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せめて人間と人間の姿で初めてを

私は今日も家から出るつもりはない。だって怖いから。

もちろん明日も明後日も引きこもる。だって怖いから。


何が怖いって?


「異世界転生」だ。


-----


私はそれなりにモテた美少女だ。

顔面偏差値の高さに気が付いたのは小学校の頃。

中学のときには自分なりに考えた美少女らしい振る舞いで男子たちの目を奪い、何度も告白された。

高校のときには無双状態で、俗にいう学園のマドンナだった。

途中から告白されることよりも告白を断ることを楽しみに学園生活を送る女豹と化していた。


そんな美少女の私が高校の男子なんか付き合うはずもなく、高嶺の花として3年間を送った。

そして私はそれなりに勉強し、それなりに偏差値の高い大学に合格し、まさに勝ち組への階段を登りつめる...はずだった。


高校の卒業式も迫る3月のある日、暇を持て余した私はアニメを見ることにした。

世間で流行っているらしい「異世界転生」するアニメだった。


現実では冴えない男子が異世界に転生された途端、見栄えもよくなり巨乳の女子たちに囲まれ勇者として敵を倒していく。そんなアニメ。

正直、とんでもなくくだらないアニメだと感じた。

現実には居場所がない冴えないオタクが妄想しそうな気持ちの悪い物語という感想しか思いつかない。

もちろん感情移入などできず、すぐに見るのをやめた。


くだらないアニメが流行っている現実にどこか苛立った私は、そのストレスを食欲で昇華させることにした。

部屋着から私服に着替え玄関で靴を履き外へ出ようとした途端、視界が暗転した。

身体が浮いているような押しつぶされているような、今までに感じたことのない不思議な感覚。

そして地面に落ちた。

ただ、尋常じゃなく臭い。明らかに玄関先ではない。

ゆっくりと目を開けると...私は柵に囲まれた場所にいた。

そして、周りには豚がたくさんいる。


私はすぐに気が付いた。

ここは養豚場だ。そりゃ臭いだろう。


手には暖かく柔らかい感触。

ラッキースケベなんていいもんじゃない。とても嫌な感触だ。


恐る恐る手を見ると、豚足だった。

もう少し詳しく言うと、豚足に豚のうんこがたっぷりついている。

ただ今はうんこなんてどうでもいい。


豚足。

男子たちが手を繋ごうと必死になっていた私の可愛くて小さなお手手が豚足になっている。

もう片方の手も豚足だ。


よく見ると足も豚足だ。

驚いて立ち上がろうとするも、うまく立てなかった。

二足歩行がフィットする身体ということだろう。


私は完全に豚になっていた。


悲観する間もなく他の豚が私の背中に手をかけてきた。

そして何かを押し付けてくる。


そうか。交尾しようとしてるんだ。

美少女だった私は豚になっても可愛いらしい。

そして、ここがオスの柵だということもわかった。


ただ、まだ処女の私が豚の姿で豚と交尾するわけにはいかない。

絶対にそれだけはいけない。

好きな人じゃなくてもいいから人間と人間の姿で初めてを迎えたい。


逃げようと力を入れるが交尾がしたいオス豚の力は凄まじく、なかなか逃げることができない。


いやでも、これでも私は元人間だ。

そのへんの豚とは違い、知恵がある。

私はオス豚の股間を後ろ足で蹴り、なんとか脱出に成功した。


今まで気が付かなかったが、私のすぐ上に黒い穴が浮かんでいる。

信じられないが、この穴と玄関先が繋がっているのだろう。


私はなんとかその穴に入り、元の世界へ戻ることができた。


急いで手を見ると、豚のうんこがべったりとついた可愛らしい人間のお手手に戻っていた。


どうやら私の家の玄関と異世界の養豚場が繋がってしまったようだ。

そして、異世界にいくと私はメス豚になり、オス豚に犯される運命になるらしい。


私は高校の卒業式も出ず、大学の入学も断り、異世界転生しないために引きこもることを決めた。

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