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強すぎるおねえちゃんと一緒!~立てば剣聖 振るうは魔剣 共に行くのは俺の姉~  作者: ランドリ
第一部 力ある者は縛られない 第一章 戦友は強すぎる村娘
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【剣閃乙女】最強の姉

読んでくださり、ありがとうございます。

よろしくお願いします。

 通路の真ん中に俺のおねえちゃんが立っている。

 レンガ造りの通路は松明に照らされており、一緒に照らされている少し振り返って見せるおねえちゃんの顔は、とても頼もしい。


 黒リボンで抑えられた桃髪の間から見える表情は、ここがモンスター湧き出すダンジョンだというのに涼しげで自然体、口の端は楽し気に上げられていて大きな緑の目は、らんらんと輝いている。


 手に持つのは古びた鉈一本のみで、着ているのは白のワンピースにサンダルという軽く散策にでも出てきたような服装だというのに。


 ここは毛皮と運が良ければ剣がドロップする定番のダンジョンである。

 俺の集めた情報によると、長く存在するダンジョンは無数のトライアンドエラーによって、人間という生き物の長所を知り尽くしているために危険だ。


 定番のダンジョンということは、長く存在しているので同時に危険ということだ。


 例えば、通路は人が一人立つのがやっとの広さで、松明も少なくて遠くまでは見渡せない。

 これらは恐らく人間の長所を潰すためにダンジョンが作り出した危険な環境だ。


 考えている内に複数の足音がこちらに近づいてくる。


 ――二体……いや、三体ほどいるのだろうか?


 近づいてきたモノが松明の光に照らされる。


 その姿は剣を持った二足歩行の犬だ。


 見た目通りの嗅覚で俺達をみつけたのだろう。


 俺の集めた情報によると、奴らはコボルトという種類のモンスターだ。

 モンスターというのはダンジョンの生み出した殺人端末なのだが……。

 戦いが始まるので、そちらに集中しよう。


 前に出ても狭くて邪魔になると考えた俺は、戦いの成り行きをしっかりと見守る。


 様子を見ての援護狙いだ。


「ワン!」

「とう!」


 コボルトが手に持つ剣で突きを仕掛ければ、おねえちゃんは鉈を振りかぶりつつ下がり回避し、狙い澄ました鉈の背で差し出す形になったコボルトの剣を叩き落とした。


 拾おうとするコボルトの手が床に伸びる。


「えいえい!」

「キャン!」


 その隙を美しい緑の目で見逃さないおねえちゃんは、鉈を構えて連撃を繰り出し下げられた手と流れるようにもう片方も斬り飛ばした。


 凄い連撃だが……。


「むぅ……」


 人間と言う生命の短所も知るダンジョンは、モンスターに人間の血とそっくりな血を流させる。


 返り血が気になる為か、流石のおねえちゃんも嫌そうな顔をしている。人間の嫌がることは、積極的にしてくるのがダンジョンだ。

 それを付け入るスキと見たコボルト達が一斉に斬りかかってきたけど、おねえちゃんの鉈による一閃で纏めて弾き返された。


「クゥーン……」


 両手を落とされたコボルトがもがいている。


「グルルルル!」

「クロ〜。倒しておいて〜」


 振り返ったおねえちゃんは俺に声を掛けながら、手に持つ鉈で残り二匹をけん制している。

 喉を鳴らし手のナイフと、コボルトとを見比べた。哀れっぽい動きをするが、情報を知っていると……。


「キャン!」


 慎重にナイフを一回二回と突きこんでいくと、姿が消えて血も一瞬で消えていく。 それが居た痕跡は、消えた瞬間に現れた剣だけが残された。


 剣が床に落ちて金属音が響く、レアドロップだ!


 モンスターは倒すとドロップと言われる品を落として消えるのだが、中でも装備品はレアドロップに分類される貴重品だ。


 ――とても幸先が良い!


