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俺は主役じゃない!  作者: 烈士長
第一章 三人のヒーロー&ヒロイン
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第1章 第五幕

いわゆる説明回ですね。思ったより長くなってしまいました。

 目が覚めたとき、一番初めに目に入ったのは白い天井だった。

「あら? 目覚めたようね」

ベッドの上に横たわっていた俺に話しかけてきたのはスーツ姿の女性だった。黒髪でロングの綺麗な女性だ。

「あの……あなたは?」

「私? ああ、ごめんなさいね。私は野中麻奈実。防衛省の人間よ」

「えっと……ここは?」

 と、言ったものの見覚えがある光景だ。

「ここ? 大港総合病院よ。それに今は深夜の三時過ぎ。あなたが気を失ってから半日ぐらい経っているわね」

 やはり、親父の務める病院だ。それに俺はそんなに気を失っていたのか。

「大きなストレスから解放されて気が緩んだのね。それと今、あなたのお父さんは居ないらしいわ。昨日今日、東京の方の大学病院に泊まりで行っているみたい」

 それは安心した。親父に心配させる訳にはいかない。しかし、俺が気になったのはそこではない。学校で起きたことの詳細とあの三人のことだ。

「それより何だったんですか。あの学校で起きたことといい、あの三人といい……」

 俺は上半身を勢い良く起こして野中という女性に説明を求めた。よく見たらこの人、俺が気を失う直前に兄貴と会話していた女性だ。遠目から見ていたが背格好が同じだ。

「まぁまぁ、落ち着いて。ちゃんと順を追って説明するから。まずあの怪物達のことね。私たちは奴らをモンスターって呼んでいる。そのまんまだけどね。あなたのお兄さんたちや沢口さんと彼女と一緒にいるあのぬいぐるみくんは魔族って呼んでいるけど」

 俺はそのまま説明を聞いていた。

 要約するとモンスターは異世界と呼ばれる場所から来ており、世界各地で襲撃事件を起こしているらしい。世界中で事件は発生しているが、日本では小規模の事件しか発生しておらず、今回のような比較的大規模で学校という公的機関を襲撃したのは初めてとのこと。これまで俺たちがモンスターの襲撃事件のことを知らなかったのは、世界的に報道規制や緘口令が発せられているからということらしい。

「今回の事件は死者六名、重軽傷者九七名。でもこれだけの大規模の襲撃、しかも文化祭というたくさんの人々が集まるイベントが行われていた、ということを考えると奇跡的とも言えるわね。あの三人とあなたのおかげよ。ありがとう」

 それでも亡くなった人はいる。それに俺はただあの三人に合っているかどうかもわからない指示を出しただけだ。

「あの三人に比べたら……俺なんか……」

「そういう事言わないの。三人ともあなたに感謝していたわ」

「だとしても俺がもっと早く勇気出してあの三人に何か言っていれば……」

「そう卑下しないの。ほら本人たちからも聞いてみなさい」

「えっ?」

 俺が聞き返そうとする前に病室の扉が勢い良く開いた。

「遼! 良かったぁ無事で。もうなんであんな無茶したのよ! 心配したんだからね!」

「お兄ちゃんごめんね。私が待っててって言ったからずっと外にいたんだよね。ごめんね……」

「まったく……こんな可愛い子ちゃん達を心配させて……。だがまぁやるじゃねぇか。大したもんだよ、お前は」

「佳奈! 美沙希! 兄貴!」

「もう! ここは病院よ? それに何時だと思っているの。三人とももう少し静かにできないの!?」

 そう。入ってきたのは、今日の事件解決の立役者達だ。あまりにも勢い良く入ってきたせいで野中さんに叱られている。思わず三人とも謝っている。

「まぁいいわ。ちょうどあなた達三人のことも話そうと思っていたし。三人とも自分の口から彼に説明してあげなさい」




「じゃあ私からするね」

 最初に名乗りを上げたのは美沙希だ。

「パータからある程度は聞いてると思うけど、私魔法使いなの。それも風を操れる魔法使い。ソーウィン・メンバー、略してソーウィムっていうんだ。魔女の祭りの一員って意味なんだけど……」

