3人で行って4人で帰る!
ぼくたちは何度かギールに襲われながらミッピン洞窟を出た。
色々なことがあったのでとても時間が経過していると思ったけど、それほどでもなかった。
太陽はまだ昇っていて、地面とかを照らしている。
「太陽が眩しいのうっ! 日差しが痛いぞっ!」
薄めで手をかざしながら太陽を見ているのはニャルティさん。
しばらく太陽を見た後ははしゃぐようにくるくると回った。
着ているドレスがひらひらとしている。
見た目の大人っぽさからは想像もできないはしゃぎっぷりだった。
「1年以上閉じ込められたらああなるのも分かる気がするわ」
「普通は1日ぐらいでどうにかなりそうですけどね……」
「アタシなら炎が灯せるから暗いのはいいけど、食べ物はどうにもならないわね」
ぼくはニャルティさんがいた環境を思い出す。
それだけでぞっとした。
「まさか生きて出られるとは思ってもいなかったぞ!」
「きなこさんに感謝してくださいよっ!」
「もちろんしておるぞ。じゃから今夜は一緒にベッドで……」
「そんな感謝の仕方はいりませんっ!」
「アタシもそれはさすがにどうかと思うわ」
「でも何もなしというわけにはいかんじゃろう」
「それもそうですけど……」
うーんと唸るクイーカさん。
「実はわたし、お礼に何かあげたとかそういう経験がなくてよく分からないんですよね」
「アタシもっ!」
「妾も今までそういうことをしてこなかったからのう」
うーんと唸る3人。
こう言ってはあれだけどみんな友達がたくさんいるっ!って感じじゃないなと思った。
ぼくもそうなんだけど……。
でもみんがそうだからこそ仲良くできるかもしれないとも思った。
「妾はお金も持ってないしのう……。そうじゃっ! これはどうじゃ?」
「これって?」
ぼくが聞くとニャルティさんが詠唱する。
「氷の翼」
するとニャルティさんの背中から氷の翼がはえた!
それは透明でとても綺麗だった。
そしてニャルティさんは何度かその翼を羽ばたかせる。
「問題なさそうじゃな。リュックサックは邪魔じゃから置いておけ。重そうじゃしな」
ぼくは言われた通りにリュックサックを地面に置く。
それを確認してニャルティさんがぼくの両脇を持った。
「飛ぶぞっ!」
「え?」
訳がわからないままぼくは地面から浮いた。
「飛んでるっ!」
ぼくは思わず興奮した!
地面から10mぐらい。
クイーカさんとコルネットさんがなんだか小さく見える。
風が強く感じられた。
「さすがにこのまま移動は無理じゃがなかなかいいものじゃろう」
「すごいですっ!」
空から見る景色は地面から見るものとはまた違った良さがあった。
遠くまで見える景色。
どこまでも広がる世界。
ばさばさと羽ばたくたびに感じられる風も冷たくて心地よかった。
「そろそろいいかのう? さすがに疲れるぞ」
「はいっ!」
ニャルティさんはゆっくりと下降して地面に降りる。
ぼくが足をついたところで手を離した。
「本当に凄かったですっ!」
凄かった。
それ以外に言葉が出てこなかった。
「そうじゃろう。誰かを持って飛んだのは初めてじゃったが」
「凄いですっ!」「凄いわねっ!」
目輝かせて2人は言った。
たぶん、ぼくも同じような目をしている。
「いいなー。アタシも一回ぐらい飛んでみたいって思ってたのよね」
空を飛ぶことへの憧れはみんな変わらないんだなって思った。
「また今度ならしてあげてもいいぞ。流石に今日は疲れたからのう」
「本当っ! ニャルティって案外いい人なの?」
「妾も何か頼むことがあるかもしれないしな」
「じゃあじゃあっ!」
ぴょんぴょんと飛び跳ねるクイーカさん。
「わたしもっ! わたしも飛びたいですっ!」
「お主は……」
クイーカさんの下から上をニャルティさんは見ていく。
「どうかしたんですか?」
「重そうじゃから厳しいかもしれんな」
「そんなに重くないですよっ!」
「クイーカは重いと思うわ」
「そんなっ! そんなことないですよっ! ねぇ! きなこさんっ!」
「ねぇ……って言われても……」
「そんなっ! 酷いですっ! やけ食いしたくなりましたっ! 今日はやけ食いの日ですっ!」
「昨日も酒を飲みながらたくさん食べてたじゃない……」
「あの時もたくさん食べてたんですね……」
お酒を飲んでるだけだと思っていた。
「やけ食いするから太るんじゃと思うぞ。もっと食うのを控えるべきじゃな」
「そうそう。あと運動しないとアタシみたいな綺麗な体になれないわよっ!」
「でもコルネットさんは貧乳じゃないですかっ!」
「アタシは貧乳じゃないわよっ! ジャストサイズだわっ!」
「この中では一番小さいがのう」
「あんたらがでかすぎるのよっ! きなこっ! アタシぐらいのがちょうどいいでしょっ!」
「いいでしょって言われても……」
返答に困りながらもぼくは楽しいって思った。
こんな冒険がどこまでも続いて欲しいと思えるぐらいに。
