第21話
「フッ!」
スコン!
「フッ!」
スコン!
俺は今ギルドの訓練場で弓の練習をしている。 遠距離の対処方の幅を増やしているのだ。 弓、魔法、投げナイフが遠距離。 槍が中距離。 ナイフと格闘が近距離。 多才かもしれないが1つに集中していないから練度はお察しの通りだ。
「ふー。 今度は歩きながら射ってみるかな。 フッ!」
スカッ!
「難易度がすごく上がるな…はぁー」
訓練を終え、ギルドへと向かう。
「あっ。おにーちゃーん」
「あーちゃんいいこにしてたー?なでなで。 マリアさんタバサさんいつもすいませんね」
「おつかれさま。 いいのよ。常に依頼する人が居るって訳じゃないし。 それにアリスちゃん可愛いしね」
「そーそー。気にしなーい」
アリスを抱っこしてなでなで。変態隊長がまた居るぞ…いつ働いてるんだこいつ等…
「変態隊長…いつ働いてるの? ここにしか居る所ないの? 暇なの? 死ぬの?」
「会ってそうそうひどいではないかソーマ氏。 仕事はしてるぞ。コッソリと」
「堂々としろよ!」
「ふっ。 皆の知らぬ所で悪を断つ。我カッコいい」
「そうそう。 変態隊長、南の街? 港街かな?行った事ある?」
「我…カッコいい……んん。 港街? サディールの事かな?行った事あるぞ」
「んー。何日くらいかかる? 海の幸を食べたいんだ」
「ここから馬車で10日くらいだな。 ふむ。海の幸か…確かに美味いな」
「10日もかかるのか…んー。行きたいなー…」
「サディールか…我も久々に海の幸を堪能したいし一緒に行くか?」
「え?いいの?マジで? 護衛料とか払えんよ? Bランクとかクソ高そうだし」
「構わんよ。 バルト。セイクリッドも行けるか?」
「「良いっすよー」」
バルトとセイクリッドとはいつもハモって喋ってる人だ。
強力な護衛ゲットしたし海行くぞー! 海鮮丼! あ!米がないわ!
「やったね!変態隊長達が居るなら道中も安心だわ。あーちゃん海行くよー」
「うー?うみー?」
「そう。海。でっかいでっかい水溜り…で、水がしょっぱいの」
「あーちゃんいくー」
「んじゃ、変態隊長。馬車の手配とか任せた! 1週間後に行こうぜー。それまでに準備しとく」
「ソーマ氏…我が行かなければ行かないつもりだったな?」
「あ…バレた? サラバだー!」
ってな訳で海の街サディールへ行くことになったんだけど…何を準備すればいいかな? 布団…風呂も入りたい…飯も干し肉とか食いたくない…灯りにー、んー…取り敢えず森に行って木をゲットして風呂桶作ろう。
草原をスライムぶっ飛ばしながら進み森へ到着。
「あーちゃん木を切るから下がっててね。 ふー。 身体強化! 斧にー…魔力付与!!」
ズパァアアン!!バサバサバサ…
「よし! 斧に纏わせる魔力多くしたのが良かったな。んじゃ回収ー!」
木を回収して帰りにもスライムぶっ飛ばしてから帰る。スライムぶっ飛ばし係りは全部アリスだ。しっぽブンブン振り回しながら木の棒で叩いてる。 将来剣聖だな!