 つまり魔女の祭りのメンバーってことなら魔女ないし、魔法使いということか。

「パータはまだ見習いの私を助けるためにやってきたの。パータと私が出会ったのはお兄ちゃんと「ちょっと待って!」

話に割り込んできたのは佳奈だ。佳奈は早口でまくし立てる。

「さっきから思っていたんだけど『お兄ちゃん』って……。それに遼も名前で呼んでいるし、遼!? この娘と一体どんな関係なの!?」

「シャラップ!」

 俺は怒鳴って佳奈を制した。佳奈は俺の怒鳴った姿を見たことがない。少し驚いている。かたや兄貴は顔が非常に楽しそうに笑っている。「期待通り」と言いたげな顔だ。

「後でちゃんと説明してやる。ましてこれまで美沙希のことを話していなかったのは俺の落ち度だ。だが、今はこいつが説明している番だ。待っていろ」

「うぅ……でも、怒鳴ることは……」

「アァ!?」

「……ごめんなさい」

「はぁ、いいよ。今は俺の頭が状況に追いついていないんだ。だから話を遮られるのは整理できなくなるし非常に腹が立つ。……俺も怒鳴ってすまなかったな、佳奈」

「ハハハ。痴話喧嘩は犬も「バカヤロウ。兄貴も後でちゃんと話をきかせてもらうから今は黙ってろ」

 兄貴にはみなまで言わせない。

「美沙希もすまなかったな。続けてくれ」

「あ、うん。ごめん。で、中学で再会するちょっと前かな? 私が魔族に襲われたとき私の力を目覚めさせて戦えるようにしてくれたの」

「なるほど。で急に遊ぶ約束をキャンセルしたり、今日けだ……パータがあんな階段のところに居たりしたのは……」

「うん、パータが『魔族がやって来る』って前もって伝えてくれて、魔族と戦っていたから。私があの姿に変身している間は念話が使えるんだけど、まず変身するのにもパータの力が必要だから……」

「変身ねぇ……。」

 俺の脳裏に緑のフリルのワンピース姿が思い浮かぶ。

「ち、違うよ!? 魔法を使うのにあの姿になる必要があるわけで……別にあの格好が可愛いなんて思ってたりなんてしてないよ!?」

 何故、そんなに必死に否定するのか。構わないけど。

「ま、まぁ。あの格好のことはいいよ。それよりお前自身のことだ。お前はこのままあいつらと戦う続けることは……?」

 美沙希が嫌々戦うのであればやめてもらいたいが。

「うん。私はみんなを守りたい。だから魔族とも戦える。それに……」

「それに?」

「パータが言ってた。私みたいな魔法使いの仲間が世界中にいるって。私はその人達に会ってみたい。だから……」

「……そっか……お前がそう言うなら別に俺は何も言えねぇよ。それにパータはお前に悪さしている訳ではないんだろ?」

「うん。ミルクや蜂蜜をくれればそれでいいって」

 俺の後輩は魔法少女だったってわけか。そしてパートナーの小動物があの毛玉ということか。理解はできるが納得ができない。




「次はあたしね。遼もちゃんと説明してよね」

「ああ、わかってる」

 本当はこんな形で紹介したくなかったけどな。

「あたしが乗っていたのは。近年のモンスター被害に対抗するために作られた強化装甲の一種『ヴァルキュリア』」

「『ヴァルキュリア』?」

 確かにあの毛玉もそんなことを言っていたな。

「そう。生命エネルギーを原動力として動くロボットアーマー。一部を除いて乗り手は条件をクリアしている女性のみ。だから『ヴァルキュリア』……戦乙女なんて名前が付いてる」

「つまり、お前はその条件をクリアしていた、と?」

「そういうこと。私の通う神樹学院はその適合者を特待生として集めてる。一応女子高だけど、もし万が一男性の適合者がいれば共学に変えてでも特待生として迎えるみたい」

「だからお前が入れたわけだ。俺より成績低かったのに」

 謎はあっさり解けた。こんな真相だと誰が予想をできるものか。

「成績のことはほっといて! でも、あたしは断るつもりだったのは知ってたでしょう?」

 確かに佳奈は悩んでいた。そこに俺が「せっかく良い所の学校にいけるんだから」と背中を押した記憶がある。

 正直に言おう。俺は佳奈に幼馴染以上の感情を抱いている。なにせ本当の家族以上に家族のような身近さがあったのだ。そんな彼女が名門の女子高に入学できるということを俺は佳奈の両親と一緒になって嬉しがっていた。

