12th flightー進む配備と空軍大臣
ヒィィィィィィィィィン!!!!
まだ聞き慣れないエンジン音が、待機所を揺らした。
スクランブルのアラート待機中だった俺とブリッジは外に出てみると、5機のF−40が着陸するために飛行場上空から1機ずつアプローチするところだった。
製造され、試験飛行も終えた5機が、配備の為にやってきたのだ。
「来ましたねぇ…早く乗りたくなりますよ」
「ブリッジはもう乗り慣れてるでしょう?自分はまだまだです」
F−40が着陸した。塗装は、黒地に蛍光グリーンのラインが入った実験機仕様ではなく、実戦配備用の航空迷彩のグレーだ。
部隊初飛行の日から10日、実戦配備第二陣の5機が、このライン基地に配備された。
調達の都合から、あと2、3年はF−15とF−40の2機種体制となる。
まだスクランブルの要撃機にするには、実戦部隊での使用時間が短いが、エルガン王国空軍省のリチャーズ空軍大臣は、早く使え使えと騒いでいるらしい。
リチャーズ空軍大臣は、とにかく部隊に理解のある人で、暇あらば各基地行きの輸送機に飛び乗って各基地に出向いては、第一線のパイロットから食堂の隊員まで、そこかしこを回る人である。
うちの隊でも、リチャーズ大臣と親しい人も多い。
そんな人柄からか、F−40が計画として上がった時も、ノリノリでハンコを押したらしい。
そしてなんと、その大臣が2日後にこのライン基地に来て、F−40を操縦するらしいのだ。
リチャーズ大臣はパイロット上がりで、今も年間飛行時間数を稼ぐ為に飛行訓練に参加している、ベテランパイロットだ。
現役時代は(今も現役だが)精鋭集団と言われる、空軍省直属の、いわゆる空の特殊部隊「特殊作戦航空隊」の飛行隊長まで務め上げた腕前だ。
そんな人が操縦しにくるのだから、基地の人たちは大慌てである。
そして随伴機のパイロットを誰にするかも、重要な問題だった。