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第80話 新レシピ

 偉そうなことをいっても、そうすぐ変わるものではなく、今日もイザコザが絶えない。おまけに同じ作業を一緒にやらせているものだから、喧嘩の頻度があがったわけだが、


「アグニスさん。店のほうはどう?」


 村の中心からは外れてしまったけど、建設ラッシュによってつくられた臨時の家の一つが、そのままアグニスさんの店になった。

 もう少し待ったら? とは思ったけど、本人たちがすぐにでも開店したいといいだして、やむなく許可を取ったんだけど、


「いや~ 昨日も暴れられましたよ」


 開店してから毎日、店の中で喧嘩する人たちが後を絶たないらしい。


「やっぱりもう少し待ったほうがよかったんじゃないですか?」


 俺は店のカウンター席に座って、アグニスさんと話をしているわけだが客は一人もいない。店の料理が悪いとか、っていうわけじゃなくて、まだ開店前なんだよ。


「いやいや、それは違いまスよ」


「どうしてです?」


 正直アグニスさんの気持ちがわからなかった。

 今現在、ブランギッシュはセグルとアグロからの物資がやってきていて、さらに人も増えてきている。

 だけど相変わらずの空気なため、それらが上手くまわっていない。

 とにかく住居が欲しいから、建設ラッシュは進んでいるんだけど、その煩い音もあって喧嘩が遠慮なくおこなわれている始末。


「これはモーリスの旦那の受け売りなんスけど、人ってのは腹がへれば苛立ちが増すもんなんでスよ」


「ああ、うん。それよく聞くね」


「でしょ! しかもまだこの村には飯屋がないっスよね」


「そりゃそうだよ」


 こんな状況で飯屋なんて開店したらどうなるかわかるだろうからな。


「つまりライバル店はない! 客はくる! しかも腹へらして! こんな状況で飯屋が飯つくらないでどうするんでスか! ってのが、モーリスの旦那の方針でして」


「あの人、宿の店主じゃないですか!」


「似たようなものっスよ」


 そうらしい。俺はしらんけど。


「だけど喧嘩されてるじゃん。店に被害でまくっているんでしょ?」


「それなんすけどね……ユリナおいで」


 調理場のほうに声をかけると、パタパタと足音がして、奥さんのユリナさんがやってくる。


「いらっしゃいヒサオ様」


「どうも。調子はどうです? 調理場のほうは上手く使えそうですか?」


「勝手が違いますから、まだなんとも。それでどうしました?」


 俺のほうをみていうが、呼んだのはアグニスさんだ。


「実はヒサオさん。喧嘩するってことは、味の問題でもあるんですよ」


「え?」


 そんなこと突然奥さんの前でいって、あとで夫婦喧嘩になっても俺しらないからね?



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 アグニスさんの言い分はこう。


 飯がめちゃくちゃ美味ければ、喧嘩なんてしない。むしろ黙って食べる。

 逆に喧嘩するってことは、それだけ食事に夢中になっていないという証拠。

 つまり、客が夢中になれるだけの料理をつくれていないのが、最大の原因だという。


「いやいやいやいやいやいやいや」


 これはないと思った。どんだけの料理をもとめているんですか!


「そこに原因もっていきますか? それはどうかと思いますよ」


「ヒサオさんは甘い! 飯屋が飯の味に妥協してどうするんスか!」


「あんた素敵!」


 うぉい! 奥さんそれでいいのか!


「ユリナ。辛いだろうけど、これも飯屋の宿命だ。黙って俺についてきてくるか?」


「ええ、もちろんよ! モーリスさんのところで出会ったときから感じていたわ。あんたの料理に対する熱い気持ちを」


「ユリナ!」


「あんた!」


 ヒシっと抱き合うゴブリンの夫婦――あの、俺かえっていいかな?

 なんで、ゴブリン夫婦にリア充爆発しろとか思わなきゃいけないの?


「ということで、ヒサオさん、アドバイスお願いします」


「お願いしますわ、ヒサオ様」


「そこで俺にぶん投げっすか!」


 この夫婦汚い! 体とかじゃなくて性格が!



