第30話
「フッ! ぐぅう…」
「違うソーマ! 目で見るんじゃない。 体全体で感じるんだ!…感覚を研ぎ澄ますんだ!」
「つつつ…はぁ。 ユナン…そんな事言ってもなー…」
「んー…目隠ししてからやってみようか」
俺は今気配察知の特訓をしている。マップに頼りすぎて魔物の気配を感じる訓練を怠っていたからだ。
ほら、後ろの敵が攻撃してきても気配を読んで避けるってあるだろ? その特訓だ。
ダンジョンの下層へ降りて行くにはこれを覚えないと無理だ。 弱い敵との1対1の戦いならば目で見るだけで対処できるが強敵だとそうはいかない。 強者…その高みに行くには必須の技能なんだな。
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「んー…竹の水鉄砲を参考にしようかな…棒で押して水を押し出すって感じに…んー」
「おにーちゃんなにしてるのー?」
「んー? あーちゃん。これはね、全人類のお尻を守る為の…そう…言わばアルティメットオシーリなんだ」
「んー。わかんなーい」
「うん。俺も何言ってるかわかんなーい。 お尻洗って、更に女神の息吹…暖かい風を起こしてお尻を乾かす…そんなのを…俺は作りたい!」
「へんなのー」
ぐはぁ! うちの天使が辛辣です…
「よし…取り敢えず…形にはなったな。 水を押し出す感じで…んー。 魔道具で作りたいけどわかんないんだよねー。温水で、ムーブ機能付きで温風出せるようにしたい…初めて使った時…やばかったなぁ…はうあっ!ってなったし。慣れたら平気になるけど…」
マリアさんに使ってもらおう…はうっとか言ったらピンコがピンコ立ちするな…うへへ
「…いきなり使用するのは怖いな…押す力で水の勢い変わるし… 手に当ててみるか…。 おぉ…これくらいの勢いなら…大丈夫か。 自分で使うの怖いし…変態2号に使って貰おう」
「なんだいソーマ」
「あぁ。 便所でおっきい方した時にお尻を洗うのを作ったんだけどユナンに使用感を聞いてみたいんだ。ほら、自分が思うのと他人が思うのって違うだろ?」
「んー…これを押せばお尻に水がでて洗うのか…わかった。後で使ってみるよ」
「便器に水を貯めるってのも作りたいんだけどね。 臭いを水が優しく包み込んでくれるんだよ…まぁ…それは要研究だな」
あ、押す力加減言うの忘れてた…
「ぴぎゃぁあああ!!」
「あぁ…アイツ思いっきり押したな…水鉄砲みたいにしてるから全力で押したら…洗うじゃなくて攻撃だもんなぁ…」
「で、ウットリしてると…」
「刺激がすごかったよ…自分で自分を攻めるなんて…」
「はぁ…やっぱどっかで魔導具の作り方習うかなぁ…」
ウォシュレット…失敗しました…
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「あ、マリアさんだ。あれ? 隣歩いてるのは…変態隊長か!?ばかな!」
「あー…エリックさんとマリアさん最近ちょくちょく一緒に居る事多いよ?」
「なん…だと! ユナン本当か!」
「まだ…恋人とかじゃないみたいだけど…その内そうなるんじゃないかな?」
「くっ! おめでたいが…憎らしい!変態隊長め! はぁ…まぁ…美男美女でお似合いだな」
「そうだね。 祝福してあげようよ」
その日の夜…
「それでは第488回マリアさんを見守り隊の集会を始める」
「みんな…聞いてくれ。この中に…裏切り者が居る!」
「裏切り者がいるだって!?」
「吊るし上げだー!」
「ままま…待ってくれソーマ氏。久々に集会に来ていきなりそれなのか?」
「どうした変態隊長?額に汗をかいて…ふふふ。心当たりがあるのか?」
「まさか…隊長が裏切りだと?」
「吊るし上げだー!」
さぁ…観念しろ変態隊長!ふはははは!
