クリスマス二日前
街はネオンで煌いている。
華やいだ景色がクリスマス間近なのだと否応なく教えてくれる。
「え?じゃぁクリスマス一人なの?」
「そうそう」
「え〜!あんなに楽しみにしてたじゃないっ!いいの!?」
「いい…とは言わないけど…しょうがないじゃん。仕事なんだし」
「もぉ〜!!!いい子!!!嫁に欲しいっ!」
「あっ!こ、こら!」
ところ構わず抱きついてくる里香に若干焦るものの。
かれこれ十数年の付き合いなだけにもう慣れてきた。
平均身長よりも小さい私と真逆で、平均身長よりも大きい里香。
美人顔とでもいうか、女からみても整った顔をしているといえる里香はが普段着にしているのはスーツだ。
だからか、一緒にいると里香の方がお姉さんに見られることもしばしば。
しかし、見た目とは違いかなりズボラ。
以前一度だけなぜいつもスーツなのか聞いたところ、「服を選ぶのが面倒」という答えを貰った時は一瞬言われたことが理解できなかった。
見た目に引かれる男が多いらしく、年中告白されているが、男勝りな性格故に、付き合っても長続きはしないらしい…。
そのさばさばした性格故に、別れた彼氏達とは今でもいい友達でいるようだけど。
里香曰く、別れてからの方がお互いを理解しやすいんだそうだ。
…元彼とは連絡も取らない私には、多分一生かかってもわからないと思うけど…。
「よし!遊びに行こう!」
「え?」
「聞いてなかった?クリスマス遊ぼうよ!」
「…里香彼氏いるんじゃ…」
「もう別れちゃった(笑)」
「えっ?だってまだ2週間も…」
「私の事はいいからいいからw」
大体の人に姉貴肌と言われる私だが、この幼馴染には弱いらしい。
振り回されている感が否めない。
まぁ…それはそれで楽しんでるけどさ。
結局里香は言い出したら聞かないってところもあって、クリスマス・イブのイブである23日と、クリスマス・イブである24日にかけて遊びに行くことになった。
場所とかは全て里香が決めて、一日エスコートしてくれるらしい。
「じゃぁ23日いつもの駅前でねw」
「了解。あ〜、カッコの指定ある?」
たまに釣りとか山登りとか連れて行かれることがあるので、格好を聞いてしまうのはもう癖になりつつある。
「ん〜可愛らしい格好でw実際着ようと思ってた服でいいよぉ〜w」
この答えからすると、特に変なことは考えていないらしい。
「OK〜」
ヒラヒラと手を振りながら別れた後。
密かに里香がニヤついた事に…真緒が気づくはずがなかった。
「じゃぁ当日は小出さんと遊ぶことになったんだ?」
「そうそう。だから一人じゃないから気にしなくていいよ?」
小出っていうのはもちろん里香の事。
昴が出張に行ってから毎日恒例となった電話の時間。
電話越しに聞こえる声にドキドキしながら。
今日のお互いの出来事を話す。
たったそれだけかもしれないけれど。
今の私にとっては何よりも大切な時間。
「ん〜小出さんはクリスマスに真緒と一緒にいれるのかぁ〜。俺も出張じゃなきゃなぁ〜」
電話越しでやや残念そうに言う昴。
私もそれは思うけど…でも仕事なんだからしょうがない。
「あははwその分年末年始は一緒にいられるんでしょ?」
「あぁ、それは平気。ちゃんと部長に確認も取れてるから」
「埋め合わせしあわなきゃねw」
「うわぁ〜、高くつきそうだなぁ〜」
「あははははw」
昴も28日あたりには仕事の目処がたちそうで、なんとか年末年始はカレンダー通りの休日をとれるみたい。
クリスマスは残念だけど、その分一緒にいられる年末年始が楽しみになる。
「じゃ、そろそろ寝るか。寝坊するなよ〜」
「昴もねwおやすみ」
「おやすみ」
ツーツーとなる電話の音だが、どこか名残惜しく、真緒はしばらく聞いていた。
もう。
クリスマスまであと2日と迫っていた。