クリスマス当日〜メリークリスマス
「もう7時になるんだねぇ〜wそろそろ次いきますかw」
「そだねぇ〜。次はぁ?」
「ん?ご飯wお腹空いたじゃん?w」
「そだねwんじゃ案内よろしくw」
「真緒行くよぉ〜!」
「あ、うん。今行く〜!」
ちょっと二人から離れてツリーの回りを一周していた私は、その呼び声に応じて二人の所に急ぐ。
本当は一周回ってすぐに戻ろうとしてたんだけど…なんだか二人がいい感じなんだもの。
邪魔しちゃ悪いよね?w
綺麗なツリーも見たし、今日の里香のコースにはつくづく満足。
いつもとは大違いだ。
本当はこういうプランも練れる子だったなんて…ちょっと驚き。
なんか色々気を使ってくれたのかなぁ?
ちょっと気になる。
「お待たせ」
「んじゃ次行こ」
歩き出す里香の後を着いていく。
前を歩く二人を後ろで見ながら、やっぱりいい雰囲気かも知れないと密かに思う。
自分がいない間になんの話をしていたのか聞いてみたいなぁ〜。
――今度聞いてみようっと。
「真緒先に上がっててくれる?25階で小出で予約取ってるからちょっと先行ってて。輝と寄りたいトコあってさwゴメンねw」
「いいよいいよ。ごゆっくりぃ〜w」
二人で頷きあいならが連れ立っていく姿は私の目からでもカレカノに見える。
いい雰囲気なのは確からしい。
ホテルの25階って言ったら高級レストランだけど…大丈夫なのかなぁ?
多分2人分しか予約取ってないだろうし…。
急に3人になりましたっていっても受け付けてくれないよねぇ〜。
輝さんどうするんだろ?
そんな事をつらつら考えながら、エレベータに乗り込む。
自分一人しか乗っていないエレベータは静かにゆっくりと上昇していく。
外がガラス張りなので、街のネオンが見えてとてもいい景色だ。
「やっぱり昴と一緒がよかったかも…」
二人には悪いけどやっぱりそう思う。
こういう景色も何もかも。
昴が隣にいるだけで何倍も綺麗に見えるのに…。
―――チンッ。
景色を見たい気持ちも強いけど、エレベータが目的の階に着いたことを無機質な音が知らせる。
開かれたエレベータの先に見えるのは高級…っていうより、『超』高級なレストラン…。
(……高そう…)
ってのが一番初めの印象…。
そこらの一般庶民と同じ給料をもらってる人が見たら十中八九皆同じ事を思うだろう。
私だって例外じゃなぃ。
「ようこそいらっしゃいました。ご予約でしょうか?」
(ドラマや映画を見てるみたい…)と、そう思ってしまうほど、そこは自分の認識とは違う世界だ。
洒落た店内。
襟がピシっとしたスーツを着こなしたウェイター。
明るすぎもせず、でも下品ではないぐらいの照明。
ムード作りとはこういうことを言うんだろう。
「お客様?」
「あ、ご、ごめんなさい。小出です」
「小出様ですね。こちらへ。お連れ様はもうお着きですよ」
「…ぇ?」
さわやかな笑顔と共に言われた言葉が理解できずにしばし立ちすくむ。
ここを予約した連れ…というのは里香のことだろう。
でも、里香とはさっき1階で別れたばかり。
すぐにエレベータに乗ってあがってきたんだから、里香の方が早いことなんてないはずなのに…。
なんかマジックでも使ったのかなぁ?
おかしいとは思いながら、席へと案内してくれるウェイターの後に続く。
部屋の隅にある窓際のテーブルの前でウェイターが座り、椅子を引く。
その前の席にはスーツ姿の男性がすでに座っていた。
もちろん里香ではない。
後ろ姿なので背格好でしか判断できないが…胸が高鳴る。
「ありえない」と思う気持ちと、「でも、まさか」と思う気持ちがぶつかって大きくなっていく。
顔を見た瞬間に。
たくさんの人に感謝したくなった。
なぜならそこにいたのは、今日は会えないと思っていた大切な人。
「メリークリスマス、真緒」
微笑を浮かべるその顔がとても優しくて。
一ヶ月ぶりにあえたのがとても嬉しくて。
胸に抱く色々な感情が邪魔をして、言葉を奪っていく。
ウェイターに引かれた椅子に座ったあと、まっすぐに昴の顔を見つめて…。
「――昴…」
それだけをいうのが精一杯だった。