5話「変身シスターは聖なる狩人」
シスター達の本来の姿、そして本来の任務が明らかになります。
光輝く三人のシスター。
「「「ホーリーギア・プットオン!」」」
光が止むと、三人は肌にピッタリフィットしたレオタード調の強化服姿へと変わっていた。
目にはアイシールド、そして頭部を守るヘッドギア。
手にガントレットとグローブ、肘、膝、肩、そして腰に小さなプロテクター。
足先は動き易そうなブーツを履いていた。
そして背中にはウサギの耳のようなV字形のマント…いや、マフラー?が風に靡いていた。
そして各パーツにはそれぞれ三者三様のカラーを発行する光のラインがリング状に発光している。
【我ら、修道戦姫】
【タクティカルシスターズ!!】
三者三様に決めポーズを取った。
それ自体にはあまりチームとして纏まりが無いがもののタイミングだけは合っていた。
ワリと練習したのかも知れない。
「ほーりー…ぎあ、タクティカル…だあ?何だそれ?」
剣護は呆気に取られた。
「これが私達本来のユニフォーム、戦闘力強化形態なのです。」
久里亜が落ち着いた声で答えた。
「そして私達の本当の任務、ソレこそが…。」
「このようなメタルファントムに憑依されて出現するメタロイド達を倒す事!」
『ワシを倒すだと?』
『戯言も大概にしろい!』
ドン!
金貸しだった存在は今度は口から突風に弾丸を混ぜて発射した。
だがソレを聖姫の変身体がバチッと手で防ぐと弾丸を掴み、ポトリと地へ落とす。
「どうやら金貸しだった男はあの錠剤の中に封印されてたメタルファントムに憑依されアンタ…つまりメタロイドへと変化した…そういう事らしい。」
「アンタの持ってるその錠剤…出所は何処だい?」
キッ、と聖姫はメタロイドを睨みつける。
「へえ…つまりアイツは正式にはメタロイドで、憑依してる存在の方がメタルファントムになるって事だったのか。」
「俺今までずっとメタルファントムって呼んでたぜ。」
「世間ではその名の方が浸透してますからね、私達もソッチの方の呼び名を使う事も多いですし。」
剣護がしゃがんで独り言を呟いてると、いつの間にか早理華がその隣に腰を下ろして相槌を打っていた。
「こらソコ、のんびりイチャコラしてんじゃない!」
聖姫はそんな二人にイラッと来た。
「あ、そでした。」
早理華は立ち上がると跳躍し、メタロイドの背後へと降り立った。
「では、手短に終わらせましょうね。」
「良し、行くよ。」
聖姫もメタロイドの側面へ。
「みんな、配置良し?では…。」
久里亜が両手を胸の前で広げる。
『何する気か知らないが、隙だらけだ!』
ドムッ!
メタロイドは再び突風を纏わせた弾丸を撃ち込む。
今度は久里亜狙いだ。
「…はっ?!」
技を繰り出すつもりだった久里亜は無防備だった。
「先輩!」
「久里亜さん?!」
「…させねえ!」
ギインッ!
剣護はすかさずコレを斬り落とす。
ヴヴヴ…。
剣護の持つ剣の刃轉び一つ見せない刀身が白銀色に煌めき、見ている者が息を呑む程の凄味を放っていた。
「大丈夫か?」
目の動きだけで久里亜に確認する剣護。
「…あ、ありがとう、ございます…。」
久里亜は少し呆けていた。
「先輩、今のうちに!」
「!そ、そうでした!」
久里亜は剣護の前に出る。
「集中、集中…。」
少し独り言を早口で呟いてから久里亜は広げた両手を身体の前で合わせる。
「三位一体、我らの力をここに!」
「我らの心をここに!」
「我らの魂をここに!」
三人が詠唱する。
と、三人のバリアブルウェアから何本もの糸のような放電が伸びてメタロイドを包み込む。
『ナ、何だコレは?』
やがてソレは完全にメタロイドを包み込む。
「震えて眠れ」
「熱く眠れ」
「痺れて眠れ」
「「「シェイク・ヒートーッ!!!」」」
青い閃光が久里亜から、
赤い閃光が聖姫から、
最後に金色の閃光が早理華から
それぞれ放たれた。
それが一つに集中する、メタロイドを包む放電へと。
ズガアン!!
