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ウワサの日常ジジョウ!  作者: 影林月菜
第6章 ~本物ですか!? Stars7降臨の事情 もう一度言いますが、本物ですか!?~
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事情16 真希とStars7

 日曜日の朝、いつものように朝食を摂ろうとした時だった。向かい側の和室からうるさい音量でテレビのCMが流れている時だった。紗希が後ろを振り向いて流れている画面を見て指を差した。

 「あー!見て見て真希ママ!真希ママの大好きなStars7だよ!」

 「はいはい、わかったから音低くして」

 あたしがそう言うと、リモコンが近くにあった亜希が手に取り、音量を2、3程下げ始めた。


 Stars7。あたしがこれまでに見てきたアーティストの中で1番お気に入りのグループだ。何しろ某教育番組発祥のグループであり、小さい頃からずっと応援していたメンバーがいる。

 このグループは全部で7人の男女混合のチームで構成されている。しかも10代の兄弟姉妹がメンバーとなってる。あたしはその中でリーダーのケンイチと塚川姉妹の姉・なっちーを推しメンとしている。本当のことを言えば全員が好きなんだけど。


 「へぇ~、真希ってStars7が好きなんだ~?」

 猫目君が水を飲んでからあたしに聞いた。

 「あぁ…、うんまぁね。猫目君はどう思う?」

 返す言葉がすぐに出てこなかったので、一応聞くことにした。

 何でこんな質問をしてるんだろう…。一瞬そう思ってしまった自分が心の奥にいた。

 「う~ん…。まぁ嫌いじゃないけど…好きでもないな…」

 それ普通ってことでしょ、要するに。

 周りから見ればStars7の知名度はマイナーなんだろうか。そう思っていると健汰が突如チャンネルを変え、特撮番組を見始めた。

 「始まったー!ピースレンジャーだー!」

 時間を見れば7時半。あぁ、もうそんな時間なのか。

 「ちょっと健汰!テレビの音よりうるさいぞ!」

 健汰に注意した晴汰がリモコンを片手に持ち、1つ音量を上げた。

 「ごちそうさま。毎回こんなバカ騒ぎには付き合ってらんないわ」

 亜希が席を立って食器をシンクへと運んだ。

 「そうだお姉ちゃん。今日買物行きたいんだけどいいかしら?もうすぐ修学旅行だし、準備もしたいから」

 亜希のお願いを聞いて、あたしは壁掛けのカレンダーを見て確認する。

 「お買いもの!あたしも行きたーい!」

 「僕もー!」

 紗希と健汰も『お買いもの』と聞いてすぐ食らいついた。

 「亜希ちゃん、修学旅行って京都と奈良行くの?」

 猫目君の質問に対して亜希は首を横に振った。

 「それプラス広島よ」

 「えー!?広島も行くの!?いいなぁ~」

 羨ましがる猫目君には反応せず、あたしは手元にあったスケジュール帳とカレンダーを見比べた。

 「と言っても広島では平和セレモニーってものをやってから見学って形だけなんだけどね」

 亜希が付け足しした後にあたしはスケジュール帳を閉じた。

 「そうね。今日は1日オフだし、行くとするか」

 「やったー!何買おうかな~」

 「ちょっと、何で兄ちゃんがはしゃいでんの」

 優汰が疑うと晴汰は汗を垂らしながら答えた。

 「えーっと…。新しい文房具を買いたいと思って…」

 亜希が何事もなくすらりと言葉を放った。

 「嘘ね。あんたまた無駄遣いしようとしてるでしょ」

 真っ先に指摘された晴汰はムキになって反論し始めた。

 「晴汰!欲しいものを買うのはいいけど、必要なものだけにしてよね!」

 「晴汰君って不必要なもの買ってたの?」

 猫目君が首をかしげると、優汰が説明し始めた。

 「例えば大分前に流行った練り消しとか、バトル鉛筆とかそんなもん買ってたんだよ」

 「優汰違うんだよ!あれはその…」

 「ちゃんと使ってんの?」

 あたしが疑いの目で晴汰を見ると、すぐに黙ってしまった。

 「とにかく、今日は少し遠い所で買い物するか」

 あたしがそう呟くと、猫目君と亜希以外は喜びテレビの音はもはや聞こえなくなっていた。






 家から最寄りのバス停で乗車してから40分。あたし達が住む水蓮寺市から少し離れたみどりの市に存在する巨大なショッピングモールにたどり着いた。運賃は大分かかってしまったが、子供料金(半額)のお陰で少しはお財布に嬉しいと思った。

 緑が沢山あり長閑な水蓮寺市と違って、みどりの市は千葉の柏や水戸駅周辺には及ばないが、やはり都会っぽく見える。それにしてもここに来たのは何年振りだろうか。どこか懐かしく感じる。

 「真希ママー、おっきいねー」

 健汰があたしの服の(すそ)っ張ってショッピングモールを指した。

 「そうだねー」

 「ねえ真希、これ迷子にならないかな…。俺初めて来たんだけど…」

 まぁそうだね。猫目君はあまりみどりの市とは縁が無さそうだし、無理はないもんね。

 「大丈夫っスよ。俺何回も来たことあるんで案内しまスよ」

 晴汰が自慢げに言うと、亜希が割り込んで言葉を言い放った。

 「あら、ここに来る度何回も迷子になるのはどこの誰だったかしら?」

 「うっ、うっせーよ!そんな前のことは別にいいだろ!」

 「まあまあ、早く中に入ろうよ。日が暮れるよ」

 確かに優汰の言う通りだ。ここで時間を費やしていたらあっという間に1日が過ぎてしまう。

 あたし達はショッピングモールの中央の出入り口から入り、ずんずんと中へ入って行った。するとだんだんと聞き覚えのある曲が大きくなっていき、曖昧であった歌詞も悟った。

 中央のコートに出ると、沢山の人混みが何かを囲って観覧していた。どうやら何かのイベントがやっているようだ。


 …ん?待てよ、聞き覚えのある曲が流れている上に人混みがいるってことは…まさか!?


