表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/37

[特別編]松岡のひでえ誕生日


俺は頭のネジが何本かなめこになっている予備校生、松岡浩児だ。さて、7月25日は俺の誕生日なのだが、その日、悲劇が起きた。今日は、それについて話そうと思う。


その日の朝は、爽やかな涼しい風が吹く、いつも通りのいい朝だった。なぜならエアコンがついているから。

俺はいつものように朝の身支度をし、予備校の夏期講習へと向かって行った。

今日は誕生日ということもあり、少し舞い上がっていた。彼女もいないし、家族とは離れているし、ぼっちで過ごす誕生日なのだが。まあ、それでもテンションは高かったので、少し自転車を漕ぐスピードを早め、下り坂だとしてもまるでジェットコースターに乗っているかのように、風を切っていくのを楽しんでいた。


しかし、その油断が命取りだった。


川の下流沿いの下り坂を自転車で出さないような速さで走っていた俺は、T字路の横からトラックが来ることにギリギリまで気づかなかった。

交差点まで後数十センチのところでようやくブレーキをかけた。前輪は止まった。が、慣性の法則が働き、前輪を軸に前方向へ自転車ごと宙返りする構図になってしまった。しかも運悪く、トラックも止まりきれなかった様で、空中に投げ出された俺を自転車ごと吹き飛ばし、その勢いで俺は川に落ちてしまった。

トラックとの衝突で既に意識を失っている俺は、足掻くことすらできずに、溺れてしまった。

別に川の中に石があるから拾いにいった訳では無い。俺は望まぬ形で、深い川で溺れてしまったのだ……


そして、自身が描かれたステンドグラスのようなものの上に立っている異空間のような所で意識を取り戻した俺は、優しい女性の声を聞いた。


「さあ、目覚めなさい。転生の時です」


さーてやってまいりましたテンプレ展開。俺は生前テンプレ異世界転生ファンタジーを書きたくないと思って一生懸命工夫してたのにいざ自分が死んだとなったらここまでテンプレですよ!?ふざけてるですか!?イカれているんですかね!?


「イカれてるのはあなたの頭ですよ松岡浩児」

「うるせえ時の女神変な心の中の独り言まで読むんじゃないよ」

「何故それを知っているんですか!?」

「細かいこたぁいいんだよさっさと仕事しろ!!」

「なんなんですかその態度!?まあやりますけどね!?」


はい、次の台詞は「コージ、あなたは死にました」ですよ。俺は知ってんだよ。


「コージ、あなたは死にました」

「知ってた」

「その返し方をしたの最早何人目ですかね!?その返し方テンプレなんですか!?」

「知ってるけど知るか」

「はいはい続けますよ。あなたは異世界に行き、その異世界を侵略する侵略者と戦う運命にあります」


知ってる。


「私はその世界の時を司る時の女神です。」


知ってる。


「私の役目は日本で死んだ若者の中から素質のある者を転生させ、侵略者と戦う戦士とすることです。」


知ってる。


「なんでそこまで知ってるんですか!?」

「こまけえこたあ後で話すからさっさと続けろ」

「ひどく口が荒いね君は」


ほっとけ。


「では、あなたの素質を見ていきましょう。……って、ええ!?あなたは平凡な学生のはずなのに……なぜ、あなたの素質は……創造神にも等しい力を示しているのですか!?」

「だってこの世界を元にした小説作ったの俺だから」

「あ……なるほど……よくわかりませんがだからいろんなことが既にわかってたのですね……」

「よくわかってないようだけどそういう事だ」

「とりあえず、あなたは歴代の転生者で最高の資質を持っています。その資質があれば、あなたはあなたの意識を残したまま、私の写し(うつしみ)となって転生する事が出来ます」

「なるほど……それはすごいな……」

「そしてコージ、私の写し身としての能力の他に、武器の資質と魔法の資質をそれなりに自由に選択する事が出来ます。あなたは、何を望みますか?」


なるほど。つまりは某シミュゲーでいうマイユニット、と言ったところか。プレイヤー自身の希望を元にしたキャラクターを作ることが出来るってわけか。


「うーんと、そうだな……某RPGの旅芸人という職業がいいなと思ってたからそれに近いようにしよう。武器は剣と軽銃、魔法は回復と風で」

「分かりました。では、これを受け取って下さい」


そうすると女神は光球を俺の中に埋め込んだ。


「……これは?」

「あなたの神器です。それは私の力を行使出来るだけでなく、あなたの望む武器に変化させることができる代物です。しかも、ほかの人に与えた神器はたいていそれ一本だけで戦おうとするとどこかしらで武器の持ち替えを行った方がいい場面に出くわしますが、今与えた神器はよほどのことがない限り常にあなたの最強の一本となるでしょう。」


