第81話 鍛冶職人
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そろそろ半月たったか。
あと2ヶ月半ぐらいかな~
もしかすると、どっちかアグロの街にもどっているかもしれない。
俺も戻りたいけど色々忙しい。自分で仕事を増やしているんだからしょうがないけど、15歳のやることじゃないよな。
「あれだな。最初の同盟をくむときに口だしたのが一番の原因だな」
あの時、不用なことを言わなければと思うが、たぶんまた同じことがあっても口走るだろうな~と最近では自分のことを理解できるようになってきた。
アグニスさんの店のほうは最近では順調になってきた。
俺が教えたフライドポテトだけじゃなくて、最近では『天ぷら』や『串カツ』も出している。まあ、カツといっても牛や豚以外なんだけどね。ソースもないから、味が残念だけど。
油と小麦があるんだし、天ぷらできるんじゃね? と、やってもらったらできてしまった。
ただ、ここって魚介類がほとんどないから、どうしても山菜や肉系になってしまっている。俺としてはエビの天ぷらがくいたい。
まぁ、でも、しばらくは十分だろう。
それよりも、目をつむっていたことをそろそろ解決しないといけない。
なにって、テラーのことだよ。
フェルマンさんやイルマには偉そうなことを言ったが、結局俺もテラーと仲直りできていない。
エイブンがたまに俺に何か言ってくるが、結局は自分の目的のために、俺達を利用したわけだし、それを謝罪もないのに許すなんてできっこない。
たぶんエイブンが勝手に言ってきているんだろうけど、本当ならテラー自身がこないとだめだろ。
それに謝罪されたとしても、許せるかどうかは別なんだよな。
「ハァ――」
村の広場にできた椅子にすわり大きなため息を一つ。
獣人たちの子供たちがワイワイいいながら砂遊びなんかしているけど、なぜ15歳で、リストラされた父親のようなことしているんだ? この歳で、人付き合いで悩み広場でため息とか、オッサン臭いにもほどがあるだろう。
「やめやめ!」
パシンと頬を両手で叩く。テラーのことはなんとかしないといけないが、俺のほうからアクションするわけにはいかない。むこうがまず謝罪してくるのが先だ。だからこの件は保留! 逃げともいうが、保留!
「ヒサオ、こんなところにいたのか」
「あ、ゼグトさん」
俺を探していたらしく、声をかけてきたようだ。
ここ最近、大使仕事として書類がまわってくるんだけど、俺じゃ意味わからなくて、ゼグトさんに色々教えてもらっている。で、俺の仕事はハンコ押し…ってわけにはいかないわけよ。
「アグロから鍛冶職人がついたが、どうする?」
「あー もうついたのか。早かったですね。じゃぁ、作ってもらいたい物の説明しにいきますよ。鍛冶場のほうはどうです?」
「まだかかる。一応親方の注文どおりにやっているんだが色々難しい。俺達ダークエルフは鍛冶のほうはほとんどやらなかったからな」
「ですよね~ 獣人の方々で詳しい方はいないんですか?」
「いるのかもしれないが、まだちゃんと連携できていないからどうもな。俺も人の事は言えないのだが」
申し訳なさそうに顔を伏せていうけど、それはゼグトさんだけじゃないんだよな。
「……それ俺もですから、すいません」
「お前も? イルマや長とうまくやっているじゃないか」
意外そうな顔をされたが、俺は、そう思われているのか。
「いや、テラーがですね……」
「……そういえばそうだったな。アグロにいた時も、あいつとエイブンは竜人たちに嫌われていた」
「そりゃそうですよね。カリスさんを人質にしようとしたんだし」
「まぁな。イルマみたいに図太い神経なら、さして気にしないのだろうが、あの2人はそこまでではないようだ」
「張本人が平気な面しているのがなんかこう、イラってしませんか?」
「するな。一発殴りたくなる」
「話わかりますね!」
俺が大人なら一杯のみに誘うわ。酒の味なんてしらんけどね!
そういや、この世界って酒どうなんだろ? 俺よくわからないから、今度アグニスさんにきいてみよ。
と、今は鍛冶だ鍛冶。
本当はオッサンがいてくれれば迷わず頼むんだけどいないのはしょうがない。
そうそう、俺の家ができたんだよ。
ちっちゃいながらも、我が家ってね。
ただ、仕事もそこでやってんだけど書類が溜まっていて、そろそろ寝床がやばい。
……って、まてよ?
「ゼグトさん、もしかして俺の家に案内しました?」
「あそこは駄目だろ。布団がある仕事部屋を見せられるか」
ですよね~
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「おまたせしました!」
とやってきたのは、アグニスさんのお店。
「はぁ?」
「……おおきいですね」
「そりゃあまあ、クマっすから……あなた、誰です? 人間っすよね?」
珍しい! ここにきてようやく人間扱いされた!
