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強すぎるおねえちゃんと一緒!~立てば剣聖 振るうは魔剣 共に行くのは俺の姉~  作者: ランドリ
第一部 力ある者は縛られない 第一章 戦友は強すぎる村娘
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【守護宣言】傭兵の姉

 簡易扉を押し開けば、そこは壁に所狭しと依頼が張り出された傭兵ギルドだ。値踏みするような客の視線がこちらに集中する。


 ――見ない顔だな、女連れ? 恋人か?

 ――恋人同伴だなんて、小洒落た野郎だぜ!

 ――羨むな、勝ち取れ戦場はいくらでもあるぞ?

 ――? 似たにおいがするナ家族かナ?


 こちらを見て話しだす戦士たちに気圧されて、一歩目が踏み出せない……。


 すると、おねえちゃんが前に出て微笑んで手を引いてくれた。


「こっちだよ〜! 傭兵になるなら、受付で登録して傭兵ギルド証を発行してもらわないと!」


 勇気を出して前に踏み出す!受付の人に傭兵になりに来たことを伝える。


「傭兵になりたいんですけど、受け付けてもらえますか?」


 受付の人が俺の横を見て問うてくる。


「そちらの方とはどういったご関係ですか? ご紹介でしたら追加手続きがあります」


 その問いに、おねえちゃんがドヤ顔で大きな胸を張って答えた。


「この子のおねえちゃんです! 心配で守りに来ました! 私も傭兵になります!」


 受付の人が固まり、自分の顔が真っ赤に染まるのを感じる!

 

 周囲の傭兵たちは……?


 ――恋人じゃなくて姉かよ! 親近感沸くな! おい!

 ――守るためか。良い指針だ。

 ――身近なものこそ守るのが戦士よ!

 ――家族愛なんだナ! 懐かしいんだナ!


 以外と好意的だ!?


 こんな昼の時間に酒を飲んでるので変な人たちだと思ったら、良い人たちだったのかもしれない。


 現金すぎる俺は傭兵ギルドの酔っぱらいさん達に怖さだけじゃなくて親近感も感じていると、気を取り直した受付の人に声をかけられる。


「親族の方のご紹介は受け付けていないので、通常の手続きをいたします」


 「はい」と答えれば、調べた通りの説明が続く。


「魔道具の事はご存じですか? 当ギルドにはレベルを測る魔道具レベルチェッカーがあります」


 机の上に白い手のひらが描かれた板が置かれる。


「当ギルドは強さを分かりやすくするため、レベルによる階級制を敷いています。手を乗せてみてください」


 勧められて手のひらの表示に手を置くと画面に初士と出る。


 それを見た受付の人に「初士用の冊子です」と渡される。


 渡された冊子を読むと……。


 ――――

 初士


 ・レベルとは強さの段階のことで、強敵に勝つこと、たくさんの敵に勝つこと、これらを繰り返すことで高まります。

 ・初士は最初のレベル、レベル1です。

 ・初士だけは最初の成長適性が不明で危険なので魔力の制御含む訓練で成ります。

 ・数字以外に呼び方があるのは、魔道具の原本となったものに表示されていたからです。

 ・この階級によっては受けられない仕事もあるので頻繁に更新することをお勧めします。

 

 ――――


 冊子を読み終わると受付の人が銅板を出す。


 ハンマーと文字の飛び出た木の板と引っ込んだ木の板で銅板に初士と打ち付けて渡してくれる。


 おねえちゃんも横から手を置くと初士と出る。


「戦士の一歩目ですが……戦士……?」


 お気に入りの白いワンピースを着てサンダルを履いたまさに村娘の恰好で、どや顔のおねえちゃんが胸を張る。


 腰には家に置いてあった鉈がさしてある!?


 門から驚きっぱなしでおねえちゃんの恰好を見てなかった。


 村の外でそんな軽装だったの……。


 ちなみに俺は、皮製の装備で全身を包み背には色々入った背嚢、ナイフを腰に挿している。この装備は村で必死にお金を集めて買ったのだ。


 背が低いが、見た目だけは立派な黒髪黒目の傭兵である。


 ……背は低いが。


 鉈を持つおねえちゃんを見てると、村に魔物が出た時のことが思い出される。


#####


 あれは一年前……俺が十四歳、おねえちゃんが十六歳の時。案外最近のことだから鮮明に覚えている。


 俺が装備をガッチリ整えた理由でもある。


 カンカンカンカンと警戒の鐘が鳴らされている。


 四回だからモンスターだ!

 村の中心にある大きな建物である共用倉庫に逃げないと!


 ボロい木造の我が家に居た俺は、薪を細かく割っていて手に鉈を持ったままのおねえちゃんと一緒に逃げる為、開けっ放しの勝手口を見る。


 しかし、勝手口には近づいて来る影が居た。


 緊張に汗を流し、じっと勝手口を見つめると姿が見えてきた。


 モンスターだ!


 モンスターもこちらを見つけたのか、手に持つ棍棒を振り回しながら家の中へ突っ込んでくる。


 突っ込んできたのは小鬼と呼ばれるモンスターで、大きさは俺よりも小さいが凶器を振り回すその姿は恐ろしい。


 たかが棍棒と言ってバカには出来ない。


 当たりどころが悪ければ……。

 自らの悪い想像に、俺の体が勝手に震えだす。

 逃げなければならないのに、体が言うことを聞かない!


 気がつけばすぐ傍に、その姿があって……。


「アアアア!」


「ほほいっと」「アッ!?」


 俺が恐怖してる間に、ゆらりと前に出てきたおねえちゃんが鉈で棍棒を絡め取り、子鬼の指の一部を叩き切りながら棍棒を叩き落とす。


「それ~」「ッ!!」


 返す刃で叩き落とした棍棒に追随し、下へ伸び切った腕に沿うように首まで一閃、スポンと魔物の首は飛んでいく。


「わわ!」

「ええ!?」


 俺達は血の噴水を浴びて体中真っ赤だ。


 ……噂のレベルアップで、おねえちゃんと俺の体が光輝く。



 血を浴びて嫌そうな顔をしているおねえちゃんが鉈についた血を小鬼の死体で拭いながら、のほほんと感想を言う。


「汚いけど、これか〜んたん! 薪よりやわらかいよ?」


 俺を安心させようと微笑むおねえちゃんに見惚れてしまう。


「おねえちゃん、すごいや……」


 小鬼の死体、血と落ちた指すら匂いと共に消えてドロップの綺麗な布だけが残された。


 今おねえちゃんが着ている服の材料だ。

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