妾は襲われた
森を通ればもうすぐ教会だ。
おかしい。
なぜか体が震えてきた。冷や汗がとまらない。
理由もないのに不安な気持ちである。
森の中は昼なのに薄暗いからだと思い、歩みを早くする。
そのとき、獣の荒いが聞こえた。嫌な予感がして後ろを振り向くと予想どうり、妾の2倍の大きさはある野犬が数匹歯を剥いて妾を見ていた。
妾は勇者だったときもあったので、小さき身なれど、前世の記憶を頼りに護身術はある程度できる。野犬相手にどこまで通じるかは解らないが、まあ妾元勇者だしの、正直負ける気がせんのうはっはっは。
ではさっそく小刀でも出して引き裂いてくれようか…
うん?
…うん。小刀は鞄の底にあるみたい。
……服が!!!邪魔で!!!あああぁ!!家にいた時の自分をなぐりたい!
妾ピンチ!どうしようとりあえず叫ぼう。
「だ、だれかああああっ!!たすけてえええ!!!」
しかしここは町のはずれの森の中。この森は食べられる動物も薬草の類も少ないので、人がいるとは思えない。
唯一あるのは教会。
「神父さまあっ!神父さまあああっ!!」
しかし神父さまは御年70越の爺である。そういえば、妾に会うたびに「どこの子だい?新しく引っ越してきたのかい?」って言ってたのう…そして大人達はちょっと悲しい目で神父さまを見ていたような…
あれ?神父さまボケてないかの?
気のせいであってほしい!頼む神父さま あなただけが頼りなのだ!
と考えている間にも、野犬は妾に徐々に近づいてくる。
「ひっ…!うぅ…だ、だれか…」
妾の目からはぽろぽろと雫が落ちていた。くやしい。こんな犬っころ数匹に殺されかかっている自分が情けない。鞄を振り回して威嚇しても効果はない。
聖剣がほしいい…!!!
と思ったそのとき、妾の体は宙に浮き野犬は喉元をナイフで刺された。
苦しそうに泡を吹いている犬を残し、他の犬は尾を巻いてもの凄い勢いで森の中へ消えていった。
妾は呆然としながら、背中と尻の下にある妾を持ち上げている男の腕を感じつつ意識を手放した。
襲われたんです。犬に。
変態には、まだ襲われません。そのうち襲われます(爆