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【空軍戦争小説】ランウェイ  作者: プーギー
3rd period〜開戦〜
19/55

18th flightー覚悟

第一陣、第二陣合わせて12機の敵機が飛来した今回のスクランブル対応は、第一陣が第二陣と合流し、引き返したかの様に思われた。


念のため、203のイーグルが追跡して行ったのだが、攻撃の意思は無いと判断された。

203も追跡をやめ、帰投し、リゲルの2機も帰投した。


その時、戦闘管制官の呟きが無線から聞こえた。


『ん?方位がおかしい…なぜ旋回をするんだ?このまま飛べば、ピレッツ諸島上空を航過することになるぞ…』


ピレッツ諸島とは、エルガン王国の東端に位置し、人口12万人のピレッツ本島をはじめ大小9の島からなる。

先ほど、完全に方位をガルーダに向けて帰投を始めたと思われたアンノウン群は、なんとまた転針し、ピレッツ諸島の南東90マイルの位置にいたのだ。


なぜだ…何を…?


誰かが呟いたのをきっかけに、また通信室に張り詰めた空気が戻った。


そして…


『まずい!目標群、転針!スクランブルオーダー!』


レーダーサイトから、またもスクランブルオーダーが下った!


既にリゲルの2機は着陸し、203の6機も着陸し終えたところだった。

とすると対応は、ライン基地のもう1つの戦闘飛行隊、304飛行隊となるだろう。


すぐにスクランブルがかかり、304の保有するF-35が4機、離陸した。


しかしその時にはもう、手遅れだった。



『目標群、加速!領空まで残り5マイル!時速950キロでピレッツ諸島に向かっています!』


ピレッツ諸島には、陸軍の迎撃ミサイル部隊が駐屯しているが、航空戦力はない。


まずい、何をするんだ…


『目標群、領空侵犯!これより目標群を敵機群とみなす!状況によっては攻撃も許可する!』


レーダーサイトの隊長がそう宣言した。

既に敵機群はピレッツ諸島南東10マイルまで迫っている。このままでは、304の4機は確実に間に合わない。



敵機群がピレッツ本島まで残り2マイルとなったところで、ようやく304の機体が後方15マイルに追いついた。


ところが…


『敵機群!ピレッツ本島への爆撃を開始!』


パイロットの悲鳴に似た報告が無線に入った。


爆撃?爆撃だと?


ぼんやりと頭で理解しかけた刹那、いつの間にか通信室にいた第4航空団司令が叫んだ。


「支援発進命令!!204!準備しろ!同時進行で大臣にも報告!」


すると隊長のジンが、出撃のメンバーを即座に決定し、伝えた。


「メンバー!リーダー、ガル!1分隊、2分隊、ガルの指揮で出撃!準備しろ!」


弾かれた様に全員が動き出し、準備に入った。

通信室を出かけた時、


『これより迎撃戦闘に入る!』


304のパイロットの声が無線から聞こえた。

だが数的にも機体的にも限界があるだろう。


自国の領土が爆撃されているのに、なんだろう、この実感のなさは…


そんなことを思いながら、装備室で耐Gスーツを身につけた。


駐機場に出ると、大慌ての整備員たちがタグカーで9機のイーグルを引っ張り出していた。この分だと、離陸にあと15分はかかるだろう。


エプロンで待っていると、携帯に電話が入った。


「あー、メイか!話は聞いた、頼んだぞ!俺も司令部で指揮を取る!」


聞き覚えのある野太い声が一気にまくし立てた。

声の主は大臣ービーストだった。


「ええ!叩きのめしてやりますから!」


精一杯の強がりをしたつもりだったが、声は震えてしまっていた。


「ははっ!お前、ビビってんのか?情けねぇなぁ!」


ムッとした。大臣とてさすがにイラっときたので、


「黙って下さい!あなたはモニター画面だけみてりゃいいんです!」


と携帯に叫んで、切ってしまった。


あーあ、こりゃ帰ったらぶん殴られるなぁ。


冷静になってから独りごちたあと、帰れたら、と気づいた。


帰投は当たり前ではない。俺は今から、そういうところに行くんだ。


途端、足元から這い上がる様な震えに襲われた。


「なーに突っ立ってるんすか!出撃はすぐですよ!」


がしっと肩を掴まれたので振り向くと、1分隊最年少のジャックが、爽やかな笑みを浮かべていた。

1ミリの丸刈り頭をつるりと撫でながら、自信ありげな声で言う。


「やつらなんかちょろいですって!」


8つも下の新入りに震えていた事を気付かれた自己嫌悪がないでもなかったが、それよりも、こいつらが俺の背中を守り、俺がこいつらの背中を守れる、なんて心強い関係だろう、と感じた。


「ああそうだ、頼んだぞ!」


「ええ!任せてくださいよ!」


俺たちは、準備の終わった駐機場をかけて行って、イーグルに乗り込んだ。


タキシングを始めてすぐ、タイタンが、


「あーあ、なんで終業後に仕事なんだよ…残業手当出るのか?出してくれるのか空軍は」


と言った。


「バーカ言え!そんな気の利いたもん、今までどんだけ残業しても出たことなかっただろーが!」


ガルが突っ込んだ。


9機は、ガル機を先頭に順に滑走路端に並んだ。


「やれやれ、面倒な仕事についちまったもんだぜ。

いいかお前ら、気負うな、ビビるな、焦るな。奴らは俺たちの脅威じゃない。

今この時も304の人たちは戦ってるが、このまま手柄を総取りされていいのか?いいのか?あ?どーなんだバロー!答えてみろ!」


ガルの質問に、2分隊のバローがおどおどしながら答えた。


「だ、ダメです!」


「ダメだよなぁ?良いはずないよなぁ?そんなんじゃ4枚羽の名が廃るってもんだ!

てめぇら!その胸についてるのは何だ!

4枚羽だろ!4枚羽は何だ!最強のイーグル部隊の証だろ!」


ガルのダミ声に、鳥肌が立った。



ーーそうだ、俺たちは最強のイーグル部隊。

何が怖い?何も怖くないだろう。ーー



ガルが声のトーンを下げて、落ち着いた声で言った。



「迷ったら俺の背中を見ろ。 行くぞ。」



ガル機が滑走を始めた。




人物紹介その6


ケイル・フォスター


タックネーム:ジャック

年齢:23

階級:曹長

役割:第1分隊員

軍歴:5年

誕生日:4月11日

173センチ67キロ

体脂肪率9.5%


操縦学校を出たばかりの新入り。

訓練課程では、好成績を残してきており、訓練生時代からセンスがあると言われてきた。

その抜群のセンスで、配属から半年で部隊の空戦検定にも合格し、一人前と言われる、空戦戦闘資格を獲得した。

基本的にいつもテンションが高い。

鼻がかなりの鷲鼻だった事を中学時代から気にしていたが、訓練生の頃に、イーグルに乗るんだから良いか、という事であっさり納得した。

高校以来彼女がおらず、いつも友人が企画する合コンに参加している。

両親健在、父親は国の役人で、母親は専業主婦。妹がいるが、ここ1年半会っていない。

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