 あたしはつい弟妹と猫目君を無視して人混みのいる所の一番後ろへと駆けて行った。

 前がなかなか見えない…。

 「真希、どうしたんだ一体?」

 後から猫目君達が息を切らしながらあたしにたどり着いた。

 「ごめん、ちょっと気になることが…」

 すると先程流れていた曲が終わり、観覧していたお客さんが大きな拍手を巻き起こした。次の瞬間1人の男性が大きな声で挨拶をし始めた。


 「イーエスみどりのにお越しのみなさーん、こんにちはー!Stars7でーす!」


 あの聞き覚えのある低い声…、やはりそうだ!Stars7がここでミニライブをしてたんだ!けどどうしてここに?

 あたしはまだこの状況を信じられず興奮するばかりだった。人が沢山いて前は見えないけど、声を聞けるだけでも嬉しかった。

 「あら、Stars7がここに来てるのね。驚きだわ」

 亜希が心なしかのように呟いた。

 「ねーねー真里パパー、あたしにも見せてー」

 紗希が手を伸ばして構えていた。

 「はいはい、ちょっと待っててね」

 そう言うと猫目君はしゃがんで紗希を肩車をし、ステージを見せた。

 「真希ママー、ぼくもー」

 健汰もあたしに手を伸ばして構えていたので、仕方なく肩車をしてあげた。

 「そう言えばさ、さっき挨拶したのって誰だっけ?」

 優汰があたしの袖を引っ張って尋ねてきたので、即答で答えることにした。

 「あれはリーダーのケンイチこと葉宮一憲(はみやかずのり)だよ!歌も上手いしすごくかっこいいの!」

 「へー、よく知ってるねー」

 猫目君が棒読みのように答えた途端、あたしは興奮のあまりに我を忘れていたことに気が付いた。

 「い、いや~…ただのファンだし、メンバーぐらい知ってるのは当然のことだよ~」

 あたしがそう誤魔化すと、晴汰が語り始めた。

 「メンバーは全部で7人いてでスね、最年少がリーダーの妹の葉宮小明(はみやあかり)、んで小明っちの2つ上がゆーちゃんこと久保田悠馬(くぼたゆうま)といくぴーこと川塚理郁(かわづかりいく)、それからえーっと…、そうだ!そーちゃんこと葉宮爽麻(はみやそうま)、あれはリーダーの弟かつ小明っちの兄にあたるな。あと最年長と言えばリーダーといくぴーの姉の川塚理夏(かわづかりなつ)、あとジェームスこと久保田湊馬(くぼたそうま)だな。これで全員だな」

 「何で湊馬がジェームスなの?」

 猫目君が首をかしげると、優汰が付け足した。

 「あの映画に出てくるジェームスに似てるからだってよ。ファンが言うには」

 するといつの間にかStars7のミニトークが終わり、次の曲に入ろうとしていた。曲を流し始めた途端、全く知らないメロディーが流れ始めた。

 この心安らぐバラード…一体どんな曲なんだろう…。






 明日を信じて(未来のために)

 明日を信じて(もう恐れない)

 辛いことは忘れて

 次の扉を開こう



 今日はあの人とケンカをしてしまった

 こんなこと言いたくなかったのに

 胸がとても痛むよ

 どうして…もっと素直になれないのかな…



 「もう会いたくない!」と口にした

 あの時の僕はどうかしてた

 明日は会ってちゃんと

 謝りたいけど 言えるのかな…



 後悔してるんだ 悪かったよ

 弱気にならないで 勇気を出して

 さあ 悲しいことは忘れて

 明日を生きよう



 明日を信じて(未来のために)

 明日を信じて(もう恐れない)

 辛いことは忘れて

 次の扉を開こう



 つまらない毎日を生き続けた

 僕の心はもう疲れたよ

 こんなに頑張っているのに

 また何で…失敗するんだろう…



 けど僕はあきらめないよ

 支えてくれる人がいるから

 ほら 何度も立ち上がって

 次のステージへ



 明日を信じて(未来のために)

 明日を信じて(もう大丈夫)

 悲しいことは忘れて

 明日を信じよう



 ネガティブになる日もあるけど

 辛くあたる日もあるけど

 どんな挫折をしたって

 僕はくじけない



 明日を信じて(未来のために)

 明日を信じて(もう恐れない)

 辛いことは忘れて

 次の扉を開こう



 明日を信じて(未来のために)

 明日を明日を信じて(もう大丈夫)

 悲しいことは忘れて

 明日を信じよう



 I blieve in tomorrow…





 気が付くと、ついこの曲をフルで聴き入ってしまっていた。あまりにも良い歌詞だったので思わず拍手をした。周りの観客も拍手喝采である。

 「なんか勇気が湧いてくる曲だねこれ」

 猫目君もStars7の曲に魅了されたようだ。

 「ところで悪いんだけどさ、あたしの用事を早く済ませたいんだけど」

 亜希の一言ではっとしたあたしは、猫目君達を連れてその場をすぐ去った。

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