戦術航空作戦
エスコンしてたら描きたくなりました。初投稿です。
よろしくお願いします
翼を羽ばたかせ大洋を渡る飛龍の大編隊、その大編隊の中でも4騎もしくは2騎でチームを成して飛んでいる。全部合計して80騎は軽くいるだろう。その中には少数のガルーダが混じっており、その足には物騒なものが握られている。
「しっかしまぁ、こんな作戦成功しますかね」
どこかの隊からか魔道通信を通して聞こえてくる。
「それは俺も思ってるよ」「やってみないとわからないだろ」「海軍殿がもっとしっかりやってくれてたらこんな仕事もなかったのによぉ」
一人の言葉につられいろんなところから不満が聞こえてくる。そんななか
「まあまあそんなこと言いなさんな。どうなるかはお前次第、そうだろ相棒」
とうちの二番騎が話しかけてくる。それにつられ周りもぎゃあぎゃあ言っているがそんなに期待されたら困る。いくらこの大編隊を導く隊長だからといって俺がすべてを握っているわけではない。
「何言ってんだこれまでもあんたがいたからここまでこれたんだ。その気持ちは今お前についてきてるやつ全員が持ってる。」
「どうだこの大編隊を一番上から見た景色は。そこからの景色はみんなあんたを信じたからこそ見える景色だ。もっと自信を持っていい」
確かに…壮観だな、この景色は。一生に一度見られるかどうかだな。よしみんながそこまで言うのなら俺がこの作戦を成功に導いてやろうじゃないか。そう決心し魔道通信を開く、
「みんなの言い分はよくわかった。よし。あと一時間も飛べば目標のヴァンベルク港だ。そこで我々は海軍殿の尻ぬぐいもとい、停泊中の敵艦隊を撃滅する。失敗すれば我らの王国の首都が危険に晒されることになる。失敗は許されない。」
「というわけだ、全員いつも以上に気合入れて行けよ!」
俺を遮って相方が叫ぶ。これから話の〆は相方に任せようか。そんなことを考えつつ僚騎を引き連れてさらに上昇していった。
三か月前
俺たちは王都、参謀本部の大会議室に集められていた。見渡すと今まで作戦行動を共にした奴ら、特に飛竜乗りがほとんどだった。そんな中誰かが口を開く
「なぜ俺たちが集められているんだ要件なら早く済ませてくれ」「こっちも忙しいんだよ」
俺も本心では早く済ませてほしいが口には出さない。一応これでも軍人だ、口に出すことと出さないことの区別はつけている。すると前の方に偉そうな人が出てきて口を開く
「まあそう言わず聞いてほしい。私は王国海軍参謀本部作戦指令室スミット少佐だ。先日チラン半島沖で我が王立海軍とフェンリア帝国海軍との間で大規模な海戦があった。敵の戦列艦を何隻か撃沈したがわが軍も少なくない被害を被った。そのため向こう半年の間は同海域においての作戦行動の継続が困難となった。だが我が国と彼の国の国力の関係を鑑みるに敵艦隊は健在である可能性が高い。チラン半島沖海域は敵基地と我が首都を結ぶルート上にありこの海域の制海権を失うこと、それは即ち敵による首都上陸の危険性を高めることになるだろう。そこで君たちの出番と言うわけだ。」]
一通り説明され会議室内は静寂に包まれる。質問しようと手を挙げる。
「私たちの出番と言いますが何をすれば良いのでしょうか?我々は飛龍乗りです。船の操船などは全くです。」
周りの奴らも「そうだ!」等俺に同調する意見を発する。
「それは重々わかっている。では言おう。今回の作戦内容を説明する。それは飛龍とガルーダによる敵港湾施設及び停泊中の艦隊への奇襲攻撃によって敵主力艦隊を殲滅、或いは当面の間行動不能の状態まで損害を与える。」
広い会議室を沈黙が支配する。そんな中一人が立ち上がり声をあげる、
「無茶だ!」「対地攻撃はしたことあるが艦船への攻撃は前例がないぞ」「船を飛龍で沈めることができるのか?」「そもそも飛龍と大鳥では飛距離が足りないぞ。」
呼応してあちこちから反論が上がる。それを少佐は両手で制止するようなジェスチャーを取り話し始める。
