2話「剣護とシスター達の意外な…?」
早理華と剣護がちょっといい雰囲気に?
そして彼の身の上もちょっとだけ明らかに?
食事も終わり、孤児達の年長組は女子が食器洗い、男子が年少組を散歩に連れて行った。
この後子供達は一時間のお昼寝だそうだ。
「で、そのお昼寝一時間が私達にとっての休憩になるわけです。」
早理華はウーン、と背伸びをした。
「なるほど…なら俺もここらでサヨナラするか。」
剣護の言葉に早理華が突然叫んだ。
「…あーっ!そうでした、その、あのっ、…そうそう、園長のアルバムが!」
「アルバムう?」
「貴方が写ってるかも知れません!さあ早くコチラに!」
「お、おいおい引っ張るなって!」
バタン!
早理華は園長室に剣護を強引に押し込んだ。
「…早理華のヤツ、ワザとらし過ぎるだろ?」
早理華より一年先輩の銀髪シスター、聖姫は頭をポリポリと掻いた。
「何にせよ、やっとコレを調べられるわね。」
その聖姫より更に一年先輩に当たる黒髪シスター、井八州久里亜は剣護の持っていた長物を包んでいた皮製のカバーに手をかけた。
ジーッ…。
カバーのジッパーを開く音がする。
カパッ。
ジッパーを押し下げカバーを開く久里亜。
「…ビンゴ。」
久里亜が微笑んだ。
「武器、それも長剣だね久里亜先輩。」
「こんなイカツイ武器を隠すように持ち歩いてるなんてカタギとは思えない…アイツ何者だ?」
「これは事情を聞かない事にはここから出すわけにはいかなくなったわね聖姫ちゃん。」
「尋問するのかい、久里亜先輩?」
「そうね…その役目は聖姫ちゃんに譲るけど。」
「はあ?」
「だってー、ホラ私、男の人って苦手だしい〜?」
「いやいや、先輩さっきアイツの腕を取ってテーブルに付かせてたじゃん?!」
「あれは子供達を世話する時の感覚だったの〜、だからノープロブレム!」
「尋問も大して変わんねーだろう?」
「変わるわよー、凄まれたり睨まれたらヤダモ〜ン!」
「アタシだってそんなんヤだよ!」
「「う〜ッ…!」」
二人は睨みあった。
「そうだ、ジャンケンで決めよう?」
「えー。私ジャンケン弱いからヤダー。」
久里亜が嫌そうな顔になる。
「ああもう、きかん坊だな先輩は!」
「…ねえ、ていうかそもそも私達のどっちかが尋問役って決まりは無くない?」
「言われてみれば…。」
「てか、他には早理華しかいねーじゃん!」
「そそそ、だからあのコにやらせましょ?」
「でもアイツまだ…。」
「1年目の見習い期間といっても私達が見守ってれば大丈夫!これも経験を積ませる為!」
「う〜ん、いいのかなあ?」
聖姫は少々疑問ながら、やはり自分も面倒臭いとの理由で結局は早理華に尋問を押し付けるのだった。
ガチャ…。
「懐かしかったですか?」
「…ああ。」
「ホンの二、三枚だけだったけどガキの頃の自分と他のヤツラを思い出せて良かった。」
「ありがとな、シスターさん。」
「やだなー、早理華でいいですよ。」
「そうか、サンキュ早理華。」
「エヘヘ…。」
早理華が照れている。
「ちょっとちょっと早理華ちゃん、何出会ったばかりの男といい雰囲気になってんの?」
「そうだよ、先輩のアタシ達差し置いてさ?」
「ち?違いますよお!そんなんじゃあ…。」
早理華はアタフタと狼狽えた。
「…で、アンタら人の得物に何してやがる?」
剣護は自分の所有する剣がカバーから出されて聖姫と久里亜が手にしてる事に立腹した。
コレに対して久里亜は悪びれずこう答えた。
「…少し怪しかったので調べさせて貰いました。」
「悪く思わないでくださいね、何か犯罪に巻き込まれてからでは遅いので。」
「これが武器なのは見て分かる、アンタ何者だい?」
「ホントに武器ですね…剣護さん、実は裏で危ない事とかされてませんか?」
「危ない事…は危ないが…別に犯罪はしてないぞ?…多分?」
「…そーいうアンタ達こそ俺には普通のシスターに見えねーんだけどな。」
「私達はちゃんと教会本部より派遣されて来たシスターです。」
「じゃあ聞くが、ここの教会の現在の神父は誰だ?何処にいる?」
「…い、今は適任者不在の為…私達が代行です!」
「ふん………もっと上手く芝居しろよ?」
「ここの教会は俺が出る頃には信者がいなくなり閉鎖されてんだよ!」
ギクッ!
(((そ、そんな話しは聞いて無い〜っ)))
………かつてこの町にはカトリックの一団が居を構えていた。
だが侵略者から逃れる為彼らは散り散りとなる。
付近に田畑を持っていた昔からの農村部の地元民らは侵略者達が一掃されると避難先から帰宅し、再び細々と暮らし始めた。
が、一度この町を離れた教団の人々は二度と戻って来る事はなかったのだ…。
「俺はな、修行しながら自分が成長するのを待ち、成長してからはまだアチコチに残存している侵略者達を潰して回ってたんだよ!」
「…それ、ホントですか?」
「何だよ、それなら…。」
「では、もしやアナタは…?」
剣護からの正直な声を耳にした途端、疑いの目で見ていた早理華達の態度が変わった。
「な、何だよ?」
「いえ…あなたがそういう方なら私達も安心できます。」
「じゃあ早理華ちゃん、聖姫ちゃん、私達についても喋っちゃう?」
「う〜ん、それはちょっと…。」
「そうですね、まだ早いというか…。」
「何だ?オマエらヤッパリ並の人間じゃないのか?」
「ん~~と…ではヒントです♪」
「この教会…孤児院の身辺で侵略者の残党を見かけましたか?」
「…そういやあ、見なかったか…。」
と、その時。
ダンダン!
『ネーチャン達いるかあっ?!』
剣護は面倒臭そうに言った。
「なんだ?ガラの悪そうな声がするな。」
早理華も心底嫌そうだ。
「…また来たんですか、やれやれ。」
「また?またとは何だ一体?」
「…えーと、借金取り、です。」
タハハと苦笑いする久里亜。
「借金取りぃ?」
剣護は呆れた。
だが、孤児院の運営もタダでは出来ないのは一般的にも理解できる。
「キミらを派遣したという教会本部からの金の支援は無かったのか?」
「一応あるんですが…教会の修繕費と孤児院の修繕費とで無くなっちゃいまして…。」
「そんで孤児院の運営費と自分達の食費を稼ぐため園長は出稼ぎに…。」
「…で?キミらの給料は?」
「今、外で怒鳴ってる方達から借りてまして…。」
「て、孤児院じゃなくてオマエらの借金かい?!」
「…エヘヘへ…剣護さ〜ん、利息だけでも助けてくれませんかぁ?」
早理華は両手を合わせてウインクした。
剣護は思った。
一体どれだけ借りたんだ?
そもそも何に使ったんだ?!と。
意外なな事実が判明!
何とシスター達は借金取りから取り立てられていた!
借りた金の行方次第では不良シスター認定もあり得たりして?