11th flightー酒と酒と酒と結婚
「いやぁ、新型機やっぱ凄えな!」
初飛行の日の夜、5人に隊長を合わせた面々は、204飛行隊御用達の飲み屋、その名も「lucky」に来ていた。
「そうか、俺も乗りたかったなぁ」
「もうすぐ乗れますわよ、早く実動許可下りないかしらぁ」
部隊に配備されたと言っても、即実戦ではない。
ある程度の、「慣れ」の期間として、試用期間が設けられている。確かひと月半とのことだった気がするのだが…
「そうだな、これから順次各隊員を交代で乗せて行くよ」
「しかし本当に滑らかな飛行でした。シミュレータとは全然違いますね。」
「へいへいタイタン、物言いが硬いんだよ、お前はいつも方に力が入ってるな!」
「ちょ、やめてくださいガルさんそんなに飲めない…ぐぇっっ」
ガルがタイタンのグラスに無理やりビールをなみなみと注ぎ、タイタンの口にこれまた無理やり流し込んだ。
全員から笑いが起こる中、タイタンだけは死にそうな目で俺にすがってきた。
「あー大丈夫かお前、弱いんだから無理すんなよー」
といって俺は奴に水のグラスー本当は焼酎だがーを渡した。
「おおすまん………ブフォッ!」
全員、焼酎であることを知ってたらしく、勢いよく飲み込んだタイタンにまたも爆笑が起きた。
タイタンからしたら死活問題だが、まぁ放っておこう。
「はいはいみなさん、そうタイタンをいじちゃいけませんよ」
とは言いながらもブリッジも笑いが止まらないようだ。
「失礼します、ご注文のお品をお持ち致しました。」
「おー、リーナちゃん、久しぶりだな!」
この店の看板娘のリーナは、今年で25歳だったか…。小柄だが整った丸顔で、客から人気者だった。
「ごめんなさいねぇ、今日はレース来てないのよ」
「あっいえいえっ、そのっ、し、失礼しますッ」
そう、彼女こそ、レースの交際相手なのだ。
「けーっ、照れて行っちまったぜ、若ぇのは良いねぇ」
「ガルもあんな時期があったかと思うと…その…」
「あぁ?はっきり言えよメイ!なんだ!」
「背筋凍るなぁと思いましてー」
「るせぇ!こう見えて俺は昔はモテまくったんだよ!」
「へぇーーーーーーーーー」
ガル以外の全員が怪しげな目を向けた。
「マリアちゃん、元気かなぁ」
「メアリーちゃんも、元気ですかねぇ」
「ナナちゃんも、元気かしらねぇ」
「チカちゃんも、元気っすかねぇ」
「おぇっ…ゲホッゲホッ…ウウウッ」
「るせぇぇ!古い話を持ち出すなぁ!タイタンに至っては何言ってるかわからんわ!」
今上がった4人の女性は、今までガルがアタックして、ことごとく断られまくった子達だ。
なんだか強烈に哀れに思えてきた。けど俺も交際はしばらくしていない。
「お前らもなぁ、早く結婚しろよー」
「結婚は良いですよー、毎日が潤いますからねぇ」
「うっっ、既婚組がぁ…」
「俺はこの子と結婚しますからねー!」
ガルが酒瓶を抱きしめた。哀れすぎる39歳だ。
ジンとブリッジは、基地内でも有名な超愛妻家である。
ブリッジに至っては毎日、昼食は愛妻弁当で、周りから羨ましがられている。
「さて、そろそろお開きとするか!」
ジンの一言で、飲み会もお開きとなった。