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「ということで、頼むよコタ」


『なんだか、どこかでみたことあるよね、このパターン。青いタヌキの…』


「それ以上いってはいけない」


 危険だ。色々な意味で。そしてあれは猫だ。一応。


『でも、そんな人たちを虜にするような料理とか……そもそも僕だって料理に詳しいわけじゃないよ?』


「それは承知しているけど、ネットで検索したら何かでてくるんじゃね?」


『ネットが万能だといつから錯覚していたのよ』


「ちがうのか!」


『だいたいあってる』


「じゃあ、いいじゃないか」


『……うーん。じゃあ、ヒサのほうで、コレが食べたいのってある?』


「米。白米。上に生卵のっけて卵かけごはん。あと醤油。焼きサンマに大根おろしのっけて醤油かけて……涎でてきた」


『……どんだけなのよ』


「おまえも、一ヶ月ぐらい食べないでいればわかるって。ほんともうね……」


 思い出してきただけで我慢できなくなる。


『そういっても白米ないんでしょ? あきらめなよ』


「諦めきれるか! 米事体はあったんだ。きっと白米だって探せばでてくる!」


『みつけたら教えてね。とりあえずそっちはおいといて、今まで聞いたかぎりだと、ジャガイモってあった?』


「あ? あ―……あったな。確かセグルでつくっているはずだ」


『じゃあ、もしかしてだけど……』


 俺はコタを天才だと思った。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「そうそう、そのくらい細くきってください」


「はい! 皮付きでいいんですよね?」


「らしいですよ。多少はあってもいいみたいです」


 早速教えてもらった料理をユリナさんに教えているわけだが、本当にこれでいいのか? と思ってしまう。なにしろ俺もつくったことないんだし。


「これぐらいでよろしいでしょうか?」


「はい。切った物を水のはいったボールに入れて浸しておいて、デンプンを出します」


「デンプン?」


「えっと、水が濁りますのでそれでわかるかと。で、あとは用意してもらった植物油を鍋に入れてもらって……もうちょい……はい、そのくらいでいいです」


「結構油使いますね…」


「ええ、このくらいの量を毎回使うと思いますので、覚えておいてください」


「はい!」


 ここまできたらもうわかると思うが、作っているのはフライドポテトだ。


 以前アグロの街でハンバーガーがでてきたことがあったが、あのときこれがなかった。

 だからもしかして、これはこっちでまだないんじゃないか? と考えたわけだ。

 とはいうものの、これ全部気付いたのはコタだ。

 あいつに、ハンバーガーのことを話しておいて正解だったかもしれない。


「いまです、あげてください!」


「は、はい!」


 油であげている音が小さくなったので、金網をつかってあげてもらう。キッチンペーパーなんてしゃれたものはないから、そのまま陶器の皿に置いてもらう。これも何かかんがえないとな。


「上手くいきましたね。じゃあ、最後に塩を少々」


 塩はこの世界にあったらしい。魔王が製造させているようで、かなり助かっている。


「さぁ、どうぞ」


 熱々のところを食べてもらわないとな。欲をいえば、俺はケチャップもいいと思っている。でも、ないんだよな~トマトはあるはずなんだが。


「おいしい!」


「うまいっス!」


 試食となり、アグニスさんもやってきて2人ともが食べ始める。うん、これを最初に食べたときは、びっくりしたものな。ついつい手がのびるんだよ……あ、俺の分が……試食すらさせてもらえないとは……


「おいしいですけど、飲み物がほしくなりますね」


「飲み物か……」


 俺的にはコーラなんだが、そんなものないからな~ さすがに炭酸飲料まではつくれない。


「これいけますよヒサオさん! これなら夢中にさせられる!」


「そうですか。でも本当はこれだけじゃだめなんですよ」


「「え?」」


 当然だ。

 フライドポテトといえば、ハンバーガーだ。あとできれば炭酸飲料。

 だが炭酸飲料はさすがに無理だし、今現在ハンバーガーも無理だ。

 ただアグロの街で食べたことがあるし、きっとそのうち作れるはず。

 それにあの時食べた味……あれは間違いなく牛のハンバーグだ。なら牛がこの世界にいる可能性がある。乳製品の可能性が……チーズたべたいです。


「今は無理ですが、とりあえずこのフライドポテトを食べさせてみてください。それで反応をみてみましょう」


「「はい!」」


 そういえば、このフライドポテトのレシピを取引材料にして、牛の居場所を吐か……教えてもらうという手もあるな。

ヒサオ:牛がいるってことは、乳製品が……豆腐のはいった味噌汁が…

イルマ:ヒサオのやつ、顔つきがかわってないか?

フェルマン:たまに別人のようになることがあるな。

ヒサオ:湯豆腐、冷ややっこ、揚げ豆腐、餡かけ豆腐……た、たまらん!

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