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クリスマス当日

「里香おそぉ〜ぃ!」

「ゴメンゴメンw」

「もぅいつもそうなんだからぁ」

「えへへw真緒今日も可愛いw」


その台詞と共にキュっと抱きしめる里香。

身長差が15センチくらいあるから、傍目には誤解を招きやすい。


「…どこのタラシだ。お前は」


すっかり気心の知れた友人に振り回されながらも、ツッコミは忘れない。

え?

だって里香はボケなんだもの。

二人の関係ではねw


「でも本当に可愛いよ?襲っちゃいたいぐらぃ(ハート)」


語尾にハートをつけるのはやめて下さい。

頼むから。

真緒の今日の格好は。甘めなプリーツスカートにカッチリとしたコート。

茶色いブーツにニット棒姿。

コートの中は今は見えないはずだけど、いつもとちょっとキャラの違う洋服を着ている。

昴が驚くんじゃないかと思って買ったものなんだけど、着ないのももったいないしね。


「まぁまぁ!今日は私がエスコートするからさw大船に乗ったつもりでいてよ♪」

「…泥舟の間違いじゃ…」


絶対に聞こえているはずの私のツッコミを見事にスルー。

…里香ってこういう奴だよ。




で。まず連れて来られたのは渋谷。

この時期はハチ公口前から主だった通りにはいくつものツリーが飾られている。

街は既にクリスマス一色って感じ。

ちょっと寂しいなぁ〜とも思うけど…。

隣に昴がいてくれたら同じ風景でも全然違う感じに見えるんだろうなぁ〜。

なんて思いを馳せながら歩いていたら。

ふと気が付くと里香の姿が無い。


「…うわ。やばぃ…」


周りは人・ヒト・ひと。

身長のせいで周りを見渡すのはほぼ無理。

携帯で連絡を取ればいいんだが…生憎里香は携帯ってそんなにマメに見るほうじゃないのよね。

まぁ、いなくなったことに気づいたら普通は見ると思うんだけど…あの子の場合考えるより先に動くから、まずは近辺しらみつぶしに探すってのが先。

こんなときに私が取るべき行動は見つけやすい場所に留まって動かないこと。

って事で、今いる場所の一番近くで人の目に留まりそうな所を探す。

歩道脇の電柱を発見し、人の波の中をなんとか進む。

で。

付いたらあとは見つけてもらうのを待つしかない。

他力本願かもしれないけれど、こればっかりはどうにもならない。

もちろんその間に一応の意味をこめて里香の携帯に居場所をメールするのは忘れないけれど。

クリスマス・イブに一人でこんなところにいる自分が凄く周りから浮いていて。

なんだか泣きそうになる。

『なんでここにいるんだろう?』って。

本当なら大好きな人と一緒に過ごす予定だったのに…。

そんなことを考えながら気分が沈みがちになっていた時。


「誰か待ってるの?」


と、声を掛けられる。

相手は多分同い年ぐらいの背の高い男の人。

ラフな格好をしているけど、それがどこか決まっていて、カッコいいなぁなんて思ってしまう。


「はぐれちゃって」


その人懐こそうな瞳に警戒心など沸かず、自然に言葉が出る。

なんだろう?

すごく優しい目。


「あ〜、確かにこの人だかりだとなぁ〜」


周りを見渡して言うその身長は、多分昴と同じぐらい。

視線をあたりに戻すと、どこから沸いてくるんだと思ってしまうぐらい、人の波はだんだんその密度を高めていっている気がする。


「あ、嫌なら答えなくていいんだけど…彼氏さん?」

「ううん。彼氏は仕事忙しくって。はぐれたのは友達」


全然警戒心抱かないっていうのも私的に珍しいけど。

何だろう?

きっとこういう人を得な人柄って言うんだろうなぁ。


「友達の格好覚えてる?」

「んと…白いコートにファーの帽子かぶってたなぁ」

「白いコートにファーの帽子…かぁ」


辺りをキョロキョロと見回して…探してくれてるのかな?


「その子って髪長い?」

「うん」


あの性格に似合わず、すごい長くて綺麗な髪をしている。

染めたこともないから痛んでないし。


「あの子かな?」

「え?何処何処!?」

「ん〜見えるかな?マツキヨの横の路地あたりでキョロキョロしてる子」

「……見えない…」

「呼んでこようか?」

「え。いいですよぉ。悪いもん」

「気にしないで。予定なくなった暇してたとこだから。これ貸してね?」


とそういいながら真緒のニット帽を取り去っていく。

一直線に誰かを目指して歩いていく姿がどこか昴に似ている気がした。



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