そしてぼくたちはその後もわいわいと会話しながら街へ戻った。
「おい……あれって……」
「そっくりさん……じゃないわよね……」
「あんな美人、他にいるかよ」
「冒険者に捕まったのかしら?」
「そんな様子はないけどな」
…………
…………
「とても目立ってますねっ!」
クイーカさんが周りをきょろきょろ見ている。
「カカカッ。妾は有名じゃからのう」
「なんだか恥ずかしいですね……」
こんなにたくさんの人に注目されるのは初めてのことだった。
思わず俯いて歩いてしまう。
「羨ましいわっ!」
でもぼくとは対象的にコルネットさんは堂々としていた。
「まぁアタシもすぐにニャルティより有名になるわよ!」
「せいぜい頑張るが良いわ」
「上から目線がむかつくっ!」
「妾の方が数段上にいるからのう。色々な意味でな」
「今、胸見たでしょっ! 自分のと比べたでしょっ!」
コルネットさんとニャルティさんが言い争いを始めるので、さらに目立ってしまう。
早くギルドに行きたいと思った。
「そういえばニャルティさんもパーティ登録しなければいけませんね」
クイーカさんがニャルティさんに言う。
「マイステータスカードは持っていますか?」
「一応持っておるぞ」
「どんなステータスなのっ! 見せなさいっ!」
ニャルティさんが出したマイステータスカードをひったくるように取る。
ぼくも背伸びをしてみた。
思っていた通りどれの項目も高い。
でも魔力はコルネットさんよりだいぶ低かった。
ただそれでも平均以上はある。
コルネットさんが高すぎるだけで。
「アタシの方が凄いわねっ!」
「魔力だけじゃがな」
「魔力だけ勝ってれば十分よっ!」
「勘違いしてるかもしれんが、妾は剣士じゃぞ。魔法はおまけじゃ」
「えっ! そうなのっ!」
コルネットさんが驚きの声を出す。
ぼくもてっきりニャルティさんは魔法を使って戦うのがメインだと思っていた。
「氷の剣で戦うのがメインじゃ。しかしながら紅蓮術士が剣士に魔力で勝ってるからと喜ぶなんて恥ずかしのう」
コルネットさんを見ながらいたずらっぽく微笑む。
なんだかとても楽しそうに見える。
「うっ! うっさいわねっ! 実際に戦ったらアタシが勝つわよっ! 今度、勝負しなさいっ!」
「カカカッ。機会があったらいつでも相手してやるぞ」
「……なんか凄い2人が仲間になりましたね」
ぼそっとクイーカさんがぼくに言う。
ぼくとクイーカさんは2人の少し後ろを歩いていた。
「それもきなこさんのおかげですねっ!」
「ぼくのおかげってことはないと思います」
「でも2人とも美人なのがちょっと……」
ぷくっと頬を膨らませるクイーカさん。
そういえばパーティーメンバーは男の人がいいって言ってたことを思い出した。
「なんかわたしじゃ勝てる気しないかもって思っちゃったりもするんですよね」
「そんなことないです。クイーカさんもとっても綺麗だと思いますよ」
ぼくは言った。
今は慣れたけど、前のぼくなら並んで歩くのも恥ずかしいと思えるぐらい、クイーカさんは綺麗な人だ。
「ありがとうございますっ! そう言ってくれると嬉しいですっ!」
嬉しそうに飛び跳ねる。
クイーカさんはとても過剰表現が豊かだから一緒にいて楽しい。
「きなこっ! クエスト帰りか?」
後ろから声をかけられたので振り向くとカズーさんがいた。
今日も色々な物を広げて売っている。
「そうです。えっとミッピンキノコを取ってきました」
「ミッピンキノコかっ! 一回しか食ったことはないがかなりうまいぞっ!」
「高級ですからねっ!」
「それでそれは役に立ったか?」
カズーさんはぼくのリュックサックを指差して言った。
「はいっ! 本当に買ってよかったです! あとカズーさんからもらったものが役に立ちました! ありがとうございますっ!」
「いいってことよっ! これからもうちの店を贔屓にしてくれるならなっ!」
「もちろんですっ!」
「きなこさんっ! 置いて行かれますよっ!」
クイーカさんの声が聞こえた。
コルネットさんとニャルティさんは言い争いをしながら先を歩いて行ってる。
とても目立つ2人なので遠くからでも分かった。
「それじゃまた今度、色々見させてもらいますっ!」
「いい仲間が見つかったみたいだなっ!」
「はいっ!」
「そのリュックサックと同じぐらい大事にしろよっ!」
「もちろんですっ!」
「2人共っ! 遅いわよっ!」
前の方からコルネットさんの声が聞こえた。
どうやらぼくたちが遅れていることに気がついたようだ。
「ちゃちゃっとグルドに行ってクエスト報告して報酬もらいましょっ!」
「そうでしたっ! 早くお金もらわないとっ!」
クイーカさんが手を伸ばす。
「きなこさんっ。いきましょうっ!」
「うんっ!」
ぼくはクイーカさんの手を取った。
みんなとても綺麗で凄い人たち。
でもクイーカさんと手をつなぐのが、一番安心するとぼくは思った。




