【周辺整備】重機の姉(2)
「もう小屋の拡張は終わったから、これ以上作らなくて良いのだ」
心配事も片付いたし十分に休めたので。休憩は終わりにして新たな作業に取りかかろうとしたところ、両手を頭上で振りながらやってきたエテルナから作業の終了を告げられた。流れ作業だったこともあり、思ったよりたくさん作れていたらしい。
「は~い。皆お疲れ様~!」
その言葉を受けたおねえちゃんは持ってきていた丸太を隅に置き、即席の椅子にして座った。切り替えが早いな!?
「あれっぽっちで足りたん? 少なくない?」
「抜かり無く、壊れたとき用の予備も用意できたのだ。一棟だけだし、こんなものなのだ」
「ほーん。お疲れさん」
疑問の声を上げた壁作成監督アルテも現場監督エテルナの説明に納得して、おねえちゃんの隣に座り、懐から取り出した干し肉をかじり始めた。
言われてみれば、森の拠点は二回りほど大きくなり、家と言っても良い程度の大きさになっていた。オマケにロープで周囲の木にガッチリと固定されている。アレなら近くの川が急に増水しても、そう簡単には流されたりしないだろう。
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建物が何とかなったので、次は周囲を囲っていた塀や堀を見に来たのだが……。
俺達の整備した拠点周辺はすっかり荒れ果てていた。
塀は新しく生えた木のせいで傾き、堀は見事に埋まっている。
木も地面もダンジョンの一部なので、元に戻ってしまうのは仕方が無いのだろうが、これは困ったぞ。
「なるほどね。……塀を作り直すわ」
「ローズ。また壊れないか?」
「考えがあるから大丈夫。チェルシー丸太を持ってきて」
「わかったよローズゥ!」
自信ありげなローズの指示で俺達は行動を開始する。
「クロ、チェルシーが丸太を持ってくるまでに下準備をしておきましょ? まずは……ここと、そこに木材を突き刺して」
「了解だ。ふん! はあ! ……これで良いのか?」
言われるがままに先ほどの作業で余った木材二本を地面に突き刺していく。
俺も強くなったものだ。村に住んでいた頃は、こんな事が出来るようになるとは考えたこともなかった。
「そうそう。良い感じ、それ! よしっと!」
腕を使って何やら確認していたローズも同じように木材を地面に突き刺している。
お互いに外見は村に居た頃と変わらないのに、明らかに異常な力だ。レベルというのはとんでもないモノだなと、改めて思う。
「持ってきたよ~」
「助かるわチェルシー。この地面に突き刺さった木材の間に一本ずつ積んでくれる?」
「わかったよ~」
まあ、俺のおねえちゃんと比べれば誤差だな。
おねえちゃんは両手に持った丸太を器用に使い、大量の丸太をまとめて持ってきていた。
スキルは常識外れのことを起こすとは聞いているけれど、物理法則が息をしていない。あれに比べれば、ちょっと地面に木材を突き刺せる程度。大した事じゃ無い。
指示を受けたおねえちゃんが俺達の突き刺した木材の間に丸太を差し込んでいくと、その場に丸太の壁ができあがった。
何というか……無茶苦茶だな。
「大味なくらいがちょうど良いわ」
「ちょうど良いなら、良いね~!」
俺の表情から内心を読み取ったらしいローズの言葉に、おねえちゃんも楽しそうに同意している。
そんな調子で小屋周辺はとんでもない速度で要塞化されていった。
これで下手な魔物程度なら寄せ付けないだろう