第92話 合流!
楽しみにはしていたが……
「おいオッサン。いやロリ親父」
「言うと思っとったが、言い方というものがあるじゃろ」
「ない。どうして帰って来たら子持ちなんだよ」
あっさりと合流できたのはいいが、まさかの子持ち。
コリンとオッサンを「かかさま、ととさま」というドワーフの子供が一人。女の子のようだな。
「まさか半年で子供つくってかえってくるとは思わなかったよ! やることってこれか! やりまくったのかよ!」
「何か色々誤解しているようじゃが、そもそも説明できぬでな、好きに想像しておれ」
「くそ! 開きなおりやがって!」
もうほんと詳しい説明してくれよ! と思うのだが、このオッサン口が堅い。どうしてくれようとおもっていると、
「ととさまを虐める悪い人だ!」
いたい。緋色の髪をしたドワ子がけってきた。
「大丈夫なのですよ、ヒガンちゃん。これはちちくりあっているのです。嫉妬してしまうのです」
「ブッ!」
「コリン……」
なんという言葉を教えるんだコリンは。
「さぁ、ヒサオ様。早くヒガンちゃんを連れてアグロに向かうのです」
「いや、向かうのはセグルなんで。そこで転移するんで」
「そうなのです? では、セグルなのです!」
「セグルなのだ~!」
コリンとヒガンという子供が、おー って片手をあげて、荷馬車にのりこむ。
つかぬことを聞いてもいいかな? コリンさんや。この重そうな荷物は俺が積むの?
色々言いたいことがあるが、モクモクと荷をつむオッサン。さすがパパは違う。これがリア充の行いか。くそ!
負けずに荷物をつもうとすると、ゴトって音がした……なんだ今のは?
「ヒサオ。そのザックは大事に扱え。中にオリハルコンとアダマンのインゴットがはいっておる」
「……いまなんていった?」
聞いてはいけない言葉をきいてしまったきがした。
「オリハルコンとアダマンだ」
「……鑑定」
疑うわけではないが、確認したくなるのが人情というもの! というわけで調べてみたら、間違いなかった。しかもダースではいってやがる。そりゃ重くもなるわ。
「どっから? いやこれ、とんでもない財産じゃないの?」
「そうなる。だから大事にあつかえ」
「あ、ああ、わかった、大事に、大事に……そうだ!」
ピンときたもんね。保管術GO! 空間がパカっとあいてそこにザックをポイした。
「また妙な事を……知らぬ間に、魔法を覚えたのか?」
「いや、これスキルみたいよ。このリストバンドにはめてある宝石に、スキル封印してあるらしい。すげぇ高いんだぜ!」
「ほう? それは是非とも作り方を覚えたいの」
「作り方は知らないな~ これ200万キニスぐらいの値打ちものだから、滅多に作られないかもしれない。それを前借りみたいな感じで手にいれてしまったんだ」
「高いな。払えるのか?」
「もちろん! ちゃんと稼ぐアテはできたしな! それに、この間100万キニスもらったし!」
へへん、ちょっとした自慢だぜ! でも、やることは大変なんだぜ! ……まあ、自業自得なんだがね。
「そっちの盾や槍も貸しなよ。しまっておくから」
「いや、これはいい。いざという時に使う。それより他のザックもしまえるなら、しまっておいてくれ」
「OK。まかせてくれ」
といったが、実際、この保管術ってどのくらいまでしまえるのか分からんのよね。いけるかな?
「ほいほいっと」
ポンポンなげていくけど、まったく異常なし。取り出すこともできた。
まさか、無限にしまえるとかじゃないよね? そうだったら200万キニスって安いお買い物になるんだが?
「これはすごいな。ヒサオがいれば、物資輸送は手軽にすみそうだ」
「う、うん……(どうしよ。いまさら、どのくらい入るかわかりません。生いってすいませんでしたなんていえない)」
「どうした? 無事に取り出せるんじゃろ?」
「おう! それは確認したぜ!」
「ならばよし。さぁいこうか。あ、ヒガン、足でちゃんと落ちないように支えるんじゃぞ」
「はい、ととさま」
「よしよし」
……親馬鹿がいる。いやジジ馬鹿か?
どっちでもいい。
あのオッサンが小さなドワ子の頭をなでる日がこようとは。そしてそれを見る日がこようとは。
これミリアに知らせたいけど、知らせずに見せて反応がみたいな。うんそうしよ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
合流した3人をアグロへと連れていくと、フェルマンさんがオッサンに対し、頭をさげまくった。
「ジグルド様のおかげで、約束が果たせました! 亡きドワーフ族にたいし、なんとか顔向けができましょう! 本当にありがとうございます!」
土下座でもしようかの低姿勢で感謝の言葉を言う。
「これが約束だったの?」
コレことヒガンをみていうと、その子が、俺の足をまた蹴ってくる。
「ヒガンは、ヒガンなの!」
「痛い痛い、色々痛いからやめてくれ」
心もいたいよヒガンちゃん。
「ジグルド様、これが結果なのですな?」
「そうじゃ。これでいい。あの場所はこのために残されておる」
「わかりました。では、我らは何もいいますまい。この件に関しましては一切漏らさないことを誓います。例え誰であったとしても」
「そうしてくれると助かる。あの場所はしられたくはない」
「ハッ!」
「あ、ちょっと!」
どうやら内緒としてきまったようだ。くそ! 気になるじゃないか! というか、さっきから蹴られているんですけど!
「……しかし、ヒサオ。これはどうしたのだ? この街は安全だったはずじゃが?」
「それも話さないとな。ミリアが来てからにしょうかとおもったんだが」
「そういえば、ミリアもさきほど戻ってきたぞ」
まじか! フェルマンさんもっと早くいってよ。
で、どこ?
「いまはカリス老のところにいっているはずだ。もう一人、人間の女がいたな。匿っているそうだ」
「え? 人間……って、いいの?」
負傷しているのに、人間を案内していいのか? ちょっと不安になってきた。
「俺見てきます」
と、いいい走りだそうとしたら、
「ヒサ君!」
「……ん?」
何か覚えのある声が……
「やっと見つけたよ! ヒサ君!」
走ってくる音がしたかと思い姿を視認。
おい、ケイコじゃねぇか! と思うまもなく、腹にタックルを決められた。
「ブホッ!」
「うわぁああ――――――ん!」
俺の腹に頭をこすりつけて、ぐりぐりしながら泣きやがる。腹がいたくて、俺が泣きそうだ。
そんな俺の前に、影がすっとおちる。
見上げると不機嫌そうなミリアがいた。
「久しぶりね、ヒサオ」
「おぅ。元気……だったか?」
「ええ」
「で、これどういうことなんだ?」
恐らくミリアがつれていたという人間はケイコのことだろう。それはわかるが、なぜこいつがいる?
「どうやら、私たち全員、この世界と無関係っていう顔をしていられなくなったようよ」
そういう彼女の顔は、冷徹な鬼にみえた。




