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第84話 アグロでの戦火

 俺達はセグルへと向かった。

 なぜセグルかというと、転移魔法陣をつかうため。


「でもよ、もしアグロが落ちていたら魔法陣も使用できねぇんじゃね?」


「それも考えたけど、その場合は、もう魔王様にでてもらうしかない気がするんだ」


 魔法陣がやられたとなると、もう街中にまでやられていることになる。

 そうなると、街の人々が人質にだってなりかねない。

 俺達のような者が、そんなことに対処できる気がしない。


「セグルからアグロに飛べれるなら、なんとかなるはずだ」


 馬車の速度もあって、わずか3時間ほどでつく。

 魔法陣の起動は俺がおこなった。第一陣の獣人達が無事に転移できたのを確認。

 どうやら魔法陣はやられていないらしい。もしかすると魔王への報告はすんでいるかもしれない。

 とにかく皆をおくりこむことを優先した。

 むこうでの指揮はイルマとフェルマンさんに任せる。

 おれはただひたすら魔法陣に魔力供給し、みんなの負担をへらすだけだ。


「よし、これで最後だな」


 もういないかと俺も転移。

 すると、


 ドォオオーーーーーン!


 いきなりの爆音に、ビビってしまった。

 魔法陣が設置されてあった地下からでていくと、


「……ひどい」


 警備兵が詰めていた待機所付近で、多くの魔族が死んでいる。

 かけこもうとしてやられたのか? あるいは増援要請に?


 ここだけじゃない。 


 街の数か所から煙はでるわ、店や住居が無差別に破壊されている。

 道端には怪我を負い倒れている住人たちもいるし、すでに死体となったまま放置されているのもいる。


 すでに一度街中にまで侵入してきていたのを、みんなが押し返した?

 いや、でもこれは争った後ってわけじゃないように見える。

 切り傷とかではなく、フっ飛ばされてやられたようにしかみえない。

 みんなはどこだ? と探してみると、街の門前に集まり話をしていた。


「なんだよアレは?」

「みたことねぇぞ」

「おい、こんなところにいたら危なくないか?」

「おかしいだろ、こんなの」


 会話が聞こえ、なにがどうしたと俺も前にでていくと、


「嘘だろ……」


 街からでて300mほどいったところに10数台の大砲の姿があった。


「大砲って……こんな短期間にあんな物までつくりあげたのか?」


 しかもこの数。異常すぎる。

 それに火薬はどうした? 俺からの情報で作れるのか?


「おい、カリス様がやばいぞ!!」


 誰かが言った声に、俺はあたりを探……いや、探す必要もなかった。


 大砲が設置された場所の目前。

 すでに何度か砲撃を受けたような跡地に、破壊された大砲と一頭の青竜の姿がある。以前会談のときに見たよりも大きい。

 あれで全力ではなかったようだが、今回はサイズを大きくしたことが裏目にでて……って理由がわかった。アグロ兵たちが動けずにいて、庇おうとしているのか。

 マズイな。いったい何発食らったのか知らないが、もう限界じゃないのか?


 ……やるか!