「まず飛龍で観戦を沈めることが可能かについてだが結論から言えば可能だという試算が出た。我が軍も彼の軍も舷側に多数砲を配置している。それが最大の攻撃力であり弱点でもある。つまり舷側の砲門に向かい飛龍の火球術を放ち周囲に配置してある火薬に引火させる。何発か打ち込めば誘爆し艦船は轟沈するだろう。砲門が出なくてもマストや甲板を燃やすことで行動不能に陥らせることが出来る。」
「飛距離に関してはどうするんだ。今言ったことが可能だとしよう。片道行って攻撃して戻れないなんて作戦はやらないぜ。」
「その事に関しても対策はある。我が王立海軍が研究、建造していた洋上龍母艦が2隻ある。この洋上龍母艦1番艦ドクサと2番艦メガロスをこの作戦に従事させる。君たちは敵基地約150海里付近でこの艦から発艦、敵基地を攻撃した後着艦し帰還する。」
立ち上がっていた男がドスンと椅子に座り、再び会議室が静まり返る。飛龍で船を沈めようって事も初めての試みなのに更に船からの発艦、着艦といった無茶ぶりを伝えられ何も言葉が出てこなかった。
そんな俺たちを見ながら少佐は言う。
「作戦決行日はこれから約3ヶ月後の6月初旬になる。それ以降は敵艦隊と我が艦隊との戦力差が看過できないものになるだろうと試算が出ている。これから約3ヶ月訓練に励んで欲しい。具体的な作戦指令所は後程渡す予定だ。質問等あればまとめて作戦司令室に出すように。以上、解散」
数人が制止しようとするが少佐は気にせず会議室を出ていった。しんと静まる会議室。皆が先ほど説明された作戦について頭の中で整理していることだろう。すると隣に座っていた俺の相方が席を立つ
「まあみんな混乱していると思うが聞いてくれ、無茶なことは誰でもわかる。だが俺はこの作戦に参加してもいいと思う。お前はどうだ?」
俺に振るのか。一息ついた後答える。俺としては参加するさ。俺たちに向かってこんな作戦を提示したのは俺たちにこの作戦を遂行するだけの力があると参謀本部が信じているから、だと俺は思う。でも俺が参加しようとおもうのは何も別に参謀殿の期待に応えようってわけじゃない。ただやれと言われたこと命令には従う、こうやって生きてきたんだこれからもそうするしかない。
「なるほどね」「命令か…」「俺も同じだ、生き残るためだ一緒に飛ぶ」「あんたが言うなら参加してもいい」「そのために集められたんだからな。」「やるしかないのか…」
会議室全体からあらかた賛同(?)の声が起こる。これまでの作戦で一緒に飛んだことがある奴が多くいたのである程度の信頼はあったんだろう。
「こうなったらあんたが指揮を取ってくれよ、前の作戦ではお前についていったから生き残れたんだ。今度もみんなお前についていくさ。」
まじか、俺はなるだけ自由に飛びたいんだが…。そんな思いも通じず俺をこの作戦の隊長に挙げてくる。しょうがないやってやるか。そう決心した俺は相方に一言だけ残し少佐のいる部屋へ向かった。
作戦が発表されてから一週間後に俺たちは訓練を行うことになった。それまでに決めなければならないことができた。それは「何」に乗るかだ。あの時集められた奴らは皆生粋の飛竜乗りたちだった。
だが今回の作戦ではガルーダにも乗り攻撃に参加することがきめられている。そこで問題なのが誰がガルーダに乗るかということだ。皆飛竜乗りとしてのプライドがある。案の定皆飛竜に乗るといって譲らず結局平等にくじ引きで決めることになった。
くじ引きに見事に当たったものは渋々ガルーダをしつけている。飛竜と扱いが違うので大変そうだ、それを横目に相方に話しかける、
「ほんとに俺はくじを引かなくて良かったのか?一応ガルーダに乗った経験はあるんだが。」
「一応お前はこの編隊のリーダーなんだ。十分に指揮するためにも今まで乗ってきたやつの方がいいだろ。それに周りも納得していた。」
「ならいいか?」