「……」

 俺は軽い気持ちで背中を押したことを少し後悔していた。

「遼が背中を押してくれたから。それに『それがあたしにできること』って胸を張って言えるようなことだから……入ろうって決めたんだ。」

「佳奈……」

「遼がいるからなんだよ? あたしが戦う覚悟できたのは。あたしには守りたい人がいるって」

「補修って言って色々約束破っていたよね。あれ、この娘と一緒で、ヴァルキュリアで出撃してモンスターと戦っていたんだ。嘘言っててごめんね」

 俺は佳奈の言葉を黙って聞いているしかなかった。

「モンスターのこともヴァルキュリアのことも一般人に喋っちゃいけなかったからね」

「でもお前は……」

 ようやく俺は口を開く。

「大丈夫。あたしは一人じゃない。学校にはあたしと同じような仲間がいる」

「そっか……」

 気がついたら俺の幼馴染はずいぶん遠くの存在になっていた。なんというべきかこんな表現は微妙だが俺にはロボットアニメの登場人物をみているような感覚だった。

「……ってあれ?」

 そういえば疑問が残る。

「お前……いや……兄貴もそうなんけど。どうやって中学校の敷地に入ったんだ? 美沙希は最初から学校にいたからいいとして、学校の周りに何か壁のようなものが覆っていたはずだけど……」

「え? あの結界のこと? ああ、あれはね、あたしの仲間たちが結界の弱いところを見つけて集中砲火したの。それでヴァルキュリア一台分の大きさを一瞬だけこじ開けることができたから」

 佳奈の答えはなんというか。かなり無理矢理な方法取ったわけだ。

「……随分と荒業だなぁ。兄貴は?」

「俺も最初からいたぞ。十一時半過ぎには既に学校にいた」

「……家で寝てたんじゃないの?」

「寝てない!」

「即答かい!」

 こんなやりとり朝もしたような気がする。

「そういえば、この人がお兄ちゃんのお兄さん?」

 美沙希が尋ねてきた。

「ああ、そうだよ。ちょっとややこしいなぁ」

「じゃあ俺のことは翔兄さんと……」

「バカヤロウ」

「で、この綺麗な人が幼馴染の雛川佳奈さん……でいいんだよね」

「おう、そうだよ」

 美沙希にとって二人は初対面だった。しかも美沙希はわりと内気な子だ。自分から話しかけるようなことはしなかったのだろう。

 しかし、佳奈を綺麗な人、か。確かにわりと可愛い子だとは思うし、中学からわりと男子からは人気だったな。俺には幼馴染だからかあまりそういう感覚はなかったけど。

「さ、遼! あたしのことは話したよ。この美沙希って娘のこと話してもらうわね!」

 佳奈が話を変える。綺麗な人と呼ばれ少し赤面している。前言撤回。少し可愛いと思ったわ。

「おう。それもそうだな。確か兄貴が失踪して一年経つか経たないぐらいだから小一の終わり頃だな」

「ああ、あの時ね……」

 俺はそのころ病院で出会った少女、つまり美沙希のことを話した。中学で再会した、ということも含めてだ。

「……というわけ。隠していたつもりはなかったんだけど」

「そっかぁ。あの時期のことか……そりゃあ遼が話したくないわけだ」

 美沙希、兄貴の二人は何のことかわかっていない。この時期のことは俺、佳奈、親父、あとは両手で数えられるほどの人数しか知らない。それに聞かれてもあまりこの二人には話したくないことだ。俺は二人に「いろいろあるんだよ」とだけ伝えた。




「さて、最後は翔くんのことね」

 そう言って話題を変えたのは野中さんだ。危うく存在を忘れるところだった。

「おう、俺か。……ってずっと言ってんだろ『異世界に飛ばされていた』って」

「いや、信じられると思ってたのか!? 確かにファンタジーな格好で変なもん持って帰ってきたけど!」

「いやぁ、証拠あれば信じてもらえると思って……」

「はぁ……。で、あの剣はなんなんだ? それに五行剣ってなんだ?」

「まぁ、順を追って説明してやるよ。魔族……こっちじゃモンスターか。あいつらにも関わってくる」

「というと?」

「俺がいた世界……ケレスっていうんだがあっちじゃあ、人間と魔族がよく争っていたんだ。歴代の魔族を束ねる王、要は魔王だな。そいつは選民思想が激しくてな。魔族以外は排除しようとしてんたんだ」

