
「え?まだやるの?」
返事を返さずに…油を髪にかける
ぬちょぉぉお…
「ははっ。ミナぬっちょぬちょだな」
「わぁああー」
ギャーギャー言いながら頭を綺麗にした。
うん。綺麗になった! 臭いも…しない。よしよし。
「よし!終わり!綺麗になったぞ。 んー…目もぱっちりしてるし髪も綺麗な金髪…可愛いぞミナ」
「うぅ…」
これで少しは気が紛れただろ。
さて…
「ミナ…この街で見晴らしの良い所あるか?」
「え?あるけど…どうしたの?」
「そこに…ミナの弟達を埋めようか。景色良い方が…いいんじゃないか?」
「え? どこに…あぁ。収納袋…か。 わかった。案内するよ。ついて来て」
収納袋じゃないけど…言わなくてもいいだろ。
3人で王都を歩いて行く。
テクテクテクと幾多の小道を通って目的の場所に何とか辿り着く。
「ここだよ」
そこは王都が一望できる場所だった。
「良い所じゃないか」
「すごいねー」
「へへっ。そうだろ?たまにここに来てたんだ。夕暮れ時がすっごい綺麗なんだよ」
夕暮れか…まだかなり時間あるけど…見たいな。
「んじゃ、夕暮れの映える王都も見たいし…待つかな。その前にやる事やっとこうか」
俺はピットフォールで穴を空け子供の亡骸を入れる。
「ミナ…念の為に火葬にするぞ?」
「…うん。ザッツ…ディーン…姉ちゃん。あんたたちの分まで生きるから…安心して眠りな」
俺達は子供に手を合わせ黙祷した。
石とか置いておいたらどかされそうだな…
んー…十字架だと…余計どかされそうだな…
石にしておこう。
待つまでの間…俺はミナの服を作ってた。アラクネの糸で編んだ布でワンピースを作る。
作った後に気づいたんだけど…これって買ったらかなり高いよな…
あーちゃんは丸まって俺の横で寝てる。可愛いのぉ…
「ミナ…ワンピース作ったからこれ着な」
「え?何か作ってると思ってたけど…アタイに?」
「ああ。着替えてから見せてくれ」
「あ…ありがと」
照れながらミナはワンピースを受け取った。
ゴソゴソゴソ…
「ど…どうかな」
「ああ。サイズも…大丈夫だな。可愛いぞ」
「うぅ…」
真っ白なワンピースを着てミナは照れている。うん。ロリ好きだったらたまんないんだろうな。
俺ロリじゃないから大丈夫だけど。
あーちゃんだったら…うん。たまんない。
そうこうしてる内に結構時間がたって夕暮れになってきた…
「あーちゃん…まだ寝てるな。串焼きだしてっと」
串焼きだしてアリスの鼻の近くに持っていく。
鼻がヒクヒクしてるな…可愛いやつめ。
「お肉っ!」
「おはよ。食べていいよ」
起きてすぐに串焼きにかぶりつく…串刺さったらどうすんのよ。
「あぁ…夕日で王都が赤く染まってるな…これは綺麗だな」
「うん。綺麗だねー」
「だろ?」
得意そうにミナが言う。気持ちの整理は…ついたのかな?
はえぇな…俺だったらズルズル引きずるんだけどな…
それから俺達は夕暮れに染まる王都を満喫した。
「ミナ…王都は…好きか?」
「大っっっ嫌いっ!」
爽やかな顔でそう言うミナ。
「でも…ここがアタイが生きて来た場所。ここがアタイの故郷!」
両手を大きく広げてそう言った…
「そっか…あのさ…よかったら…俺達と来いよ」
「お兄ちゃん?」
なんか…ほっとけないんだよ。
こんな小さな子を…目の前で家族がなくなったばかりの子をほっとけない。
アリスと…重ねているのかもしれないな…
「シルバードって街なんだけど、良い街だぞ。弟達は…たまに墓参りに来ればいい。連れてきてやるから…来いよ」
「…うん。アリスもいいと思うよ」
「え?…いい…の?」
「ああ。 その変わり…鍛えるぞ。自分で身を守れるくらいにはな」
「アリスも鍛えてるんだよー。お兄ちゃん過保護なんだー」
こらっ。事実だけど言うんじゃありません。
「で…でも…」
「いいから。…今からミナは…俺の妹な!ミナ…今いくつだ?」
鑑定で知ってるけど…
「え?え?7歳だよ…」
「じゃあアリスはお姉ちゃんねー!やったー!妹できたー!」
「よかったなあーちゃん。お姉ちゃんだぞ?」
「うん!」
「い…いいのかなぁ…」
「いいのいいの!ほら!兄ちゃんって呼べよ?」
「そ…ソーマ兄ちゃん…」
「よし! なでなで」
「アリスもお姉ちゃんだよ!はやくはやくっ!」
「あ…アリス姉ちゃん!」
「わーい!みーちゃんにお姉ちゃんって呼ばれたー」
しっぽブンブンアリスたん。
無理やり妹って事にしたけど…いいだろ!良い事にしよう!
俺がミナも育ててみせる!
「んじゃ…帰るか!」
俺達は3人で手を繋いで宿へと帰って行く。
王都滞在5日目。
新しい妹ができました!




