イッツ、エキストラ!
泡。
それが俺の口から出ていく。
ああ、死ぬんだ。俺はそう思った。
底へ底へ沈んでいく。口から出た泡が俺の体から生命力を奪っていく。
体が重い。
誰かに引っ張られているようだ。
底に誰かがいて俺の足を必死に引っ張っている。
黒い黒いそいつは俺の足を楽しそうに引っ張っているんだ。きっと。
重力に引っ張られているのかそれとも本当に誰かに引っ張られているのかわからないが、俺は確かに海の底へと沈んでいった。
どぷん。
俺は確かに呑まれた。
俺の周りには黒いなにかがあって俺を覆い隠すかのように俺の周りを満たしている。それはサラサラしているようなベトベトしているようなそんな不思議なもので血のようでもある。自分はこのまま消えていくのか。
俺の口からはそんな言葉が漏れた。
死にたくない。
俺はそこまで死のうと思っていなかった。つい、出来心でそんなことをやってしまったのだ。
よし、生きよう。
力を込めて立ち上がろうとする。
ズブッ。俺の足はその黒いなにかに飲み込まれていく。
立ち上がる気力を失くしたわけではない。再度、立ち上がる。俺の足は思ったよりも動いてくれた。
足を引き上げ、再度立ち上がる。だが、やはりその沼からは出られそうにない。
自分の心が折れそうになってしまった。
こんなにやっているのになぜダメなのか。俺の心は叫ぶばかり。心に活を入れる。もっとしっかりしなきゃダメだぞ。
俺の心は貧弱だった。そんなことはわかりきっていた。
だからといってダメになってしまったわけではない。
今一度力を入れる。
力は入れてくれなきゃ入らない。
もうダメだ……そう思ってもやってみないとわからない。
力を入れる。
今度は上手くいきそうだった。
沼からの脱却。俺の足は沼から抜け出せてくれた。
俺は知っていた。
この沼は自分で作った沼だ。
沼は俺が破壊する。
足に力を込めると沼を破壊できた。自分の力で破壊できたのだ。
脱出は難しい。
この沼からは抜け出せそうにない。
足に力を入れて再度壊そうとするが、それは無駄だった。
足が沼に取られて終わっただけだった。
沼。この忌々しいもの。
自分で作った記憶はないが、自分で作ったもの。破壊しなくては。
沼を再度破壊する。
壊れてくれたはいいが、今度は足がやられそうになってしまった。急いで足を修復する。
沼からの脱却。俺が目指していたもの。それが今この手の中にある。
破壊出来る。俺はそう確信していた。
沼の破壊なんて簡単な話だったのだ。
そう、元から沼なんて存在しないんだから。それはただの幻に過ぎない。幻は実在しない。幻を終わらせる。それだけで沼は破壊できる。俺は沼を終わらせる決心をつけるとただその黒い沼に向かって歩みを進めた。
沼なんて最初から無かったんだ。そう思えたのはどのタイミングか。
人間は何度でも沼に落ちる。そしてその度復活してくる。それを繰り返すのが人間である。
俺は気づいた。
沼なんて最初から無かったんだ。
沼なんて最初から無かったんだ。
沼なんて最初から無かったんだ。
終わり
そのままの意味です。