6th flightー高鳴る胸
高鳴る胸を抑え、エンジンを始動させた。
部隊に配属され、早8年が経つ。何度フライトを経験したかわからないが、何度やってもエンジン始動の瞬間は胸が高鳴る。
ヒイィィィィィィィン!と音を立ててエンジンが始動した。
俺はエプロンをタキシングし、滑走路に入る前にラストチャンスエリアに入った。
ここで、機の最終点検を行う。
そして俺は、管制塔に呼びかけた。
「ラインタワー、リゲル03、レディ」
すると無線から管制官のくぐもった声が聞こえてきた。
『リゲル03、ラインタワー、ウィンド、ワン・ファイブ・ゼロ、アットファイブ。
ランウェイ・ツー・ファイブ、クリアドフォーテイクオフ』
「テイクオフ」
「ツー」
リゲルとは、この204飛行隊全機のコールサインである。
管制官の許可が下りた。
俺はスロットルレバーをアフターバーナーの位置まで押し込み、ブレーキを放した。
グッとシートに押し付けられると同時に、キャノピーの外に見える景色がどんどん後ろに流れ去っていく。
数秒の滑走の後、ふわりと機体が浮いた。
次いでレースが、右後方を同様にして離陸した。
そのまま高度を7000フィートほどまで上げて、巡航速度で予定空域に向かった。
「レース、今日はガルとバローが相手だからな。かましてやろうか。」
「ですねぇ、バローはまだ新入りですから、色々叩き込んでやりしょうや!」
バローは、新入りのジャックと同じタイミングでこの204飛行隊に配属された若者(といっても31歳の俺より8つ下なだけだが)で、訓練成績もまずまずだ。
普段はタイタンが分隊長の第2分隊に所属するが、今日の訓練は小隊長のガルと組んでいる。
訓練空域に着いた。これから機種を南に向け、アンノウン機を演じる事となる。
俺とレースは、旋回して機種を南に向け、アンノウン機として南下をはじめた。