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わたあめはよく転ぶ  作者: すずき わたこ
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スイミング地獄

私は小学1年生だか、2年生だかの頃、プールに通っていた。私は泳ぐのが嫌いだった。とにかく嫌いであった。だから、異性の幼なじみと一緒に、スイミングスクールに入ることに私が勝手に決定した。

しかし、1年が過ぎた頃、私は予想通りすっかりスイミングが嫌いになっていた。かろうじて泳げるようになったのは嬉しいことだが、応用編になっていたのだ。体力のない私にとって、級が昇格するにつれて泳ぐ距離が伸びていくのは辛いことであった。

基本のけのび、クロールはマスターし、むしろ泳ぎ方はうまいと言える方であったのに、距離を伸ばしてくるのは反則ではないか?

私は、泳ぎ方が知りたかったのであって、別に長距離を泳ぎたかったわけではない。そして、気づけば一緒に入ったはずの幼なじみはいなくなり、わざわざ遠回りするバスに1人で乗ることになった。それはそれは長かった。

私は泣いた。

1人で泣いた。

この無駄に広いバスの中には私と運転手のおじいちゃんだけなのである。

むなしい。

なぜ1人でいるのだ。

次第に私はスイミングスクールに行くことに対して恐怖を覚えるようになった。それなのに、毎月のテストは来てしまうのだ。私は昇格するつもりはなかったが、しょうがなくテストを受けた。

スイミングスクールやめる3週間前のことであった。

実はこのテストを受けるとき、既に私はやめることを知っていた。やめる1か月前に申請しなければいけないらしい。

私は25mプールの残り5mでその場に立った。

少しでも私がここにいたと、痕跡を残したかった。残るわけがないのは私が1番知っていた。そのあと私はコーチに「あともうちょっと!泳いで!」

と言われたが、堂々と歩いたような気がする。

そのすぐあと、私のいた証はあえなく次の人に消されてしまった。


こんなにも嫌な思い出ではあったものの、私はこのときスイミングスクールに通っていたことを後悔していない。あのときの私が頑張ってくれたおかげで、決して得意なわけではないがある程度は泳げるようになったのだ。

そして、今も川や海で溺れたことはない。

もし、この頃の私にひと言伝えることができるなら、

『幼なじみを引き止めろ』

と、伝えたい。

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