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那朗高校特殊放送部!

那朗高校特殊放送部~それぞれのクリスマス・白金、夏輝編~

作者: 那朗高校特殊放送部

筆者:白金春人


「今度はあっちのショップね!確かクリスマス限定の…」


古典的なクリスマスソングが流れる中、先輩の明るい声が響く。

今僕は大きなショッピングモールに来ています。


しかも、先輩の女子と!


クリスマスイブに、女子とショッピングモールですよ!

絶対誰もが羨むシチュエーションだと思うんですよ!









「いやぁー、悪いねハル君!クリスマスは限定商品が多くてねー」

「別にいいですよ…?そんな重くないですし」


いやまぁ、荷物持ちなんですけどね?



冬らしく、ダッフルコートに身を包んだ夏輝先輩は、いつもの奔放なスタイルと違って少し大人っぽい感じがするような…

それでもトレードマークなのか、ハートのチョーカーは外してないみたいです。


「って訳で、さっさと次の店に行くよー!」


なんて先輩は言いながら、今まで買ってきた物の袋を僕に預けて、

先輩はショッピングモールの店に走っていくのでした。

やっぱり中身はいつもの夏輝先輩みたいですね。


僕は荷物を傷つけないようにゆっくり行くとしましょうか…


「ごめーん!!これおひとり様一箱までだったからハル君もはやく来てー!!」


それも叶わなそうです…

僕は早足で行列に向かっていくことにしました。


「ちゃんと買えたら後で一個あげるから!」



------------------------------



「うーん!買った買った!」


先輩は息一つ切らさず、背伸びをしながら歩いてる。

一通りの物を買えたのか、走るのを止めて、モール内をのんびりと歩く夏輝先輩と僕。

ぶっちゃけ何を買うのかも聞かされて無いので、どれだけ付き合わされるのか不安だったけど、なんとか両手で運べる量で済んだようです。


結局最後に先輩が買ったやつ以外は、全部僕が荷物を持ってるんですけどね!



「あ、そうそう」


突然、先輩が思いついたように僕の方に振り向いてきます。


「ちょっとそれ貸して?」


と言いながら僕が持ってた袋の内一つを取って、中を漁りだしました。

貸してというか、元々先輩の物ですけどね。


「ハル君にはこれをあげる!」


そう言いながら袋から何かを取り出してきました。

よく見るとそれはネックレスで、桜の装飾がなされています。

ネックレスとはいっても、鎖も太目かつカッコいいデザインで、

男子でも付けられそうな感じです。


「え、いいんですか?」

「これはハル君にあげるために買ったからね!」


先輩の女子からのプレゼントなんて、嬉しくない訳無いんですが、

白い歯を見せながら笑う先輩は、心から純粋な表情をしています。

まぁ、どう見ても恋愛的なアレコレではなさそうです。


「でもこれ、結構高いんじゃ…」

「今日一日付き合ってもらったお礼って事で」

「じゃ、じゃあ、ありがたく貰っておきますね!」

「あとで付けた写真自撮りして送ってね!」

「ぜ、善処します…」


そうは言ったものの、やらない訳にもいけませんし、

自撮りを送る事は半ば強制されたようなものでしょう。

…あとでやり方調べておこう。


「後は―、あれだね」


夏輝先輩はまだ何か考えているみたいです。


「ちょっとここで待ってて?すぐ戻るから!」

「え?ちょ、何の用事ですか!?」

「ホント、すぐ戻るから!」


なんて言いながら、先輩はすぐ近くの脇に逸れる通路に走って消えて行ってしまった。

…本当に読めない先輩というかなんというか…


と思っていたけれど、よく見れば通路の所には、トイレのマークが。


「あー、なるほど」


と独り言を漏らす。

流石に男子相手にトイレ行ってくる、なんて言えませんよね。


ここは何も聞かずに、静かに待ってあげるのがジェントルメンの対応ですね!



1人になって周囲を眺めてみると、やっぱり周囲はカップルか、もしくは中のよさそうな女性グループばかり。

僕一人だとやっぱり浮いてるような気はしますね…

でも山の様にファンシーな紙袋持ってるし、彼女を待つ彼氏くらいには見られてるかも?


あーでも、夏輝先輩が彼女なのは色々振り回されまくって大変そうだなぁ…

そんな妄想をしてたら、


「ゴメンゴメン、ハル君待った?」


なんて待ち合わせのテンプレみたいな聞きなれた声がするので、トイレのあった通路の方を見ると…


「っっ!!!?」


思わず吹き出す。


だってですよ?

まさか夏輝先輩、このショッピングモールのど真ん中でサンタ衣装に着替えてくるなんて思わないじゃないですか!?


「どーよハル君!さっき買ってきた奴だよ!」

「い、今着替えて来たんですか…?」


やっぱり読めない人だな!?


