8th flightー雲の中へ
戦闘管制官の、雲の中に入って5秒後に急上昇、急減速しろ、という指示に、俺は耳を疑った。
ここでそんなことしたら、追いつかれて捕まるだけだ…
そう思い、行動を一瞬ためらったが、指示から2秒後には指示通りに雲の中に突入した。
「レース、ついてきてるな?」
「大丈夫です!」
「上昇かけるぞ、ナウ!」
俺はスロットルレバーを引き、エアブレーキも開いて一気に減速した。同時に機種を上げ上昇に転じた。
刹那、無線から指示が飛んだ。
『今だ!機種を下に!』
上昇したことで雲の上面を抜けていたところだった。機種を下に向けると、上昇前の俺たちのいた高度を、雲を抜けて飛んでいくバロー機とガル機が見えた。
それは、雲を巧みに利用した、オーバーシュートだった。
「追うぞ!」
俺はそう叫び、アフターバーナーに点火して、敵機目掛けて一気に急降下した。
体に強いGがかかりながら、ガル機の背後を取った。
そして…
ピーーーーーーーー
自機が敵機をロックしたことを知らせるアラームが鳴った。
「俺たちの勝ちだ」
「へへっ、アンノウンなのに自由にやっちまいましたねぇ!」
レースとそんな風に軽口を叩きながら編隊を組み直すと、ガルから共通無線周波数で呼び掛けられた。
「なんだぁお前ら、してやられたじゃねーか!」
半笑いの声でそう言い、俺たちも笑った。
4機は編隊を組んで、ライン基地に帰投した。