帰って風呂桶を作って余りの木でけん玉作成。道中暇だろうしね。他にもオセロや双六も作った。
ラビットの毛皮の座布団作ったりラビットの布団も作ってあっという間に1週間が過ぎてサディールへ行く日がやってきた。
「じゃあ気を付けて行ってくるのよ? 私も行きたかったわー」
「お土産よろしくねー」
マリアさんとタバサさんに出発の挨拶をして南の門へ。
「あ、待たせちゃった?」
「問題ない。点検などをしていたからな」
「そっか。馬車の準備とか助かったよ。正直全然わからなかったし」
「ふっ。 そんな事気にしないでいい」
「「そうそう」」
「んじゃ、乗車しますか。みんなよろしくねー」
「おねがいしまーす」
南門から馬車へ乗りパッカパッカと進んでく。歩くと馬車とじゃ見える景色が違うなー。
「あー…何か旅って感じでいいなぁ…バルトさん。よかったら馬車の運転教えてよ。あ、座布団作ったんだけど使う?」
「いいっすよー。んじゃ隣座って座って。座布団使うっす」
「あーちゃんおにーちゃんの膝に乗る?前から景色一緒に見よう」
「のるー」
ピョコんと膝に乗るアリス。可愛いのう。 その内おにーちゃんの服と一緒に洗濯しないでとか言われるのかな…想像だけで悲しくなる…
初日に何か起きるわけでもなく順調に道を進んでいく。馬車の操縦も覚える事には覚えた。ぎこちないけど何とか運転はできる。
途中…山賊が出た道を通った…山賊が出てきた訳じゃないんだけど…アリスが思い出すんじゃないかと冷や冷やしたよ。こっちの方面から来たって事は…港街方面の子なのか? 海行くのマズったかな… 今からニット帽作るか…髪の色と耳が見えなければ何とかなるだろう。
「ソーマ氏。今日はこの村で宿を取るぞ」
「え?野営かと思って布団作ったのに…」
「なに。 次の村に着くのは2日後だ。無駄にはならんさ」
「そっか。じゃあ休める時に休んどかないとね。みんなお疲れー」
初日は村の宿に宿泊。フツーに寝て、フツーに起きた。
「出発!」
2日目もパッカパッカと進んでゆく。森、山を見ながら進んでいくんだけど…別段変わった物があるわけでもなく…すぐ暇になる…けん玉作ったし遊ぼうかな。初日は景色見るだけで楽しかったのに…
「あーちゃんあーそびーましょー」
「はぁーい。なにするのー」
「じゃじゃん!けーんーだーまー! これはね、この紐に付いた球をこの手に持ってる皿に上手く置いたり、ここの尖ってる所に球を刺したりして遊ぶんだ。ほっほっほっ!あー失敗した…はい。やってごらん」
「あーちゃんやるー。とんっ…とんっ…うー」
「いきなりは難しいよ。ゆっくり遊ぼうねー」
「ソーマ氏…我も我も!」
「大きな子供がこんな所に…」
「敵襲!ウルフ!見える限り4体ッス!」
「ソーマ氏はここに居ろ。我だけで十分だ」
「いや、俺にも1匹くれ!ウルフとは戦った事ないんだ」
「わかった。 セイクリッド!アリス嬢を頼んだぞ!」
「了解!」
4体と言っていたがナビレットのマップには何の生物かわからないけど森にもう4体居る。ウルフだろうけど吸収してないから種類が判別できない。
「変態隊長! 森にもう4体何かいるぞ!」
「…わかるのか?」
「あぁ! 説明は後だ! まずは目の前の敵だろ!」
「わかった。 取り敢えず1匹は任せていいな?」
「ああ! やらさせてくれ!」
変態隊長がウルフに駆ける…速い!一瞬で2匹を殺す。
もう2匹が俺に向かって駆けて来た!
「2匹か…こいよ!!」
とか言ってたらもう1匹を変態隊長が駆け寄って殺した…めちゃくちゃ強いじゃないか!
「ソーマ氏。 残り1匹だ」
「わかってる!」
ウルフは引く事もなく俺目掛けて駆けてくる。 槍を前に牽制しつつウルフの出方を見る。
「ふー。 ゴブリンのナイフ持ちに比べたら怖くはないな。ただ素早いだけだ」
噛み付きか前足での爪でしか攻撃方法はないはずだ…それなら!
ウルフが飛び込んで来た所に槍を合わせ口の中に槍をブチ込む!
ドシャッ!
「飛び込んだら…対策簡単だっての。 変態隊長終わったぞ。森のやつも退却したみたいだ」
「ふむ。 ウルフ程度なら問題ないか。 しかし森に居た奴が退却したと?」
「ああ。 まぁ俺の魔法って所だな。索敵できるんだ。 ウルフ貰ってもいい?」
「ふむ…便利な魔法だな。 ウルフを?録な金にはならんが…」
「まぁまぁ。 夜にでも話すさ」
そう言って俺はナビレットにウルフを収納し吸収した。 後1匹吸収すれば種別の判別もできるようになる。
夜に変態隊長にある程度俺の能力…索敵の事話すか…。変態だけど信頼してるし…問題ないだろ。俺をどうこうするってタイプの人間じゃないって事は今までの付き合いで分かったしね。
ウルフを倒してからも馬車の旅は続く。
「あー…付いて来てるな」
「ウルフか?」
「たぶん。 ウルフかは分かんないけど来てるわ。 一定の距離で付いて来てる」
「ふむ…ならば夜だな。 闇に乗じて襲って来る気だろう。まぁ我らが居れば問題ないさ」
「余裕ッスよ」
「だから気にしなくて大丈夫っす」
この人達が居れば安心だけど…なんだけど…二人共同じ様な喋り方なので分かりずらい…
そして夕方になり野営の準備をする。あー…なんかキャンプしてる気分だな。
「んじゃあ、馬車に布団出すから寝る人はそれで寝てねー」
「ソーマ氏は布団まで持ってきているのか」
「風呂桶もあったりー」
「野営という感じがしないな」
「まぁまぁ。あったら便利っしょ?」
「それはそうだが…」
飯を食って火を焚き、そこで話をする。 なんかいいな。魔物と盗賊さえ出なければ最高じゃないか!
