22th flightー帰投する者、しない者
トイレを出て通信室に入ると、先ほどの無線管理員の一等兵曹が、
「敵機群、全機撃墜しました。しかし、こちらは被撃墜7、うち304が4機、203が2機、我が隊が1機です。
また、緊急脱出した2人のパイロットについては、203の方は無事救助されましたがが、タイタンさんは依然捜索中です。
海水温が高く、赤外線捜索は難航しているとのことです。」
と報告してくれた。
ありがとう、とだけ返して、無線機の前の椅子にどっかりと腰を下ろした。
「間も無く204の残った4機も帰投します。」
話しているうちに戦闘機の聞き慣れた爆音が基地上空に響き渡ったので、通信室を出てエプロンに行った。
1機ずつアプローチを終え、エプロンに戻ってきたイーグルから、疲れ切った表情のガル、2分隊のバローと他の2人が降りてきた。
のろのろと歩いてきたバローを捕まえて、タイタンが落とされた時の状況を聞こうとすると、
「すみません、今は…すみません…」
と、ひたすらに謝られて、そのまま待機室へと向かって行った。
「無理もねぇさ。初陣で自分を庇って分隊長が落とされたんだ。普通の感覚でいられる方がありえねぇ。」
耐Gスーツを脱ぎつつ、ガルが俺に言った。
そうか、バローもジャックも、初陣だったか。
「よく、生きて帰ってきたよ、奴ら。」
全員が帰投して、隊長への報告も済ませると、もう既に午前2時をまわっていた。
隊長は、「そうか、ご苦労」とだけ返したが、その表情の裏には明らかに悔しさの色が窺えた。
疲れ切った体を引きずりながら隊舎にたどり着き、ばたりとベッドに倒れ込んだ。
ダメだ、疲れた…
俺はフライトスーツを着替えるのも、風呂に入るのも忘れ、深い眠りに落ちた。