4話「現れたメタルファントム」
早理華を吹き飛ばしたヤツの正体は…?
そして彼女らのピンチに剣護と銃吾は…。
三人のシスターの視線の先にいたのは、
「ケッ、あの用心棒…コイツらも始末せんと何をやっとんじゃ…」
「あ、貴方さっきの金貸し?!」
久里亜が驚きの声を挙げた。
「アンタさっき逃げ帰ったんじゃなかったのかよ?」
聖姫は早理華から離れて前に出る。
「みんな気を付けて下さい、何かこの人おかしいです。」
早理華はその男を睨み付けた。
「あなた、さっき何かの力を使いましたね?アレは何なんですか?」
「力…コレか?」
男がヒョイと腕を動かすと、再び突風が襲った。
「うっ?」「ぐっ」「んっ!」
三人は飛ばされないよう足を踏ん張って耐えた。
「普通の人間じゃない…さっきオメオメと逃げ帰った人とは別人みたいね。」
「別人?違うな。」
男は小瓶を出した。
「ちょいとコイツを飲んでたのさ」
「効果が出るまで少し時間がかかったもんでな。」
「効果?」
「そう…コレがその効果だ!」
男の身体が放電を始めた。
「いけない、離れて!」
久里亜が叫ぶ。
三人は建物から離れる。
「アイツの狙いは私達、迂闊に孤児院に近付けば中の子供達が危険だわ!」
「そうだね先輩」
「でも、何故私達を?」
男は肉体が逞しく変化するや、無骨な装甲に覆われ始めた。
「な、何なのよソレは?」
『グブブブ…感じる、感じるぞ〜、素晴らしき力を!』
「嘘…身長が、1m50cm程度だったのに、ゆうに2 mはあるよアレ?」
『どうだ、驚いたかワシの変身!』
「はっ?悪趣味なそのミテクレに呆れただけだよバケモノ!」
聖姫は聖衣から鞭を取り出した。
「くらいな!」
ビシッ!
だがその鞭は分厚い装甲に弾かれた。
『ふん、そんなオモチャが効くと思ったか?』
「ならこれはどうです?」
久里亜は聖水入りの試験管を修道服から取り出し投げつける。
パリン!シュアアア…
『…なんだコレは?』
「聖水が効かない…悪霊の類では無さそうですね。」
『オマエラの攻撃はこんなものか?』
「まだまだ…これならどう?」
早理華が修道服のスカート部分のスリットから太腿を顕にすると、そこに仕込んでいたハンドガンを取り出す。
「ちょ、ちょっと早理華、それは流石に…」
聖姫が慌てて制止するが時遅し。
「喰らいなさい!」
パン、パンパンパアン!
ああ、撃ってしまった。
だが。
『痒い。』
早理華のハンドガンから放たれた弾丸は男の胸板の装甲に当たり、潰れて落ちた。
「ウソ?少しもめり込んでないなんて?」
「霊的な聖水も物理的なハンドガンの弾丸も受けつけない…打つ手無しね。」
「冷静に分析してる場合かよ先輩?てかアタシの鞭を判断材料に入れてないのなんで?!」
「そんな事言ってる場合ですか聖姫さん?!」
ワチャワチャ喚いている三人めがけてビュオッ!と突風の塊が再び襲う。
しかし三人は読んでいたのかバック転してこれを躱す。
その瞬間、三人の白い生足がモロ見えになった。
特に早理華は太腿にガンホルダーを装着していたから余計にセクシーに見えた。
それが見えたバケモノ?は顎を擦りながらいやらしそうにこう言った。
『フフン、良く見ると殺すには惜しい美貌だな。』
「何見てんのよエッチ!」
早理華が憤慨した。
「落ち着け、コイツを倒せば見てたヤツはいなくなる。」
『笑わせるな!…それと。』
『見ていたのはワシだけじゃないぞ?』
「「へっ?」」
早理華と聖姫は抜けた声で聞き返した。
「あの…早理華ちゃん、聖姫ちゃん…」
申し訳無さそうに、それでいて涙ぐみながら久里亜が二人へ話しかけた。