魔都にいっても全然気にされなかったし、ここきても、まったく言われなかった。
なんだろ、このこみあげてくる嬉しさ。
最近おれって、自分は人間の姿をした別の何かじゃね? とか思うことがある。
しかしこの人……マジでクマだな。
黒熊が、薄茶の作業服きて喋っている感じ。
獣人の一種でクマ族っていうらしいんだけど、普通にクマだった。
テラーは体毛があるし尻尾や耳だってあるが、顔は人間そのものだ。この人の場合は、顔からしてクマだ。
そんなクマが二足歩行して、テーブル席に座っていて、隣にはしっかりと仕事道具らしきものがあった。意外と几帳面か? キッチリしている感じだが。
「えっと、ヒナガといいます。よろしくお願いします」
頭を軽くさげながらいい、椅子へとすわると、
「もしかしてあなたが? はぁ……ガーグス=ドナーっす。大きな仕事と聞いたっすけど…」
不安げな声で俺をみている。そりゃ若いからな。どうみたって大きな仕事をもちこむような歳にはみえないだろう。
「はい。魔王様と獣人のイルマからの共同依頼とおもってもらって結構です」
「!? そ、そこまで大きな仕事だったんすか!」
ああ、これビビッたか? 魔王の許可とかとってないけど、ラーグス対策の一環だし別に名前だしていいよな。
「俺のことはゼグトさんから聞いていますか?」
「ゼグトというと、先ほどのダークエルフの? 村の代表格の一人を連れてくるっては聞いたんですけど」
「間違ってはいませんが――まぁ、俺は魔族のほうの外交大使という形となっています」
「魔族? いや、どうみても人間っすよね? ここにいること事体……人間で魔族代表?……それにヒナガ? も、もすかすて、異世界人の?」
「ええ、そうですが…」
今一瞬、なまらなかったか? 嫌な予感がフツフツとしてきたんだけど。
「あなたが救世のヒサオ様ですたが!」
「……はい?」
きゅうせいってなんだ? 旧姓か? いや、俺うまれたときからこの名字だが?
「お会いできて光栄っす!」
いきなり店中で大声をだし騒ぎだす。座席をたつなり、床へと土下座……いやいやいやいや!
「まって! なんでそうなるの!」
「我々獣人の救世主ともいえる御方。とてもとても頭あげれねぇだ!」
「は? いや、助けた覚えないからね? なんか間違ってない!」
いつ助けた?
同盟むすぶきっかけにはなったけど、まさかアレのことなのか?
「いえいえいえ、イルマ様とテラー様を助けてくださったばかりか、獣人と魔族の間を結んでくださったと聞いてますだ。もはや我ら獣人の守護神っすよ!」
「しゅ、守護……」
もう帰りたくなってきた。
どうしよこのでっかいクマさん。
店中の客がこっちみてるし。
あ、ダークエルフと獣人が仲良く食事してるの発見。よかった少しは仲良くする人ふえてきたのか。うんうん……で、まだあなたは土下座しているのね。
「あの~ 仕事の話をしたいので、座りなおして…いや、場所うつしませんか?」
「ついていくっす!」
それもういいから!
店の中でこんな見世物にされるとは思わなかったわ。
最初につくられた宿舎へと場所をうつす。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ここは邪魔な壁とかほとんどなくて、大部屋が2つあるだけの家だ。床に布団がいくつも並べられていて、ちょっとした避難場所みたいになっている。だいたいの人はここを寝床にしている。
ガーグスさんをつれてきたわけだが、そんな場所で眠っている人たちもいるわけで、
「騒がないようにお願いしますね。邪魔になりますから」
「は、はい。さっきはほんと失礼したっす。俺、イルマ様にあこがれていて、そのイルマ様を力づくでねじふせたと聞いたもんで」
「してないしできないから! 力づくとかバカじゃないの!」
「は、はぁ?」
「だれです、そんな根も葉もない噂を言っているのは!」
「イルマ様のご友人の、エイブン様っす」
「あの馬野郎かぁあああああああああああ!」
あ、思わず叫んでしまった……何してだ俺は。
とりあえず馬野郎には厳しい仕事おしつけよう。決めた。
とりあえず仕事の話をしようと思う。
この人には違うと言ったけど、納得してくれていない。そもそもイルマとテラーを助けたってなんだよ。いや、いい。もう仕事の話をしてチャッチャと終わらせよう。
「いくつかお願いしたいものがあるんですが、まずは大きな馬車をお願いしたいです」
「馬車? それならこの村にもあるのをみかけたっすよ?」
「いえいえ、ああいう荷馬車みたいのではなく、そうですね20人ぐらい乗れるような馬車をお願いしたいです」
「2、20!?」
「それを3台ほど。あとサスペンションもお願いします」
「さすぺ……?」
「ああ、えっとですね…‥」
スプリングと衝撃緩和の説明をするのにかなり時間がかかった。
なにしろ俺もよくしらない。
ネットで調べてもらって、こういうのがあれば、移動が楽になるんじゃないか? という安直な考えが浮かんだにすぎない。
本当なら道路整備もしたいのだが、こっちは時間と人手がかかりすぎる。
これも魔王から言われたラーグス対策の一つで、避難速度をあげるための措置にすぎない。
前にテラーから逃げるとき荷馬車が遅れた。
あれはそもそもの積載量オーバー状態だったこともあるし、ひいていた馬が1頭だけだったのが痛い。
それに避難となると、この村にいる老人や子供を連れ出す必要がある。
そういったことを考えると、このくらいの準備は必用だと思ったわけ。
「まずはこれを優先してください。そのあとのことは、また後日ということで」
「は、はぁ。これをいつまでっすか?」
「できるだけ早くお願いします。増員をかけても構いませんので」
「助かるっす! 一緒にきた弟子連中だけだと頼りなかったっすから!」
「そういえば、そのお弟子さんたちは?」
「先に鍛冶場予定場所にいかせたっす」
「なるほど。ではあとのことはお任せします。時々みにいきますので」
「はい! がんばるっす!」
最後に軽く頭をさげ宿舎をでた。ああいうタイプは苦手すぎる。アグニスさんも最初のころ兄貴っていってきていたし。持ち上げられても精神的にきついんだって。
さて、次はと……
ヒサオ:ここ魚高いんだよな~
イルマ:そりゃあ、海から離れてるからな。
フェルマン:セグルに海でとれた塩と魚が運ばれているが、どちらにせよ高い。
ヒサオ:川魚は?
イルマ:この辺りは川が少ない。
ヒサオ:うへ。じゃあ、やっぱり流通の確保が先決か。道路整備をよくすれば…
フェルマン:……外交官?