「クロ! おめでと〜やったね!」


 こちらを心配して頻繁に見ていたおねえちゃんが、突然の幸運に戦闘中なのに鉈を持ったままバンザイして、こちらを向いて微笑み祝ってくれる。


 それに合わせて揺れる胸に、手を合わせて拝みたい衝動に駆られるが鋼の理性で抑えた。


 バンザイで空いた柔らかそうな腹を狙い切りかかったコボルト。


「ワオン!」

「とう!」


 だがバンザイはフェイントである。


 素早く振り返ったおねえちゃん渾身の振り下ろしに、コボルトは剣を振り上げたまま頭をカチ割られてしまった。


「ッガ!」


 激しい動きに丈の短い白ワンピースから覗く白い太股も眩しい。


 返り血が飛び跳ねるけど、おねえちゃんは慣れたみたいで表情に出さない。


 転がる剣とコボルトは消えていく。


 ――血に濡れながら、真剣に戦うその表情は凛々しくて目が離せない!


「おねえちゃん、すごいよ……!」


 惨劇さんげきに怯え、こちらに背を向けて逃げる三匹目のコボルト。


「キャンキャン!」

「えい!」


 頭割られ消えゆくコボルトと運命を共にする予定の半透明の剣が、鉈で跳ね上げられ回転しながら飛んでいき、逃げる背の真ん中に突き刺さって最後の戦果を挙げた。


 致命傷だったのか逃げようとしたコボルトは消えていく。


 追い詰められるとコボルト達は哀れな動きをするが、見逃すとあとから不意打ちを仕掛けてくるらしい。嫌らしいモンスターだ。


 二匹が消えたあとに残ったのは、ドロップの毛皮が2枚転がるのみ。


「そんなことないよ〜」


 表情を和らげながら、おねえちゃんがドロップした毛皮2つを拾って手渡してくれた。毛皮を背嚢に突っ込んだ俺は、代わりに今ドロップした剣を差し出す。


「おねえちゃん、コレ使って!」


 最初の剣はおねえちゃんにプレゼントだ!

 緩められた緑の目がもっと緩みとろけた。


「良いの~? クロからのプレゼントだ!」


 感極まったおねえちゃんに抱きしめられる。

 俺は皮鎧を着てるのに、色々柔らかく感じるのは何故だろうか?

 

 ……。


 渡された使い古しの鉈は、かなり傷んでいたみたいだ。

 危ないところだったかもしれない。

 家でも散々使っていた鉈を背嚢に突っ込む。


 役に立てないから、荷物持ちくらいはしないと!


 早くも、また複数の影が見える。このダンジョンは敵が多いみたいだ。


 もしも一人で来たら、命からがら逃げ出していただろう。


 前回の焼き直しのように突出した一匹が、剣を前に突き出して突っ込んでくる。


「ワン!」

「えいやっ」


 対するおねえちゃんは両手持ちにした剣で、突き出された剣を強烈に跳ね上げた。


 ――金属のたわむ音が鳴り響く!


「そぉれっ!」


 おねえちゃんは跳ね上がった剣に追随した犬面の両腕を均整の取れた体を捻らせての回転切りでまとめて切り離してしまう。


 ――凄まじい連撃だ!


「キャイーン!」


 素早い連撃に残り二匹のコボルト達は様子を見ている。どうやらスキを見つけられなかったみたいだ。


 流れる血の匂いに俺も慣れてきた。


「凄い剣ありがとう! 任せるからね」


 ――凄いのはおねえちゃんの剣閃だと思う!


 拾ったときの感じからして普通の剣だ。普通の剣でもおねえちゃんが使えば名剣みたいな活躍をしている。


 さて俺の仕事をしないと……。


 おねえちゃんが残り二匹の牽制をしている間に、新品で綺麗な刀身のナイフを見つめ、任された犬面を慎重にナイフで一刺し、もう一刺しする。


「ッガ!」


 消えるコボルトの居た場所には……。


もし気になっていただけたら、ブックマークをよろしくお願いします。

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