クリスマス当日〜大好き
「会いたかった」
愛しそうに細められた目がとても魅力的で。
自分の鼓動が早いぐらいに振動するから。
やっと目の前に居るのが昴なんだと認識が追いついてくる。
でも。
「…な…んで昴が東京にいるの?」
頭ではまだ信じられない。
昴はまだ北海道に居るはずで。
今年のクリスマスは別々に過ごす事になったはずなのに…。
「いちゃ…いけない?」
「――やっ、そうじゃなくて…」
少し悲しそうに曇った目に、なんだか罪悪感を感じる。
言いたいのはそんなことじゃなくて。
言葉が出ないことが歯がゆくて。
伝えたいことがたくさんありすぎて。
言葉に――詰まる。
「……無理しないでっていったのに…」
だから我慢したのに。
会いたいって気持ち。
我慢したのに…。
「――真緒に会いたかったから」
「…え?」
「それだけじゃダメ?」
とても真剣な。
とても真摯的な昴の目。
「――東京に帰ってきた…理由――」
一番大切だと思っている人に。
こんな目で見つめられて。
こんな事を言われて。
落ちない女がいるだろうか。
少なくとも…私はその例外には入らない。
だってどうしようもないぐらい胸が高鳴っているから。
昴はその優しい目で私を見つめたまま話し始めた。
今、昴がここにいる理由を――。
「小出さんから電話があったんだよ」
「え?」
「真緒が小出さんと遊ぶことになったって言ったあの日の夜に」
里香が…電話?
昴に?
「…な…んで?」
「クリスマス帰ってこれないのかって」
「里香そんなこと言ったの?」
「もう一言言ってたよ」
「…なん…て?」
「真緒の強がりだって解ってるんでしょ?って。いい子だよな、あの子」
今、昴が意識してるかはわからないけど、とても…とても優しい顔してる。
こんな顔で見つめられると……顔を直視できなくなるのに…。
「真緒バレバレ。いつも言ってるだろ?我慢しなくていいって」
「我慢なんて…」
「してないって言える?言えないだろ?俺の前でぐらい素直でいていいんだって。俺に迷惑がかかるとか考えるなよ。お前の望み叶えてやりたいってのが俺の本望なんだから」
「……」
「どんな無茶も。どんな無理も。お前が隣で笑ってくれたら、それだけで十分なんだから」
きっとクリスマスだからだ。
こんな気障な台詞言われて、噴出すこともしないで聞いていられるのは…。
こんなに――涙――が溢れるのは…。
本当はどこか怖かった。
昴にも愛想尽かされるんじゃないかって。
元彼のように、離れていってしまうんじゃないかって。
本当は気づいて欲しかったんだと…今、気づいた。
本当の気持ちに。
本当の想いに――。
昴なら…大丈夫。
受け止めてくれるんだ。
どんな気持ちも。
「昴の…バカ…」
「ん…?」
口にした言葉はどう聞いても照れ隠しで。
昴にだってバレバレだから。
とても優しく私を見つめるその目に。
クリスマスぐらい、――正直に…。
「――昴…大好き」
滅多に見ることの出来ない、大きく見開いたその目が。
優しく変わる瞬間が――好きだから。
【END】
さて、如何でしたでしょうか?これは2006年のクリスマスに自分のHPで企画物として掲載したものですw
次話に、【真緒と昴のハロウィン】をお届けいたします。