「イルマ! フェルマンさん! カリスさんを助けてくれ!」


「あ、あぁ!! そうだ、お前らいくぞ!」


 あまりの光景に2人とも茫然としていたようだ。見たことのない武器とその威力を見せつけられ気おくれしたのかもしれない。


「包み眠らせるもの、汝が名は《闇の精霊(シェイド)》! 我が願いを具現せよ」


「与え守るもの、汝が名は《土の精霊(ノーム)》! 我が願いを具現せよ!」


 フェルマンさんとゼグトさんの詠唱が続けて聞こえた。

 この距離から何をするつもりだ? とおもえば、大砲の周囲いったいに闇の霧が発生。さらに、ゴーレムが出現し兵たちを襲いだす。


「この距離で具現化できるのかよ!」


 300mはあるであろう先に精霊を呼び出し、自分のイメージを具現化させるとか反則すぎる。

 相手にしてみれば何もない場所に、敵がいきなり出現したようなものだ。

 さらに炎と風による熱風がまきおこり、ズタズタになっていく。というか、ゴーレムもまきこまれているぞ。まだ制御が甘いみたいだな。


 しっかし、これはちょっとした恐怖だ。

 大砲の姿にも驚いたが、味方の戦力のほうに恐怖を感じるとは思わなかった。

 一瞬にして敵兵の隊列が瓦解していくし、そこに獣人達がつっこんでいく。おもったとおり託宣は働いていないようでバラバラに逃げ出した。

 だが、そのイルマたちが、


「ぐぉ!」


 ズギューンという銃声が何度も響き渡り、獣人たちが血をだし倒れた。


 おい! 今度は銃なのか!

 ここからだと音しか聞こえないな…


「前にいく。誰か護衛を頼む!」


 返事をきかず、走り出す。

 後ろから数人の足音がきこえてくるので、とりあえずは安心した。

 これで誰もこなかったら、無謀なんて言葉じゃたりないだろう。


 前衛にイルマたち獣人兵。

 中間に俺と護衛の数人。

 後衛にダークエルフの精霊使い部隊。


 といった配置になっているわけだが、その前衛であるイルマ達が、どんどん倒れていく。


「みんな下がれ! あるいは、大砲の影にかくれて!」


 どこから何が来ているのか分かっていないようで、行動ひとつできていない。まるで託宣がない状態の人間達みたいだ。

 まさか、大砲よりも銃が厄介だとは思わなかった。


「おい、前に出すぎるな! お前は何もできないだろう!」


 言ってきたのはゼグトさん。追いかけてきてくれたのか。助かる。


「見ておきたいのがあります。ゴーレムを壁にできませんか?」


「ゴーレム? 人形兵のことか? ふむ。その名前きにいった」


「ああ、うん。頼みます」


 名称が違ったか。ゼグトさんは人形兵って呼んでいたのね。

 俺が獣人兵たちに近づくと、左右の土がもりあがりゴーレムが2体出現。おれより若干背が高く、ガタイがいい。文字通り壁としてつくってくれたな。


「ウゥッ…」


 地面に倒れ血をだしている一人の獣人兵に近づいた。そんな俺を守るように壁人形がはりついてくる。


 やっぱり銃か。

 血がでている部分に穴があいているし、周囲に鉛玉のようなものが散らばっていた。全部が体へと打ち込まれたわけではないのだろう。これはひろっておこう。

 ライフル銃のような精度もなければ威力もない。火縄銃のような初期につくられた銃のようなものか? しかし火薬はどこから調達した?

 おそらく離れた平地で膝をつけて前にいる連中が銃を乱射しているのだろうが……


 ? なんだあれは? 銃身が赤く光っている。あの光は……もしかして、この大砲も同じ?


「おい、街にもどるぞ」


 ゼグトさんが近づいてきた。この人には世話になってばっかりだな。


「みんなを連れて帰りたい」


「それは任せろ。お前は早くもどれ。いまの自分の立場を忘れるな」


「……あと、この大砲は、1つを残して壊してください。1台だけ持って帰りたい」


「注文の多い奴め。わかった。皆と一緒に精霊に頼んでみる」


「ありがとう、ゼグトさん」


 あとはカリスさん……大丈夫か、俺が言うまでもなく、もう救護にあたっている。

 相手の兵も銃兵たちを守るようにひいていく。ここで全滅させておきたいけど、こっちも救護に精霊を回していて、全力がだせない。


「痛み分け……いや」


 カリスさんの治療が果たしてできるかどうか?

 街だって散々な目にあっている。

 大砲を破壊できただけでも良かったか?


 ――くそ!

 これも俺がペナルティーを隠していたせいって思うと……


「うゎあああああああああぁぁぁぁぁ―――――――――――!」


 苛立ちが腹の中から我慢しきれずに噴出した。

 突然叫んだ俺に回りの視線があつまるがどうでもよかった。


 ――こうでもしないと、俺は苛立ちでどうにかなりそうだったのだから――


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