「魔族以外って……人間以外は?」

「エルフ、ドワーフといった亜人族、魔族に与する以外の獣人族だな。奴らはわりと人類と共存できていたよ」

 とことんファンタジー世界だな。

「で、異世界からやってきたってだけで俺は勇者扱いだ。いろんな国のお偉いさんが集まっている場所で魔王討伐命じられてケレスを旅していたわけだ」

「理不尽だな。ただそれだけの理由を魔王討伐の為の勇者だなんて」

「ああ、正直腹が立ったよ。だがこの世界に戻るためならなんでもやってやるって思ったからな。それでも何度も挫けかけたけどな。それに勇者には若すぎるっていうんで四年間ひたすら修行だ。危うく俺は勇者って名前の殺戮マシーンだ」

「兄貴が殺戮マシーンって……」

「ま、俺にも仲間がいたから、そこまでには至らなかったけどな」

「その仲間って今は?」

「あいつらはあいつらで帰るべき場所に帰ったよ。俺も魔王倒してから二年旅して帰る方法を見つけたわけだが」

「じゃあ五行剣って?」

「ああ、それは俺が勇者として旅をしているとき五種類の武器を使ってたんだが……どうもそれがお伽話の主人公と重なっていたらしい」

「それが五行剣の勇者?」

「そ。異世界からやってきて五種類の剣を使いこなして魔王を倒した勇者だ。と言っても俺はこの世界には剣一本しか持って帰ってきてないけどな」

「じゃあなんで何もないところからあの剣が?」

「ああ、あれね。俺も簡単な魔法が使えるからだ」

「そうなんですか!」

 美沙希が喰い付く。

「簡単なものだけだがな。主に物質召喚と索敵だ。一定距離であれぐらいの質量のものなら予めマーキングさえしておけば呼び寄ることができる」

「あれ? 索敵ってことは朝様子が変だったのも……?」

「ああ、あれか。あれはちょっと違う。マジックサーチ、つまり魔法が使われた形跡もしくは使おうとする予兆を追うものだ。まさか転移魔法と結界魔法の混合だったとは……。しかも俺を知っている奴もいたしな」

「ちょっと待って。と言うことはモンスター達はあなたが飛ばされた世界から来ているということ!?」

 野中さんが兄貴に尋ねる。

「ああ、あいつらは恐らくケレスの魔族だ。俺がこっちに帰ることができたのは異世界の門ってのがあったからだが。あれはもともと魔族領にあったもんだ。奴らは恐らくそれを秘密裏に研究していたんだろうよ」

「でも、あなたが魔族の指導者を倒したんでしょ? なのに何故彼らは人を襲うの?」

「俺が魔王を倒したはいいんだが、それによって魔族はいくつかの派閥に分かれた。主に魔王のやり方を貫こうとする旧魔王派、他の種族と共存を図る融和派の二つだ。あとは中立か弱小派閥ってところか。」

「つまり、人々を襲うのは旧魔王派だと言うこと? それが何故にこの世界に?」

「俺にもわからんよ、野中さん。ただまぁ人類にとっちゃ迷惑な目的だろうな……」

「どうしてさっき話してくれなかったの!?」

「そこまで、聞かれなかったからな」

 俺はまったく話に追いつけなかった。とはいえ、話していることのある程度は理解できた。

「これは報告の必要が有るわね。……うん。四人共ちょっと待ってて。外に出て連絡を取りたいから……」

そう言って野中さんは席を外した




その間三十分ほど、俺は三人といろいろなことを話していた。佳奈の学校生活や兄貴の武勇伝、美沙希と毛玉の失敗談など。すごく楽しい時間だった。しかし、どことなく現実離れした、物語のお話を聞いているようだった。どことなく三人が遠い感じがする。

「ただいま。待たせたわね」

 そう言って野中さんは部屋に戻ってきた。

「四人とも大事な話があるんだけど、聞いてもらえる?」

 俺を含めた四人は二つ返事で返す。

「さっき。話したとおり、私は防衛省の人間なんだけど。でも表向きで、どちらかと言うとPKFの人間なの」

 PKF。Peacekeeping Force。国際連合平和維持軍。中学生のとき、社会科の政治経済分野で習ったな。俺以外の三人はさっぱり解っていないようだが。

「……国連の平和維持軍のことですね」

 一応フォローはしておこう。それでも解っていないようだが。現役中学生の美沙希と小卒扱いの兄貴はともかく、佳奈は知らないと言わせないぞ。野中さんもなんとなく察したようで「神樹学院も関わっているんだけど……」と言っている。