流石に去年のセクシーサンタみたいな代物ではなく、そこそこにオシャレな感じのワンピースのようなサンタ服。

でも季節不相応なミニスカートだったりはしますけど。そこはやっぱり夏輝先輩っぽいですね。

目の前で見せつけるようにスカートの裾を持ってフリフリしてます。


「その…なんというか、夏輝先輩らしいですね…」

「それ褒め言葉?」

「そ、そうですよ!?なんだかんだ一番お洒落に気を使ってるの夏輝先輩だと思いますし!」

「あはははは、それは嬉しいね!」


怪しまれそうになったものの、

なんとか上機嫌になってくれた夏輝先輩。


「じゃあお腹も空いたし、どっか食べに行こうか」

「その格好でてすか!?」

「そうだよ?せっかくのクリスマスだしね!」

「は、はぁ…」


ここ学食とかじゃなくてショッピングモールなんですけど!?

大丈夫なんです!?


挿絵(By みてみん)



------------------------------




「こことかどう?」

「そ、そうですね…ちょっとお高めな感じしません?」

「うーん、確かに。今日はもう沢山使っちゃったしなぁー」


夕飯を食べる為に、ショッピングモールの飲食コーナーにやって来た僕達。

ここに来るまでも、来てからも、何となく周囲の視線が気になってきます。

それもこれも、夏輝先輩がサンタのコスプレのままモール内を歩いてるからです。


視線の殆どは夏輝先輩自体に向いてるわけですが、その隣で歩いてる僕にも当然刺さる訳です。


このショッピングモールコスプレOKなのかな…のわりには先輩以外にコスプレしてる人は見ませんし、

もしかしてこれ無許可でやってます?


その当人は全く気にしてる様子は無いですけど。



「じゃあここにしようか」


先輩が"赤虎軒"と書かれたラーメン屋の前に来るや否や、

もうそこに決定する勢いで聞いてきました。


「え?あ、いいですけ」「二人お願いしまーす」


そして僕が返事を言い切るより早く店内に飛び込んでいくサンタ先輩。

別に良いですけどね?


夏輝先輩に振り回されない人って居るんでしょうか…?



------------------------------



店内は外のクリスマスソングではなく、最近流行りの曲が流れています。


「あ、これPeacE.の曲だね」

「ピースって確か本庄先輩が所属してるアイドルですよね」


席に案内されている最中、夏輝先輩と店内で流れている曲のアイドルについて話していました。

うち那朗高校には特殊な生徒が多いっていうのはもう各所で言われてる事ですけど、

まさか今日本でトップクラスのアイドルが一個上の先輩に居るなんて思いませんよね。


「そうだよ?まー、ちょいちょい話す感じだね!」

「そうなんですか?先輩仲いいんですね」

「そだねー、衣装のお披露目配信にも来てくれたしね」


先輩は仲いいみたいですが、僕はというと全くそんな事はありません。

性別も学年も違うと、話すどころか見る機会もぶっちゃけ少ないです。

精々文化祭の出し物でちょっと見た位かな…?