バルトとセイクリッドは馬車で先に寝ていてアリスは俺の横で寝てる。
そんな中、火を見つめながら変態隊長が聞いてくる。俺と見張りの時間だ。
「ソーマ氏…ソーマ氏は…何者なのだ…?」
「え? それ聞いちゃう? そういう聞き方する?」
深刻そうに変態隊長が聞いてくるから俺は笑いながら答えた。
「子供…とは思えない発想…料理しかり…魔法しかり…収納魔法と言っていたが魔力を感じない。索敵の時もそうだった」
「あー…魔力…高ランクの人には分かるのか…。そうだなー…まぁ魔法じゃないな」
「魔法じゃない…魔道具の類を使ってる様にも見えないし…」
「あー…俺元々この世界の人間じゃねーんだわ」
言ってやった…外で焚き火してて…雰囲気に流されたのかもしれない…が、もういいだろ。誰かに知ってもらいたかったのかもしれない…それがたまたま変態隊長だった…たぶん…そういうことだ。
「この世界の人間じゃ…ない?」
「あぁ。そうだ。何言ってるか分かんないだろ?ははは」
俺は立ち上がり収納から弓を取り出す。一瞬にして袋も無い所から出るから変態隊長もビックリしている。
「それは…本当なのか?」
「ははは。どうする? 殺すか? でもそれだったらアリスの事頼むわー」
シュッ!
俺は森に向かって矢を放つ。 ナビレットで魔物の位置わかるから簡単なお仕事です。ウルフなら地面からの高さも分かり易いし。
「ギャウ!!」
「まー…変態隊長ならそんな事しないだろうなって事で話したんだけどな。あ、誰にも言った事ないんだぞ?もちろんアリスにも…まあまだ分かんないだろうけどな」
シュッ!シュッ!シュッ!
「ギャウン!」「ガッ!」
「あ、1匹外した。ちょっと行ってくるわ。座ってていいぞ。後1匹しかいないし」
「あ…あぁ」
あー…めっちゃ混乱しとるやないですか…言わない方が…良かったのか?んー…まぁ。違う世界から来たんですーっとか言われたら…うん。 はぁ?ってなるな。 弓を仕舞いすぐに槍を出す。
「フッ!!」
「ギャフッ!」
「ふー…どうしたもんか…。 全滅…したな。収納して吸収して終わりっと」
「たらいもー。追跡してた奴倒して来たぞ。近くに魔物は居ないな。あ、俺の能力ね」
「あ…あぁ。 それで…違う世界から来たと言うが…この世界で何をするのだ?」
「え? 何もしないよ? いや、前の世界でね、トラック…こっちで言う馬車みたいなやつ運転してたら急に飛び出て来たデブが居てね? あぁ、飛び出しが流行ってたのよ。飛び出して自殺したら異世界に生まれ変われる!って変な話が広まってたのね。 んで、飛び出す人間が増えて、撥ねた人間が精神壊したりして自殺する人がものすごく増えたんだってさ。それで自殺する人間に対して神様が怒って、飛び出して自殺した人を地獄へ。被害者である撥ねた人…この場合俺だな。を違う世界でやり直してみないか?って事でこの世界に転生されたって訳だ。 うん何言ってるかわからんだろうけど俺も何言ってるかわからなくなってきた」
「よ…要するに…ソーマ氏は被害者で、神の慈悲でこの世界でやり直しを…でいいのか?」
「そうそう。それそれ。あっちに残っても自殺者を殺した事に変わらないってんで、こっちに転生させてもらったって感じ」
「うーむ…まだ混乱しているが…ソーマ氏はこの世界で何かを成したいのか?」
「いやなんも。正直ぐーたらしたい。何にもしたくない。 でも…俺にはアリスが居るから。この子を立派に育てるのが…俺のやる事かな」
「うーむ…妹思いなのだなソーマ氏は」
「はは。最高に可愛いだろ?俺の心のより所…かな? この子が居るから頑張れる…居なかったら多分誰とも関わり会おうと思わなかったと思うし」
俺はこの日初めて違う世界から来たことを話した。それからあっちの世界の事を話し、変態隊長は驚いたり、羨ましそうにしたりしてた。 波長が合う…って言うんだろうか?コイツには話してもいいかなって気がしたんだ。俺だけが思ってる事かもしれないが…この世界での初めての友達。なんだと思う。