「相棒、お前は謙虚すぎるところがある。ハッタリでもいいから部隊を率いる時は自分を大きく見せろ、弱気なリーダーなんて士気が下がるだろ?」
「やってみるか…」
「そうだ。しっかりやってくれよ?皆お前の指揮棒で踊るんだ俺はまだ死にたくないぜ?」
俺の肩を軽く叩き飛龍の方へ歩いて行くのを見送ったあとその場で胡座をかいて空を見上げる。俺の手にかかっているか…あんまり深く考えない方がいいな。そう割り切り立ち上がる。そして相方が歩いて行った飛竜の厩舎へ向かった
「隊長、見えて来ました。あれがミナツ岬です。」
編隊より高いところを飛んでいる飛龍から通信が入ってくる。発艦してから2時間は経っただろうか、皆が待っていた報告が入ってくる。俺も上昇し雲の切れ間から視認する。ここで作戦通りの指示を出す。
「ガルーダと第一制空隊は高度を20000フィートまで上昇しヴァンベルクに対し東から侵入、合図を送ったら攻撃を開始してくれ。奇襲隊及び第二制空隊は高度を50フィートまで降下、低空で南から侵入し攻撃をする。」
「今回の作戦の目的は敵艦隊の殲滅だ。少佐は損害を与えるなんて言っていたがそんなのじゃ足りない。攻撃せよ、損害を与えよじゃない、俺たちの故郷を守るには殲滅これしかない。」
俺の言葉に相方が付け加える。やっぱり士気を高めるには俺よりも向いてるんじゃないか?そんなことを思いつつ指示を出す。
「相方の言うとおりだ、俺たちの帰る家を燃やされたくないだろう?攻撃開始!」
言葉を放った直後編隊が二つに分かれていく。俺は一気に50フィートまで降下する。
「水面に手が届きそうだぜ。」
「無駄口をたたくな、敵も近いんだしばらく黙ってくれよ?成功したら大いに叫んでいい。」
俺が何も言わなくとも相方がやってくれる。楽でいいねぇ。そんなことを思っていると
「隊長も副隊長もしっかりやってくださいね!「双剣」の名に恥じぬ活躍見せてください。」
「その呼び方はやめてくれ。言われなくともやれるだけやるさ。さあスピードを上げていくぞ。」
そう言い飛竜の手綱をぐっと引き込み加速し目標の港へ進んでいった。
リオク帝国南部の港湾都市ヴァンベルク。そこに泊っている艦隊を見ながら歩いている男が二人。
「先の海戦で損耗したとはいえここまで損害を埋めるいや以前よりも戦力は増えている、この艦隊があればグーデンタルムの海軍なんざ壊滅させられる日も近いんじゃないか?」
「ああ、弾薬の積み込みもほとんど終わっているしな、あと一週間もすれば出航できるんじゃないかって話だ。」
「一週間か、待ちきれないな。」
「ああ、早く奴らの船が沈むさまを見てぇ。」
「ははっ違ぇねぇ」
そんな会話をしながら歩いているときだった。すぐ頭上をなにかが高速で通り過ぎる。
「なんだ?今のは飛竜か?」
「近衛飛竜隊の奴らだろう、休日の早くからよくやるよ」
そう呟いた瞬間、轟音が辺りに鳴り響く。数秒後に暑い風が男たちを襲う。思わず地面にふせ顔を下げる。
「なんだ!?これは!爆風?」
突然のことに理解が追い付いていない、顔を上げ辺りを見渡すとー船が燃えている。火が積んであった弾薬に誘爆し更に激しい音と共に爆発を起こしている。三本マストのうち二本が根元から折れ倒れていく。下敷きにならないよう甲板から海に飛び込んでいる兵が見える。その数秒後船体が爆発を起こしながら真っ二つに割れる。
二人の男の目に映るその光景は悪夢でしかなかった。損害を埋めるため派遣されてきた新鋭艦隊、この艦隊があれば敵の艦隊を撃ち滅ぼし上陸作戦さえも視野に入れることができたのに。その希望が目の前で燃え、爆沈している。なんだこれは。一人の男が走り出す。
「どこへ行く⁉」
「近くの見張り塔だ!あそこには魔道通信がおいてある、それで状況を!」
「俺もいく!」
もう一人も走り見張り塔の通信室に駆け込む。するとすぐに報告、というより叫び声に似たものが聞こえてくる。