もうすぐ卒業して居なくなっちゃいますし、一回くらい話しかけてみようかな…


「そう言えば前にステージ衣装の構造とか見せてもらった事あったなー」

「やっぱりそう言うの気にするんですね…」

「プロの縫製って気にならない?」

「ぼ、僕はコスプレしないので何とも…」


そうこう言っているうちに、対面に座る2名用の席に案内されました。

テーブルにあるメニュー表は、メニュー名と値段だけが書かれたラミネート加工の紙が1枚。

なんともラーメン店らしい感じのメニューです。


1枚しか無いので、テーブルに置いて、2人で見れるようにします。

僕は逆向きに見る事になりますけど。


「実はここ、私がよく行く店なんだよねー」


夏輝先輩は目を煌めかせながら僕を見て言ってきます。

目がキラキラしてるのはいつもですけどね。


「へー…じゃあ何かオススメとかありますか?」

「オススメ?そうだねー」


先輩が行きつけだと言うので、オススメを聞いてみました。

このメニュー文字しか無いので全然分かんないんですよね。


先輩は表の一番頭にあるメニューを指さしながら、


「この赤虎ラーメンがオススメかなー」

「じゃあ僕もそれにしますね」


行きつけの先輩がおススメするなら大丈夫でしょう。

と僕も先輩と同じものを頼む事にしました。



料理が届く間は、先輩との雑談タイムに入ります。


「ところで先輩」

「何?ハル君」


対面に座った先輩に、少し前から気になっていたことを質問してみます。


「その格好、寒くないんですか?」


先輩はサンタの格好です。

それも、古典的なコートとかではなくミニスカートのワンピース。

首元もチョーカーがハッキリ見える位開いてるし、正直寒そうです。


店内は暖房が効いているので僕もコートを脱げるくらい暖かいですけど、

ショッピングモールの構内はそうではありません。

そんな僕の疑問に先輩はというと、


「これ意外と寒くないんだよ?」


と言いながら右手を差し出してきました。


「触ってみて?裏地がモコモコだから」


なんとなく先輩の服に触れるのは抵抗がありますけど、そこは仕方ないので、

先輩の手に直接触れないように袖に触ってみました。


「あー、確かに暖かい素材ですね」

「でしょ?安物のコスプレグッズじゃないからねー」

「しっかりとした作りの奴もあるんですね」


自分の得意分野だからか嬉しそうに語る夏輝先輩。

ただまぁ、裏地だけではどうにもならない部分もあります。


「でも、そもそものデザインがちょっと寒そうなんですよね…」

「そこはほら、オシャレの為には我慢も必要って事で」

「やっぱり寒いんですね」

「オシャレってそういうものだよ!」


先輩は格好の割にあんまり寒くなさそうな態度ですが、そう言うからには我慢はしているのでしょう。

確かに普段の制服姿の時から、スカートの短さは夏服の時と変わってませんでしたね。

流石に夏服の様にヘソ出しスタイルは無理なのかもしれませんけど。


「どうする?帰りはハル君が着てみる?」

「嫌ですよ!」

「えー?ラーメンは私と同じの頼んだのに?」

「それとこれとは別の話ですよ…」


寒い寒くない以前にそれ女性用の衣装じゃないですか…



「お待たせしました、赤虎ラーメンです」


ツッコミを入れていたその時、店員が、ラーメンを運んできました。


「はーい!」


嬉しそうな顔をしている夏輝先輩と、僕の元に運ばれてきたのは、

スープが真っ赤に染まっているラーメン。


「え、いやあの…これですか?」

「ん?そうだよ?」

「これすっごい赤いんですけど…!?」

「そうそう。赤虎ラーメンは辛くて美味しんだよ?」


頭を抱える。

あぁ!!そうだった!夏輝先輩の好物は辛いラーメンだった!!


知らなかったわけじゃありません。部のプロフィールに書いてましたし。

ただ僕が失念していただけですね。


「大丈夫だって、そんな激辛じゃないから。ね?」


跳ね防止の紙の前掛けの付けながら先輩は言いますが、

目の前の赤々としているラーメンからはそんな気配は微塵も感じられません。


でも、食べない訳にはいかないですよね。


先輩と同じように跳ね防止の前掛けを付けます。

普段は付けないですけど、これが跳ねた時のリスクは大きそうなので今回は特別に。


「じゃあ、いただきまーす!」

「え、いただきます」


先輩が美味しそうにラーメンを啜るのを正面で見ながら、

恐る恐る麺を掴み持ち上げます。

赤いスープが絡みついて、黄色いはずの面はオレンジに染まっています。


「んー!!やっぱりこれだよね!」

「…」


意を決してそれを食べると、


「…」


最初にスープの美味しい旨みが広がって来ます。

あれ、これ意外と美味しい…?


と思った途端、


「んっ!」


激しい辛みが急に襲い掛かり、むせそうになりました。

やっぱり辛いじゃんこれ!


一口で発汗しているのを感じる程の辛み。


そしてそれを美味しそうに食べる先輩…

…も額に汗が浮いています。


「ふーっ、やっぱり辛いなぁ!」

「…辛っ」


でも少し待つと辛みが若干引いて、その後に最初の旨みとは別の美味しさがやって来ます。

あー…、なんとなく辛い物の好きな人の気持ちが分かる気もします。


でもこれを何口も食べ続けるのは大変ですね!


「どう?ハマった?」

「少しだけなら…って感じですね…」


先輩の質問にも、手放しで美味しい!とは言い切れない僕でした。




------------------------------


帰り道。


帰る時も、僕は先輩と一緒です。

荷物持ちですからね。


流石に屋外でサンタは寒かったのか、先輩は元のダッフルコートに着替えています。

あ、もちろん僕も普通の服ですよ!?

駅前のバス通りを横並びに歩いていると夏輝先輩は満足気な表情で話しかけてきます。


「ハル君今日はどうだった?」

「え、えぇ、それなりに楽しかったと思いますよ?」

「そう?良かったー。せっかくのクリスマスだし皆楽しめないと悲しいしね」

「そうですね」

「サンタ服もそのために用意したのが半分だね」

「もう半分は?」

「私の趣味かな」

「あははははは…」


帰り際に、先輩の優しさがなんとなくわかったような気がします。

記念にアクセサリーも貰いまたしね!

でも、出来ればちょっとだけでもいいから先輩も荷物は持って欲しかったなぁ…

夏輝「シトちゃんはクリスマス何してたの?」

霜月「え?あたしは道場で中学生の面倒見てたけど…?」

夏輝「えー?もっとクリスマスっぽいことしようよー」

霜月「そう言われてもな…そう言う夏輝は何してたんだ?」

夏輝「私?私はハル君とショッピングモールに行ってたよ!」

霜月「マジか…もうデートだろそれ」

夏輝「まー、私のお買い物に付き合ってもらっただけだけどね!」

霜月「そうか…(あいつも苦労してんだな)」

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