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 人という字は、人と人とが支えあって出来ているという。

 ならば、一人ぼっちの人間はどうやって人となるのだろう。


 両親を知らない、友達を知らない、愛せる人を知らない。


「大丈夫だよ。私がいるだろう?」


 だから彼は創るしかなかった。

 そう呼べる者を、いくつもの物語から例を取り上げて、精巧に綿密に創り上げるしかなかった。


「君が死ねば、私も死ぬだろう。だから、もしその時が来たら私もきっと生まれ変わるよ。そして君と一緒に生まれよう」


 異世界への転生なんて要らない。

 彼女と一緒にいられるのなら、この地獄みたいな世界でだって生きていける。

 だからずっと一緒にいたい。何度生まれ変わっても、彼女と共に。


 そんな祈りが叶うとすれば、数多くの人々の念が起こした奇跡だろう。

 神が死に絶え、魔法の欠片も見えないこの世界で、そんなことが現実に起こるはずが無いと。


 でも神が死んだ今なら、人の想いが奇跡を起こしたっていい。

 一人の想いだけでは届かないなら、幾重にも束ねて。


 理想の逆流、空想の奔流。それは一粒の偶然。


 人々が求める唯一絶対の愛。過酷な現実の中で支え合える大切なパートナー。


 それは共有された幻想、集合的夢意式イマジナリー、アカシックフレンド:アニマ・アニムス。





「はじめまして? それとも、こんにちは?」


 アルビノ少女に、凛とした娘が微笑みかける。

 曇りなく凛々しい瞳に、優しい口元の笑み。

 視線を向けられれば、誰もがそれに見惚れてしまうだろう。


 冬の夜に瞬く星のように、遥か遠い水平線の朝焼けのように、夏の高い空のように。

 アルビノ少女は一目で心を奪われてしまった。


「ど、どうして? あなたは現実じゃなくて……」

「そうだね……推察するに、君と私は私達以外の何かからの出力先になってしまったんだと思う」

「……えっと」

「噛み砕いて言えば、君は魔法使いになったんだよ。厳密にはちょっと違うけど」


 突拍子も無い言葉に、アルビノ少女は呆然とするしかなかった。

 無理も無い。少女はいつものように理想の友達を空想して、妄想で遊んでいただけだ。

 それがいきなり目の前に、現実の存在として現れたのだから、驚きもする。


「ちょっと、夢に見てたことだけど、現実離れしすぎてて……」

「私もちょっと困惑しているよ。君が変わったというよりは、なんだか現実そのものが引っくり返ってしまったかのようだ。私が今、君とこうして現実に話せているのも不思議でしょうがない」


 それでも嬉しいものは嬉しい。二人は微笑を交わす。

 ただ向かい合うだけで、人生で最も幸福な時間だった。永遠に続けばいいと思うほどに。


「だけど、私達がすることは変わらない。私達は人生を歩まないといけない」

「……うん、そうだね」


 アルビノ少女の体が微かに震えだす。

 それを察して、凛とした娘は優しく抱き締めた。


「大丈夫、もう君は一人じゃない。だから飛べる。私達が比翼の鳥だ」


 確かな体温、柔らかで力強い感触に、アルビノ少女は身を委ねた。

 幸福を確かめるように。救いに縋るように。


 アルビノ少女は満足すると、凛とした娘から離れる。


「ずっと一緒に居てね? 私のアニマ」

「もちろんだよ、私のアカシア。ずっと一緒に決まってる」


 ささやかな魔法、ほんの些細な奇跡。

 それでも少女にとっては、また新たに羽ばたく勇気が湧くほどの幸運。


 その魔法はやがて、灰色の世界を色鮮やかな白黒で彩っていく。


 アニマとアカシア。二人の不思議な人生は、世界の変革と共に唐突に始まったのだった。

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