「早く報告を上げろ!」「一番艦、二番艦ともに爆沈しています!」「攻撃してきているのは飛竜です!超低空を飛んでいます。」「四番艦消火作業これ以上は不可能です!退艦命令を!」「飛竜だと⁉早く迎撃を上げろ!」「マストのすぐ上をかすめていきました!攻撃している飛竜の中に「双剣」のマークを確認しました!グーデンタルムの飛竜で間違いありません!」
「グーデンタルムの飛竜だと、どうやって奴らは飛んできたんだ。500海里は離れているはずだ!」
「そんなことは後だ!俺たちもやれることをやるぞ!」
男たちは燃え盛る港湾へ走り出した。
「イヤッホーーーー!!!」「ハッハーーー!大成功だ!」「見ろよ!船が沈む!」
攻撃の第一波を成功させ魔道通信を開くと歓喜の声であふれている。まさかこんなにうまくいくとは思ってもいなかった。初撃で狙った船は帝国最新鋭の戦列艦でありこの艦隊の旗艦であるとあらかじめつかんでいた。それを撃沈されることができたのは大きい。手綱を握る手が更に固くなる。浮かれそうになる心を沈め通信に向かい叫ぶ
「まだ初撃が成功しただけだ!言われただろう?殲滅だって、さあもう一度行こう!」
ブーイングが聞こえるが無視し、奇襲隊を相方に任せるといったハンドサインを送る。相方は奇襲隊俺は制空隊を率いて港の上空を飛ぶ。奇襲隊は高度を再び下げ攻撃態勢に入る。俺は高度をさらに上げ信号弾を撃ちあげ、そしてゆっくりとその場を旋回しつつ下を見る。戦果の確認もしなくちゃならないのが面倒くさい。そんなことを思っているうちにも相方の率いる飛竜が火球を放ち攻撃している。攻撃しては離れ再び攻撃を行うことを繰り返している。地上から銃を撃っている兵もいるが当たっていない。
数秒後に港湾の建物から火が上がる。上空のガルーダから投下された爆弾が命中したのだろう。ピンポイントとはいかないがある程度目標にしていた兵舎などに被害を与えている。煙の中から離陸しようとする飛竜を発見する。すぐに制空隊に指示を出し制空戦闘を開始する。
バラバラと上がってきた敵の飛竜に対しこちらも編隊は崩れ敵味方入り乱れた乱戦となる。
「後ろだ!」「わかってるよ!」「動きのいい奴がいる!」「だれだ!」「混戦してるぞ!」「」
通信が混線し敵の放つ言葉も聞こえてしまう。それでも最低限の指示を出さなければならない。あくまで艦船を殲滅することが目標だからな、奇襲隊に近づけさないようにすることを目標に。
「でも追っ払うだけじゃなくて墜としていいんでしょう?ならとことんやりますよ!」
「もちろん!チャンスを前にしてみすみす逃すわけがないだろ!」
やっぱりこうなるか。血の気が多すぎやしないか?まあいいか自分の仕事をきっちりやってくれよ、とだけ告げ目に入った相手の後ろを取る。敵騎は慌ててロールし降下する
「もらった!」
敵騎が降下した先に待ち構えていた味方が墜とす。
「さっすが隊長、追い込み方は慣れていますね。」
まあ相方に振り回されていたら身に着けていただけだ。俺と相方の二騎を「双剣」なんて異名がついているが俺は「剣」だとは思っていない。相方は「剣」で俺は「眼」と「脳」なんだ、そういうことが多いが相手にされていない。周りを見て判断し、僚騎を配置し誘い込む、あくまでサポートをしてるつもりなんだがな。
「まあ眼より剣の方がよさそうじゃないですか。」
そんな感じなのかね。いやいやそんな話をしている場合じゃない、まだ敵はいるんだ仕事に戻れ。
「そんなこと言いながら隊長も今墜としてるじゃないですか。やっぱり剣ですよ。」
そのあとも空戦は続くが敵は準備ができていなかったのだろう。編隊も組むこと無く空に上がり撃ち落されている。もうほとんど敵騎はいない、こっちの被害は今のところゼロ。このまま押し切れるか。艦船への攻撃も順調に進んでいた。出航の準備をしていたのだろうか、甲板に弾薬が満載されており火球攻撃がうまいこと火をつけ爆発を起こしていた。横づけされていた船同士が誘爆を起こし爆沈している。ガルーダからの爆弾の投下は早々に終わっていたが港湾施設にかなりの被害を与えていた。湾の中には水面に浮かぶ木の板、折れたマスト、セールなどが浮かんでいる。まだ燃え続ける戦列艦もあり黒煙が上がり続けている。煙のせいで戦火の確認も困難になっていた。それでも煙の間から視認できる船に対し攻撃を続けている。湾の入り口付近に泊っていた船は真っ二つに割れ入り口を防いでいる。当分この港は使えないだろう。