「その、見られちゃってたみたい、そのバケモノ以外にも…」
二人が久里亜が指差す方を見ると。
「………。」「…………。」
なんと、離れた所から真っ赤な顔でコチラを見ている二人の男が。
「ち、違う見てない…というよりチラ見えしただけだ、ホンの一瞬だけな?」
「う、うむ…ワザとじゃないぞコレは事故だ!」
剣護と銃吾は顔を逸らした。
「〜〜〜!!」
早理華がハンドガンの銃口を二人に向けようとしたので聖姫は慌てて制止した。
「ば、バカバカ!生身の一般人撃っちゃダメだって、死んじゃうだろ?」
「殺しませんよ〜、アレが最後の光景となるように目を潰すだけです、二度と見れなくする為に!」
「お前、それマジで言ってるだろ?」
「待て待て、撃ち合いしたくてもまだ私は弾丸拾わねば…」
「おい、何で撃ち合いになる?」
「抜かせ、お前こそその剣であの女のハンドガンに対抗する気か?」
「だから何で戦う事になる!」
パンパン!と早理華は空に向けて威嚇発砲した。
「あーうるさい!当てやしないわよ別に!」
「そ、そうか。」
「…て。それより!」
「そうだな」
剣護と銃吾は三人に駆け寄ってきた。
「な、何ですか、やる気ですか?」
ファイティングポーズで久里亜は身構えた。
「ド、どうどう、落ち着いて!」
聖姫は今度は久里亜の方を制止した。
「なんかアンタ一番喧嘩っ早そうに見えたのに意外に苦労人みたいだな。」
剣護は意外そうな目で聖姫を見た。
「そ、そんなんじゃないよ?ただこの二人が暴走気味なだけだよ!」
聖姫はちょっと照れたのかソッポを向いた。
『何だ仕事放り出しておいて今度は邪魔する気か?』
「その声…金くれた金貸しか。」
「すまんな、バケモノからの依頼と美人の窮地を見たら後者を取るのが普通だ。」
「言うじゃん。」
剣護はニヤッとした。
二人は武器を構える。
「…お前、弾丸無かったんじゃ?」
「うむ…忘れてた。」
そそくさと銃吾は教会の中に隠れた。
「ではこの場をヨロシク。」
「…のヤロー!」
「仕方ない、援護お願いしますよ?」
「そっちこそ邪魔するなよ?」
「私達の生足見たんだから主導権はコッチが貰います!」
「ここでソレ持ち出すのかよ。」
『痴話喧嘩ならあの世でしろ!』
再び突風の塊を発射するバケモノ。
「おっと!」
ズサッと後方へ避ける剣護。
「さっきから撃つばかりでロクに動かないな、テメェは図体と硬さしか取り柄が無さそうだな!」
『うるさい、自分の長所を利用してるだけだ!』
「だがその攻撃、これまで戦ってきたメタルファントムの中じゃ最低ラングだ!」
『何だとー?』
久里亜が剣護の言い放った名前に反応した。
「メタルファントム…やはりそうでしたか。」
「メタルファントム?」
早理華が聞き返した。
「メタルファントムとは機械人の霊が憑依し異形の機械生命体へと変わったモノ、悪霊の類とは違うから聖水では何も反応しないのよ。」
「ああ、早理華はまだ知らなかっただろうけど実は私達は、ソイツらからみんなを守るための組織から派遣されたんだ。」
「組織?」
今度は剣護が聖姫の言葉に反応した。
「そう、今こそ私達の本来の力を開放する時ですよ、二人とも。」
「ああ、早理華もわかってるね?」
「あ、アレですか…!」
三人はすうっと深呼吸してから横に並ぶ。
「では…覚悟なさいメタルファントム!」
三人はロザリオを胸に当てた。
次の瞬間、三人のシスターの全身は光り輝いた。
メタルファントムというバケモノになった金貸し。
本来の力とやらを開放した三人のシスター達、そして剣護はこれを撃退出来るのか?
…そして弾丸切れでコソコソ隠れた銃吾はどの面下げて四人に弁解する気なのか(笑)?