「まぁ……ともかく。私はPKF、その中の『特務防衛課』に属しているの。これはいわば超常的な事件から国際社会を守るために設立されているんだけど、昨今のモンスターの襲撃事件の対応は私達が行なっているの」

「つまり、モンスターと戦ったりしているのは……その『特務防衛課』ってことですか」

「そういうこと。今日モンスターの残党処理等に当たっていた兵士はほとんどが私達の課の人間よ」

 なるほどね。身も蓋も無い言い方をすれば地球防衛軍って訳か。と、すると――。

「おい、佳奈。お前が俺等四人の中で一番わかっていないとダメじゃねぇか?」

「すいません。ずっと自衛隊か学院の関係者だと思ってました……」

「ま、まぁちゃんと今日、覚えてくれればいいわ……」

 野中さんは続ける。

「で、なんだけど。あなた達四人とも『特務防衛課』略して特課に正式に所属する気はない?」

 スカウト、ということか。確かにこの三人の戦力は欲しいだろう。

 少し待ってくれ。今この人なんて言っていただろうか。

「四人……!? 俺も含めてですか!?」

「ええ、翔くんはその実力、そしてモンスターへの知識から。沢口さんの強力な魔法は私達も必要な力だからだと判断したから。雛川さんは言わなくても判るわね。学院でもこれだけ大きな実戦経験を持っている人間は少ないわ。」

「だから俺が何故!?」

「特課はどうしても人材不足でね、あなたみたいな現場指揮官になれる人材が欲しいのよ。まぁ青田買いみたいなものね」

「俺が……?」

「四人とも無理強いはしないわ。どうしても命の危険が付き纏うし、要請が入ればすぐに動けるようにしないといけないから……」

 俺はどうするべきだろうか。確かに俺はあの場で三人に指示をだした。そして野中さんの言葉を信じるならそれが功を奏したという。しかしあれはまぐれみたいなものだ。俺はあの三人と比べて只の一般人である。実際これから似たような事態になったとして同じような事ができるかといえば否だ。

「……」

 沈黙が続く中、最初に口を開いたのは兄貴だ。

「その特課に所属すれば表向きにはどういう肩書きになるんだ?」

「そうね……表向きはその人間の出身国の国防機関に属するわね。だから私は防衛省の人間って名乗ったの」

野中さんが答える。

「つまり国家公務員か……いいだろう、その特課に入るとしよう」

「兄貴!」

 兄貴は入ることにしたようだ。

「いつまでも穀潰しってわけにもいかないからな。国家公務員ってことなら通りもいいだろう?」

「あの……私……質問が……」

次は美沙希だ。少し不安そうに手を上げる。

「ん? 何?」

「あの……そこに所属すれば私やパータの……その……ソーウィムの仲間に……?」

「今のところ、いないけど同じモンスターと戦っているなら出会う確率も高くなるわね。それに安心して、担当地域はそんな離れた場所にはならないだろうし要請があれば迎えに行くこともできるから学校とかは変える必要は無いわ」

「本当ですか……!? うん。私もよろしくお願いします」

 美沙希は嬉しそうに野中さんに頭を下げた。そして「パータに伝えてくるね」と言って部屋を出て行った。

「あたしは当然入ります……ていうか、どうせ卒業後入ることになるんでしょう?」

 そう言っているのは佳奈だ。

「そうね、必ずってわけじゃないけど……」

「でしょ? どうせ早いか遅いかの差なら早いとこ入っちゃった方がいいもんね」

「あなたは今と大して変わらないと思うわよ。肩書きが増えるだけで」

「え、やっぱり学校には通わないとダメですか!?」

「ダメ! 学生の本分は全うしなさい」

「はぁい」

 そんなに学校が嫌か。

「さ、最後は遼くんね。どうする? 断ってくれても全然構わないから」

 俺は悩んでいた。どうすればいい。

 一時間は悩んでいただろうか。俺は答えを出した。

「俺は……」

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