『〜〜〜〜〜〜〜????』
その中で何が起きているのだろう。
声にならない声が、音にならない音響が鳴り響く。
その中のみで。
やがて全てが眩い輝きの白へと集約された後。
唐突に光は消えた。
トサッ…。
メタロイドが居た後にはボロ着れを纏った男が倒れ伏していた。
剣護はソレに駆け寄った。
「…良かった、どうやら息はあるようだ。」
ガチャ…。
教会の扉が開いた。
「終わったようだな。」
「今更か?出るのが遅いぞ銃吾!」
「オマエには罰としてコイツを警察へ突き出してもらう、異議は認めない!」
「ば、馬鹿言え?そんな事したらコイツから金受け取った俺まで…」
「事情聞かれたら逃げりゃいいだろ、何時もみたいにな。」
「…それもそうか。」
「何故そこで納得するのこの人?」
早理華は首を傾げた。
「…周囲に他の反応無し、解除しましょう。」
久里亜の声で三人は元の修道服姿へと戻った。
そして数日後。
結局、剣護と銃吾は建物の修繕や諸々雑用して居座っていたのだが。
「先生達…行っちゃうの?」
「ゴメンナサイ、私達はまた新しい職場に派遣される事になったの。」
「私達の代わりに来る先生達や、シスターのお姉さん達を困らせるんじゃないよ?」
「と言っても教会の方は廃業でこれからは他所の孤児院と統合され新しい施設がここに出来るんですけどね…もう決まっていた事なのでどうする事も出来ませんでした。」
「でも借金してここの孤児院の権利とこの子達の居場所だけは守れたのは収穫でした。」
寂しく笑う久里亜に対し、聖姫は明るかった。
「その借金の方もあの金貸しの悪事がバレて帳消しだしね!いやー、良かった良かった(笑)。」
「もう…聖姫さんたら(笑)。」
「なあ…働きに出たっていう孤児院の院長や諸先輩達、それから教会のシスターや神父とかって…」
「…まあ、そこは色々あったんですよ…」
「メタルファントム絡みで…これ以上はもう言わせないで下さい。」
「そ、そうか…ならもう聞かない。」
「ところで貴方とそのお友達の方はこれからどうなさるんですか?」
「俺か?俺はまたメタルファントム…いやメタロイド狩りを兼ねて放浪、かな?」
「まあ…道中の危険もあるだろうから途中までガードしてやってもいいけど…。」
「そんな、悪いです…それに私達強いんですけど?」
「わ、わかってるけど不意を突かれたら危ないだろ?」
「そうですね…でも報酬はありませんよ?」
「いいってことよ、ついでだ。」
「それからコイツは友達じゃない!ただのストーカーだ!」
「誰がストーカーだ?単にオマエとの決着を付けるため追いかけてるだけに過ぎん!」
「るせい、剣と銃どっちが強いかなんて小学生以下な事考えてんじゃねえ!」
「抜かしたな?なら今度こそ決着…」
男連中はまた二人でギャーギャー喚き始めた。
「ははは…お仲がよろしいのですね…。」
早理華は呆れた。
「付き合ってらんないね、それじゃ元気でな!」
誰に言うとでもなく聖姫は歩き出した。
「あん、待って下さい聖姫さん!」
早理華は慌てて追いかけた。
「さ、行きますよ久里亜さん?」
「………………。」
「久里亜さん?」
久里亜はボーッとしていた。
その視線の先を早理華が追うと、
「やるかこのヤロー!」
「その前に弾丸探せ!約束だぞ?!」
彼女の視線は明らかに剣護を指していた。
「早理華ちゃん…」
「は。はい?」
「私は男の人苦手でしたけど」
「一人例外が出来たかも、です。」
「へあ?!」
久里亜の放った意外な言葉に、思わず早理華は素っ頓狂な声を挙げた。
そんな二人を振り返って見ていた聖姫はこう呟いた。
「真森剣護…変なヤツだね。」
こうしてシスター三人と男二人組?は新たな舞台を目指すのであった。
シスター達は孤児院を離れ、新しい任務へ。
男達もそれに付き合う事になりました。
果たしてこの5人に今後何が待っているのか…?