「今日…たまたまなんだが…変態隊長とマリアさんが並んで歩いてるのを見たんだ!会のみんなに真相を話すんだな!」
「わわわ…我…我は…」
「「我は?」」
「そそそ…それはだな…あの…ちゅ」
「「ちゅ?」」
「ちゅきあう事になりまひたぁああ!」
「「なにぃいい!!」」
それから会のみんなで尋問したが…真相はこうだ。
あまりにもジロジロ見てくる変態隊長にマリアさんが怒りに行ったんだが…変態隊長がどれだけマリアさんを好きか混乱しながら言ってしまったらしい… そんなに思ってくれてるんだ…と思ったマリアさんはお友達からねって言って、ちょくちょく2人で会ってたんだけど… 変態隊長の一途な思いがマリアさんに伝わったらしく付き合う事になったとさ。
「「隊長おめでとー」」
「やっとって感じもするっす」
「ヘタレだからな隊長は…」
「どれだけマリアさんが好きか俺らはわかってるからな」
「かー。それならこれでこの集会も終わりかー」
「俺相手にされない方に賭けてたのにー」
「なにはともあれ…やっと告白した隊長…」
「「おめでとー」」
「ぐす…ありがとうみんな…」
…なんだこれ?
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「ほっ!ほっ! ふぅ…」
「いいぞソーマ! 目隠ししても躱せてるじゃないか!」
「あぁ…なんとか物にしたみたいだな」
「習得したけどもっと精度をあげないと実践では使えないぞ」
「わかってるよユナン…調子こいて死にたくないからもっと練度上げないとな」
「その調子だ! 僕も負けてられないな!」
何とかユナンとの特訓のおかげで気配を探ることができるようになった。まだまだしょぼいけど練度を上げて使えるようにしよう。 これが使えると矢とかも躱せるようになるらしい…先は長いなー…
ブォオーン…
「前方にオーク3。その奥の茂みに2体隠れてるぞ」
「轢き殺さないのか?」
「おっにくっおっにくっ」
「あんまり数が多いと軽トラの耐久度が不安なんだよ。ゴブリン程度ならいくら撥ねても大丈夫だけどオークは重いしな…耐久度無くなったら200万マニいるんだぞ? あと天使が肉をご所望だ!ほら!行くぞ!」
俺とアリスとユナンとで街の外をドライブ。 ユナンが助手席に乗って、その上にアリスが乗っている。
欲情したらぶっ飛ばすけど…大丈夫らしいのでそのまま許している。
「はぁあ!チャーシューになれぇえ斬り!」
「なんだよソーマその掛け声! 豚トロ斬り!」
「お前もだろユナン! もうこいつら肉にしか見えないんだよ…」
「あはは…そうだね。アリスちゃん本当に肉好きだよねー」
「あぁ! 野菜もしっかり食べさせてるけどな! しゃぶしゃぶ斬り!」
「ソーマ!それだと薄く切るからオーク倒せないよ!」
なんて事を言いながらオークを屠っていく。 肉…最高!
「あーちゃん森の中に行くよー」
「はぁーい。もりたのしいねー」
「僕がしっかり守るから大丈夫だよ」
俺達は軽トラから降りて森の中へ…魔力草を採りに行くのだ。
あれからナビレットの機能で高かったけどポーション錬金とかいうのがあったので買った。
これは素材を自分で採ったやつを収納に入れて魔力を注ぐとポーション系が作れるすぐれものだ。
ただし、自分で採ったって所が厄介な所だ。
街の店で買ったものでやろうとしたら錬金できなかった…なぜだ!