結構便利すぎるな……武器を買う必要がないから経済的にもよい、と。


「名前は……剣として使いたいから『クロノブレードβ』と言ったところか……」

「なぜβなんですかαはどこいったんですか」

「だって短剣とか大剣とかあるじゃん。もし短剣ならα、大剣ならγで良いじゃん」

「なんなんですか安直そうに思えて安直でないけどよくよく考えたら安直なネーミングセンスは」

「安直なのか安直じゃないのかどっちなんだい」

「安直ですよ」


はいはい。まあ、俺にネーミングセンスは期待しないでくれ。


「では、本来ならば1回生まれ変わって既にその年齢まで成長した時点から始めるところですが、私の力をもってすれば転生地点で急成長させてあたかも異世界転移したかのように振る舞うことが出来ます」

「大して変わんなくね?」

「そこ気にしたら負け」


何に負けるんだよ。


「では、一緒に参りましょう。彼らが戦っている、あの世界へ」


そう言うと女神は俺と一つになり、俺達は光に包まれ、異世界へと旅立った。


おいこら、そこ変な妄想したろ。そんな意味じゃないから。


そして、目覚めるとそこは石レンガの要塞みたいな所だった。なんでや。普通そこは草原とかだろ。

と、すると、すぐに声が聞こえてきた。


(コージ……コージ……聞こえますか……)

「ああ、聞こえてるよ」

(私としたことが、どうやら転移に失敗したようです)

「だろうな。お前のことだろうし。まったく……お前はドジなんだから」

(くっ……言い返せない)

「m9(^Д^)プギャー」

(うるさい。ともかく、ここはサウゼクス地方にある『天淵の塔』の地下ですね)

「ああ、あれか。エンディングの後の腕試し用の長いダンジョンか」

(言ってる事の意味がわかりませんがあなたがそう言うならそういうことでしょう。とにかく、私は彼らをこちらへ呼んでおきます。しかし、彼らにとってここ、サウゼクス地方は未踏の地。来るまでに時間がかかるでしょう)

「つまり……修練がてら地上へ上ろう、ということでおk?」

(まあ、そういうことですね)


ならば登るしかあるまい。

まずは上の階へ登る階段を探す。しかし、その道を阻む者が現れた。


「初戦の相手はスライムと相場が決まっているが…なんでスライムはスライムでもスライムの王的なやつが出てくんだよ!?」


さあどうしてくれようか……俺は早速貰った神器を発現させる。出てきたのはヨーロッパの教会にあるような、そんな時計をモチーフとした剣だ。

相手の巨大スライムはこちらの様子を伺うようにぶよぶよ跳ねている。


「さて……普通に戦っても勝ち目はなさそうかな……レベル差とかなんだらで」


攻撃を躱し続けるのも、新体力テストでギリギリBだった俺には難しいだろうな……と、思っていると、女神からアドバイスがあった。


(それなら、私の力を使うといいでしょう)

「そういやずっと気になっていたが写し身の俺はどんな力を使えるのかい?」

(大きく二つですね。一つは、時止めの力、もう一つは裁きの力です)

「時間停止とかチートかよ」

(でも、さすがに某王国の王女よりは時間を止められるとはいえ時間の流れの干渉には私ですら制限があります。ましてやあなたにはそれ以上の制限があると思われます。その制限の中で決着をつけられるかどうかはあなた次第なので万能ではありません。もっと言うと長く使うほど精神的な疲れがヤヴァイので気をつけてください)

「なるほどね。で、もう一つの裁きの力とは?」

(裁きの力とは、具体的には相手の生命力をどんな相手でも一定量削ることができる力です)

「それって割合ダメージ?固定ダメージ?」

(言ってる意味はわかりませんが、とりあえず同じ力である敵は一撃で倒せても他の敵が同様に倒れるとは限らない、ということです)

「とすると固定ダメージか。試してみる価値はありそうだな」


俺はクロノブレードβを片手に持ち、剣先を巨大スライムに向け、そして叫ぶ。


「女神の力を受け継ぎし(われ)が、汝らに裁きを下そう!『クロノスドライブ』!!」


ちゃんと指パッチンも忘れずにやる。

するとあら不思議、周りの風景が白黒になり、巨大スライムやそこらにあったかがり火の動きが止まってしまいました!


