【法律違反】心配の姉
更新が遅れてしまい申し訳ない。
ここからは不定期となります。
車内が揺れているということは魔導車は動いているのだろうか。
ここにいないのはアルテだけなので、運転しているのは彼女という事になるが……。
――少し不安だ。
ようやく俺の視線に気が付いたらしいシャルロットは、見られているのを気にもせず。こちらに長い青髪を揺らしながら大股で近づいてくる。足元の寝間着らしきものを拾うことなくお構いなしだ。
ベッドに座る俺の前まで来た彼女は、胸を強調するように腕を組み堂々とした様子で立っている。
――恥辱心は無いのか!?
そんなことを思っていると、こちらを灰色の目でのぞき込みながら青い口紅の彩る口元に指を当てた彼女が警告してくる。
「クロさん、戦場でひどい物を見た兵士の顔をしていますわ。休んだ方がよろしくてよ」
「そんなことは……「休んでおきなさい」
「ない」と答えようとしたら、赤い目を鋭くさせたローズに遮られる。いつの間にか、俺の近くまで来ていたらしい。
最近は一緒に寝ているからかあまり気にならなかったが、彼女が身に纏っているのは赤いネグリジェだけである。よく考えると、下着と大差ない格好だ。
もしかするとシャルロットは、ローズに合わせているだけなのかもしれない。
「学園で同室だった私も、悪夢を見る度に同じ事を言われていたの。無視した結果が片腕を失う事故よ。ここまでスケジュールを詰めすぎていたし、多少休んでも問題は無いわ」
「クロ〜、休もうね〜」
逃がさないとばかりに両手で俺の肩を掴んだローズは、怖いことを言ってくる。
そんな彼女に肩を押されると、なんの抵抗もできずにベッドに逆戻りさせられた。更には、ちょっと楽しげなおねえちゃんに抑えられれば、身動き一つ取れない。どうやら思ったよりも俺は疲れていたらしい。
「兵士の調子を見るのは戦闘貴族の嗜みですわ」
「貴族の嗜みは良いけれど、シャルロットはガルト王国の法律について復習しましょう。今回貴方が違反した法律は?」
「……十メトル以上の飛行は、特別な許可が無ければ禁止ですわ」
胸を張って自信満々な様子のシャルロットだったが、ローズが釘を刺すと目に見えて消沈した。確かにあの時、かなりの高空を飛んでいた。ガルト王国で高く飛ばないのは、空を飛ぶ者にとって基礎的な事だ。これを破ってしまうと、問答無用で撃墜されても文句は言えない。
――ローズを止めるのに夢中で、頭から飛んでしまったのだろうか?
ガルト王国では飛行が法で禁止されている。
何故禁止されているのかといえば、ドラゴンを呼び寄せるのと同じだからである。ドラゴンは空飛ぶ物体に引き寄せられてしまう性質を持っているのだ。水中を泳ぐウォータードラゴンパピーも引き寄せられるので、大河の上を飛ぶのも危険だと聞く。迷惑な連中である。
「よろしい。この周辺の領地化申請は済ませてあるし、今回は特別な許可をしてあったことにするわ。領地拡大のための特別爆撃といったところね」
「助かりますわ。戦う相手の居ない祖国へ強制送還だなんて、今さら耐えられませんもの」
ローズの言葉にシャルロットは安心したように胸をなで下ろした。
――特別許可ってなんだろうか?
聞き慣れない言葉に興味が沸いたので詳しく聞くために体を起こそうとしたら、肩を押さえられてしまう。
「おねえちゃん?」
「今日は休もうね?」
「でも……」
「休もうね~」
おねえちゃんの腰を掴んで対抗するが、力では残念ながら勝てない上、マウントポジションを取られているのでどうにもならない。
俺のささやかな抵抗は軽々と鎮圧されてトドメとばかりに、のし掛かられてしまった。
「特別許可については、また今度話すわ。シャルロット、私はスケジュールの調整をするために一時離れるから、クロが動かないように押さえておいて」
「分かりましたわ。チェルシーさん、よろしくお願いしますね。格闘術は一通り修めています。クロさん、レベル差があっても遅れは取りませんわ」
「よろしくね~」
「何をする!?」
ベッドに上がってきたお嬢様は、手をわしゃわしゃさせながら近づいてくる。下着姿のまま!
進退窮まった俺は、気になったことを最後に聞いてみた。起きてからずっと謎だったのだ。
「……ところで、どうして下着姿なんだ?」
「皆さんが薄着なので、合わせてみましたの。私、寝るときは魔力制御を助けるために厚着ですので。学園では合流した者達に合わせた方が良いと教わりましたわ」
「そうなのか」
「そうなのですわ。では、失礼して」
どうやらお嬢様もローズと同じく、アテナ学園で妙な常識を習得しているらしい。
その後起こったことは、あまり話したくない。
シャルロットの技をおねえちゃんが真似た結果、ローズの塗り薬の出番が有ったといえば、何が起こったか伝わるだろうか。
天国だが地獄だった……。