自分達の為だけに使えって事なのかもしれないんだけど。
買ったもので作れたら…それだけでヤバいくらい稼げるしね…目をつけられるだろうけど。
「あー…右方向に魔力草あるな。こっちだ」
「ソーマのそのナビレットだっけ?本当…反則だよね」
「その変わりすげー金かかるけどな。 後、俺自身が強くなるわけじゃない…気配察知がいい例だろ?」
「まぁね。錬金できても実際自分で作れる訳じゃないしね…」
「おにーちゃんだっこしてーつかれたのー」
「はいはい。あーちゃんおいでー。クンカクンカ」
「それでよく僕に変態とか言えるよね…」
うるさいよ。アリス大好きだから仕方無いだろ…。 よし、魔力草とったし、薬草と魔力草と水と空き瓶で…錬金!っと。 はいできたー。 便利便利ー。
「あ、ユナン木を切っといて。あーちゃんの遊び道具作る」
「はいよーっと」
ズパァア! バサバサバサ…シュン!
切ってすぐ回収。さーて帰って作るぞー!
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「ふふ…ふふふふ。できたぞぉおお!あーちゃんおいでー!」
「なーにー?おにーちゃーん」
「遊び道具作ったよー。これはねー。木でできた…車なのでーす!ちょっと鉄使ったけど…。乗ってごらん。 あー…抱っこして乗せて上げるよ。 足元のペダル…そうそれ。それを右足と左足で交互に踏んでごらん。進むから。んで、方向転換は…軽トラで見てるから分かるよね?そのハンドルくるくる回して右に行ったり左に行ったりするんだよ。4台作ったから近所の子来てもコースを競争したりできるぞー」
「きゃーきゃー楽しいーおにーちゃんたのしいよー」
うんうん。4歳児が使うような車を想像して欲しい…それを作ったんだ。
キコキコ楽しそうに遊んでる…和むなー。
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1週間後
「なーなー兄ちゃんあれで遊んでいいかー?」
「ああいいぞ。お前らの分も作ってるから怪我しないように使うんだぞ」
「ほんとか兄ちゃん!おーい!いいってよー」
「「わーい」」
「んでな、このペダル…そう足元の奴を交互に踏んだら進むぞ。その手元の丸いやつ、ハンドルって言うんだけどそれ回すと右に行ったり左に行ったりするからな。コース作ったからみんなで競争したりして遊びな」
「すっげー!兄ちゃんこれすっげーな!」
「「わーい」」
うんうん。楽しく遊んでるな。アリスも混ざって遊んでる。
前の家に居た子供も新しい家に来て遊んでる…。
やべーな…親はこんな景色見て…ほっこりするんだろうなー。
その日の夕方…
「なぜだ!なぜ我の体が入らないのだ!ぐぬぬぬ!ユナン!この小さい車を押してくれ!足がペダルとやらを踏めないのだ!足が入らぬ!」
「わかったよエリックさん! でも後で交代してよ!僕も乗りたいんだ!」
「では、そこな子供達!コースで競争だ!ふはははは!」
「「わーい」」
…。どこで嗅ぎつけてきやがったアイツ等…
「マリアさん…あのバカ…でいいんですか?確かに俺がコッソリおススメしたけど…これ見るとねー」
「うふふ…子供らしくていいんじゃないかしら。 最初は…ジロジロ見てくるただの変態だと思ってたんだけど… 私の事一途に思ってくれてるの知って…ね。知らない内に私も好きになっちゃった」
「んー…たまにスゲーカッコいいんだよなーアイツ…」
「うふふ…でもね、未だに手も繋いでないのよ? はぁ…ヘタレすぎて困るわね」
「あはは…ゆっくりでいいじゃないですか」
「うふふ…そうね。そうよね」
「エリックさん!もっと!もっと早く押して!」
「ふははは!では押すぞー!我は風神なりぃい!」
「あ!僕は不死鳥だー!」
「「あはははは」」
…なんとなく腹立ったので…
「ピットフォール」
「「わぁあああああ」」
進行方向に穴作ってやった。もちろん子供たちには被害は出してない。
あー…楽しいな。こんな日がずっと続けばいい…バカやって騒いで…
それから俺達は毎日を楽しく過ごし…4年経った。