……時間かけてらんないから茶番はこのくらいにしとこう。


俺は止まっている巨大スライムに歩いて近づき、先ほど教えてもらった裁きの力というものをイメージしつつ、


「女神の代行人の裁きを受けよ!『クロノスブレイク』!!」


決め台詞に合わせ剣を振り下ろす。すると、緑がかった斬撃の跡が巨大スライムを貫く。

そして、もう1度指パッチンをする。

すると、時は動き出し、巨大スライムは悲鳴をあげながら倒れて行った。


「さすが神の力はすごいな……」

(でしょ?)

「まあ、剣道やってたとはいえ戦闘経験はあんまりないから、塔を上りがてら経験を重ねていくか……」

(それがいいでしょうね……)


そうして、俺は生前の剣道経験や、アニメラノベの知識を総動員し、塔を上っていった。


そしてついに最終フロアだと思われる場所にたどり着いた。


「やっぱりそれ相応の奴が出てきたか……」


最終フロアだと判断した理由は、この部屋の先の階段から太陽の光らしきものが漏れ出ているのが見えたからだ。しかし、その階段の前に立ちふさがるのは銀色のドラゴン。こいつを倒さない限り、先へは進めない。


俺は剣を発現させる。その殺気に気づいたかのように、ドラゴンも臨戦態勢を整える。


「さあ、これまで鍛えてきた力を、見せてやる!」


俺はドラゴンに向かって駆け出す。それに合わせ、ドラゴンは爪を振りかざし、俺を引っ掻きにかかる。が、


「見えてるんだよ!」


それを剣ですりあげ、代わりに三連撃を叩き込む。さらに追い討ちをかけるかのように、ドラゴンを踏み台に飛び上がり、魔法を放つ。


「メガウィンド!」


剣を媒介に放たれた風の刃がドラゴンを切り刻む。

が、


「ぐはっ……火の玉を吐いてきやがったか……」


ドラゴンにはまだまだ余裕があったみたいだ。


「グダグダしてるとヤバイかもな……一気に決める!」


俺は剣に力を貯めつつ、ドラゴンに向かって飛び上がり、叫ぶ。


「汝に最後の審判を下す!『真・クロノスブレイク』!!」


先程のクロノスブレイクよりも強大な裁きの力を纏った剣で、ドラゴンにジャンプ斬りを放つ。これ程までの力を引き出すことができたのは。ここまでの道程における修練の成果、まあ具体的に言えばlv5だったのがlv40近くまでパワーアップした成果だ。

ドラゴンは悲鳴をあげて倒れる。


「はあ……はあ……ついに成し遂げたぞ……」

(お疲れ様です。あなたなら成し遂げると信じていました)

「いや元はと言えばてめえのせいでしょうが」

(てへぺろりんちょ)

「……」

(ごほん。そして、ちょうどよく現代の勇者一行がこの塔にたどり着いたみたいです。さあ、行きましょう。長きにわたる侵略者との戦いに、終止符を打つために!!)

「ああ!!」


そう言うと、俺は光の刺す方へ走り出した。


この先に待っているのは希望なのか絶望なのかはわからない。


だが、俺は、この先に待っているであろう仲間達と共に、戦い抜いてみせる。


新しく生きる、この世界に安息をもたらすために……




「ほお。興味深い話だったな」


俺はしがない珈琲屋の店長、遠藤安信。さっきまで松岡君の話を聞いていた。


「……で、なんで君はここにいるのかい?」

「それは私から説明するわ」


おっと、新しい女の子が前に出てきた。


「彼は川に落下して溺れ死んだかのように思えたけど、実はトラック運転手が速攻で助けて、別に溺れてすらいなかったみたいね。気を失ったまま革に落ちたから絶対死んだと思ったのに、最後まで確認せずに転生させてしまうとは早とちりだったみたいね」

「「え」」

「だから急遽こっそりと魂を複製させて双方の身体にそれぞれ入れ込んだというわけ。ふっ……女神である私でこそ!成し得る技というワケダ!!はっはっは!!」

「何言ってんだこの娘痛いぞ」

「本当ですよっ!!」


あ、茉莉ちゃんだ。


「え、この娘の知り合いなの茉莉ちゃん」

「認めたくないんですけどそうなんですよ。この娘の名前は神田黎美(かんだくろみ)ちゃん。私と湊ちゃんと同じクラスなんですけど、いつもいつも『私が女神だ!』という感じの痛い中二病発言をして私たちは頭が痛くなるんですよ……」

「あはは……」

「黎美ちゃん、恥ずかしいからやめなよ」

「女神である私が私自身を女神ということのどこに恥ずかしさを感じるのですか?」

「だめだこりゃ」


俺は苦笑いするしかない。


「なんか……ありがとな、女神」

「コージ……信じてくれるのね……」

「「なんでや」」



色々謎が残ってますがおいおい明らかになるということで。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