「もういいんじゃないか?」
そう言ってくる。確かにこれ以上の戦果は見込めないか…立ち上る煙で視界も悪い、事故が起きてもおかしくはない。
「全騎攻撃を止め上昇してくれ」
全員に伝える。まだやれるといった声も聞こえてくるが攻撃を止めることを決めた理由を伝える。今は納得してもらうしかない。
相方も何かしら言っている。するとぞろぞろ飛竜が上昇してくる。やっぱりあいつがリーダーでいいんじゃないか。
上がってきた飛竜の数を数える。損害はゼロ。敵の火球を食らった騎もいるが飛竜用の軽装が少し壊れたくらいだ。港を離脱するよう先導しガルーダたちと合流する。そこでガルーダの護衛についていた制空隊から不満を言われる。自分たちだけ空戦をしただの、こっちには敵が上がってこなくて暇だっただの言われる。しょうがないじゃないか敵がそもそもあんまりおらず練度も低かった、そんな言い訳をするが聞く耳を持たない。しょうがなくそいつらを無視し
「よし、作戦は終了だ。何とか作戦は成功、あとは船に戻るだけだ。気を抜いて事故を起こすなよ?もらえる勲章ももらえなくなるぞ。」
変なこと起こすなよ、そんなことを思いながら編隊の先頭へ立ち帰りを待つ艦隊のいる方向へ向きを変え普段より遅い速度で飛んで行った。
作戦を成功させた俺たちは王都に戻るや否や会議室に呼ばれていた。作戦が終わってから報告書を書くのに追われていた俺はへとへとになっていた。さらに休息と言われ一週間飛行を禁止されていた。
「ああ、早く空に戻りたい」
「無茶を言うなよ相棒、体に何かあったかもしれないだろ」
そんな雑談をしていると会議室に少佐が入ってくる。
「静かにしてくれ。よし全員いるな。先の作戦はご苦労だった。セラム・ウィッチ准尉、君の報告書を読ませてもらったよ。戦列艦7隻撃沈、フリゲート艦6隻撃沈、スループ9隻撃沈。これは本当のことなのかね。」
「はい、嘘は書いていません。」
「まさかこんなにうまくいくとはな…とにかくこれで帝国による上陸作戦の可能性はほとんどなくなったといってもよい。」
しばらく君たちも休めるだろう、と付け加える。そこで俺が気になっていた事を質問する。
「少佐、質問です。今回の作戦を策定したのは一体誰なのですか?こんな前例もなく実際にできるかわからない作戦を。」
「それはだな…王都の「神童」が原案を考えたらしい。」
『神童』だと?なんだそれは、まだ子供なのか?会議室がざわつく。
「まあ気になるのはわかる。もしあってみたいというのなら王都の高等学院へ行ってみるといい。そこにいるはずだ。」
そのあとにゆっくり休んでくれ、解散。とだけ言うと少佐は部屋を出ていった。
あの後に聞いた話だが『神童』は洋上龍母艦を考案したりそのほかにも様々な作戦、武器や道具を考案しているという。今度会ってみるかなどと考えながら参謀本部の庭で寝転がっていると
「セラム、これからどうする?当分作戦はないだろ」
と話しかけてくるのは俺の相方ーリドル・クライだった。
「どうしようか、適当に空でも飛んでるよ。」
「俺は一回故郷に帰ろうと思ってる。そうだ、一緒に来ないか?まだ俺の生まれたとことに来たことはないだろ?」
「そっちの空を飛べるならいいぞ」
「決まりだな。ゆっくりでいいから準備をしてくれ、出発は三日後だな」
わかった、とだけ返事をする。学院に行くのはまた今度でいいか。そう決めしばらくの休息を楽しもうと決めた。
読んで頂きありがとうございます。
指摘等していただけると嬉しいです