それでもいいと思った。
思うように伝えられなくても、
言いたいときに言葉がつっかえてしまっても、
それでもよかった。
続かない会話に目を伏せた
交わることのない視線に目を逸らした
触れられないその手がもどかしかった
それでもいいと思った。
月が綺麗、そんなこと言えなかった
送り文のない手紙に涙した
時の流れに願っても叶わなかった
それでもよかった。
夢で君が笑っていて良かった
朝の微睡みに肩を寄せ、
春の綻びを映す瞳は澄んでいた
愛の匙の振れ幅が心を揺らした
それでも、隣が心地良かった。
それでも、あなたの隣を望んだ。
あなたの背中が好きだった。
口下手な君が可愛かった。
君の幸せに少しでも
自分が含まれていたかった。
そうでありたいと思った。
君が紡ぐ言葉が
あなたの隣が
一時の幸せが
自分を生かしていた。
恋も何も分からないけれど、
今だけはこの優越感に浸っていたい。
今はそれだけでいい。